試合

好調チーム同士の対決は両者譲らず、勝点1を分け合う激闘に

~バルドラール浦安 VS 立川アスレティックFC~

Fリーグディビジョン1は第2クールに入り、11月13日(日)、バルドラール浦安はホームのバルドラール浦安アリーナに立川アスレティックFCを迎え、第12節を戦った。この2チームは、開幕以来の顔合わせ。前回対戦では、浦安が2-1で立川に勝利している。

現在浦安は、全勝の名古屋オーシャンズを1敗で追いかける状況。中断明けも負け知らずで勝点を積み上げ、安定した強さを手に入れつつある。対戦する立川も中断明けの3試合を連勝。得点も多く取り、攻撃面での好調さが目立っている。リーグの現状としては、2位浦安と3位以降のチームとは勝点で差が開きつつあり、プレーオフに出場するためには3位を狙うのが現実的というところ。立川としては、浦安が相手とはいえ、ここでも勝点を積み上げ、3位を狙える位置はキープしておきたい。

負けたくない両チームの戦いは、立ち上がりから激しい展開に。浦安は多くの試合でファーストセットにガリンシャ選手がいる3-1のセットを起用するが、この試合はクワトロのセットでスタート。立川は、金澤空選手、上村充哉選手と日本代表が顔を揃えるセットを起用した。また、この2チームのゴレイロは、ともにアジアカップ優勝に貢献した代表選手。いかにゴールをこじ開けるかも見どころとなっている。

両チームともに高い位置からプレスをかけあい、アグレッシブな守備を攻撃につなげる狙い。とはいえ、両チームともにゴール前では身体を張った守備と、最後はゴレイロが立ちはだかり、得点を許さない。ギリギリの攻防が続く中、先制したのは浦安。立川のコーナーキックのクリアボールを前線に送り、カウンターで加藤竜馬選手がゴレイロの肩口を狙うシュートを決めた。その後立川は、攻撃的な選手の組み合わせたセットを起用するなど、得点への執念を見せるが1stピリオドは無得点のままタイムアップとなった。

2ndピリオドもお互いに攻撃の手を緩めず戦いながらも、守備の強度も高く、得点までは至らないまま試合は進んでいく。両チームともにゴール前のシーンを作る中、追いかける立川が攻撃のリズムを掴み、コーナーキックのチャンスを得る。このサインプレーから上村選手が技ありのシュートで得点を決め、同点に。さらにお互い攻撃的な姿勢で戦い続けるが、3分強を残したところで浦安のディドゥダ選手がイエローカード2枚で退場。立川は2分間数的優位な状況で攻撃を仕掛けるが、浦安が守りきる。その後も得点を決められないままタイムアップを迎え、勝点を1ずつ分け合う形となった。

バルドラール浦安 試合後会見


小宮山友祐監督
ーー試合の総括をお願いします
小宮山
立川のここ最近の試合をスカウティングしていて、非常にパフォーマンスがいいですし、全員がハードワークするし、間違いなく苦しい試合になるなというところは思ってました。お互いにロースコアな試合、思っていた展開になったかなという感じですね。ディドゥダの退場以外は、想定通りです。全体を通して、自分たちが考える試合展開になったかなというところですが、前半に決定機が3回あって、後半に2回あって、やっぱり少ないチャンスを決めるというところになるのかなというところと、今日は、『これくらいやってくれ』というレベルのプレーが、あんまりできていなかった。我々のプレーの質が低かったなというところは、感じています。パスもそうですし、練習でできていること、これまでできていたことも含めて、あんまり出せなかったなと、ちょっとらしくないシーンがあったかなというところは気にはなります。

でも今日は、立川の方が勝点3は欲しかったと思いますし、もちろん名古屋を追いかける1番手ということで、勝点が離れてしまいましたけど、我々も負けたわけではないので、悲観することもなく、次の(ペスカドーラ)町田戦に向けて準備していきたいと思います」

ーープレーの質が低かったという話がありましたが、それは立川の守備が良かったという影響も感じられますか?
小宮山「と思うんですよね、どっちなのかなというところでしょうね。個人的には、質が低かったというのは、クワトロのことを言ってるんですけど、クワトロのセットはまったくもっていいところがなかったので、途中でやめちゃいましたけど。(相手との)距離感が近いと感じたんですかね、外から見てたらそれはむしろラッキーだと思いますが。先週、(シュライカー)大阪が距離をとって背後を取らせてくれなかったんですが、そっちの方が嫌だなと思っていました。ですから、むしろ距離が近い方がアジリティの高い選手が揃ってるので、ワンツーなり、パラレラなり、二人の関係含め、個でも剥がせますし、前半に吉田(圭吾)にいいシーンがあったように、いけたんじゃないかなと、外から見ていて私は感じました。ですが、中の選手たちは、しっくりこないというか、底辺でのミスが多かったので。いつも言ってますけど、我々のプレーモデルは相手陣地でプレーをするということなので、自分の陣地の底辺で、クワトロで失ってピンチを招いてしまうのは、相手コートでやるのと、自陣でやるのでは意味合いが全然変わるので、そういった意味合いで簡単に自分の陣地でロストしてしまうとなると、ゲームに出すのは難しいというところですね。

また、全てが足元足元になってしまって、長坂(拓海)も石田(健太郎)も吉田も大島(旺洋)も、みんなボールを持てるからそうなるのかもしれないですけど、剥がすタイミングが合わないのか、個人的にはツータッチ、スリータッチでやればいいのにと思うんですけど、その辺が我々が外から見ているものと、中で感じているものが違ったのかなと。

それで柴山(圭吾)を置いて。柴山は良かったと思います。私は立川は3-1にすごく強いチームだなと感じていて、それは自分たちのモデルも3-1だから、練習も3-1になる。スカウティングすると、3-1に対しては皆本(晃)も上村(充哉)も、結構強度高くいく。ここ最近は、関(尚登)がフィクソで出ていたので、そこにガリンシャを当てるとミスマッチが起こるかなと。あまり出てこなくなったのは、そこは比嘉(リカルド)監督と私の駆け引きでもあるし。立川もボラを健太郎に当ててきたので、そういうところはあると思うんですけど。

それで、3-1が得意なチームに対しては、やっぱりクワトロが効果的かなと。皆本のところで前を向いて、1対1を仕掛けることはできるんじゃないかと思ったんですけど、何回かはやっていましたけど、しっくりこなかったというところですかね。だから選手たちは、立川の圧力を、おそらく感じていたんじゃないかなと思います。

単純にキーパーを使えばプレス回避できるのに、使えるところを使わずにボールを取られて、私に怒られる。謎ですよね。イゴールもそれでブチ切れていました。自分にパスを出せるのに、使わないで変なところに出そうとして、取られてカウンターになって、イゴールが止めるという。まだマインドとして、自分のプレーがしたい方が優先なのかなと思いました。それが名古屋(オーシャンズ)と違う、甘さというか。このスポーツは、自分のプレーなんかできないことの方が多いと思わないといけない。ミスばかりのスポーツなので、いかにチームのためにプレーできるかというところが足りないのかなと、そんな感じがしました」

ーークワトロのセットから始めたのは、そういう狙いがあったということですか?
小宮山「オフェンス面で1対1の仕掛けや背後を狙いやすいであろうというところと、裏返ったところで、金澤空に対して、ディドゥダとガリンシャではガリンシャが置いていかれるんじゃないかと。金澤くんに対しては、うちの足の速い4人を当てたことで、今日は彼はそこまで脅威ではなかった。うまく消せたと思います。ディフェンス面ではそういう側面はあったので、ガリンシャと金澤くんが1対1になったときは、『やばい、抜かれる』と思いながら見ていましたけど、そこはディドゥダがうまいことカバーしていたのでよかったです」

ーーセットの交代のタイミングがあっていたのもその狙いですか?
小宮山「そうです、湯浅(拓斗)にディドゥダを当てて。多分本当はそこに関が入って、中村(充)、南雲(颯太)、湯浅くんのセットであれば、絶対うちの3-1のセットが勝つだろうと。途中から関くんはあまり出なくなりましたけど。

あとはやっぱりガリンシャが警戒されてきたときが課題になりますね。僕からこの話は何回も出ていると思いますけど、ガリンシャのいないサイドををどう使うかというのが今後のポイントかなというところです。そういう意味では、今は産みの苦しみというか。東出(脩椰)がここ最近本当にパフォーマンスが低かったんですけど、大阪戦あたりから良くなってきていて、今日は3-1のセットに戻しましたし。大島、吉田は後半はほとんど出られなかったですけど、それは底辺でロストしたり、失点に絡んだらなかなか出られない、そういう緊張感が競争力を生むと思いますし、今のうちのチームには悔しさというものも絶対に必要だと思うので。ミスにも最低限、許容できるものと許容できないものがあって、うちは自分の陣地のミスは許容できないよと、シュートを打たれるようなミス、カウンターを食らうようなミス、トランジションから失点するようなミスは許容できないという話は、常にしているので、その基準に乗ってこれない選手は、誰とか関係なく。今日は、その代わりに宇野伊織が頑張って長い時間出場しましたし、柴山も出たし、そういう選手たちが出てくることがチームを活性化させるのかなというところです」

ーー以前に若い選手は、守備面が心配で長い時間出せないとおっしゃっていたと思うが、今日は競った試合で長い時間起用したのは、それだけの成長が見られたからということですか?
小宮山「もちろん成長も見られてますし、あとは緊張感のある場面で出さないと、若い選手は育たないと思っているので。だったら毎回出せよと思うかもしれないですけど、そこは噛み合わせもあります。でも今日は、あの緊張感のある試合の中で、柴山は午前中に全日本の千葉県大会(第28回全日本フットサル選手権大会 千葉県大会)で1試合やってきて、2試合目ですけど、すごくいいパフォーマンスを出してくれました。厳しい緊張感の中、立川の選手が相手でもそこでボールを納められないようでは世界では戦えないですから、よくやっていたと思います。そういった選手を背負ってプレーできた、反転できたということは自信になっていると思います。次がアルトゥールになるのか誰になるのかはわかりませんけど、毎日ディドゥダとマッチアップしているわけですから。そういう意味では、すごいスピードで成長していると思います。

宇野は、あいつは頭が良くて、やれることがたくさんありすぎるんで、ちょっと判断が遅い。それでも身体が大きくなればボールを守れるんですけど、まだちっちゃいから、自分の中でいろいろ判断をしている間に寄せられちゃう。練習だとそこまで強度高くこないところも、試合だと強度高く来られて、そういうときに止められる強さがないから、そこも課題ですよね。頭もいいし、パスも上手いし、4-0も3-1もできますし、フットサルというものをすごく知っている選手なので、そういう意味では今後の彼に期待したいと思います」

ーー相手のセットプレーの守備で柴山選手を入れたのは、その緊張感を持たせる狙いがあったのでしょうか?
小宮山「彼は、ディフェンスできないキャラになってますけど、ディフェンスはできますよ、サイズもあるし、吹っ飛ばせるし。どっちかというと伊織や健太郎の方がつかまえられちゃうと剥がせない。でも柴山は常にピヴォとしてやり合ってるから、抱えられたら振りほどくとか、ブロックきたら吹っ飛ばすとか、サイズがあるのでできます。それと、僕の後悔ですけど、あの失点したシーンは大島じゃなかったなっていうところですね。大島はあそこの練習をあまりやってなかったので。もうしょうがないですけどね」

ーー開幕戦も1-1の時間がすごく長くて、最後は浦安が決めましたけど、たらればになりますが、退場者がなかったらどのように試合を運びたかったでしょうか?
小宮山「立川は、絶対に勝点3が欲しいはずなので、絶対にパワープレーしてくると思ったんですがしてこなかった。こっちは正直、終盤を勝って迎えるつもりでいたので、今週は攻撃のトレーニングはそこまで入れてなかったんですよ。なおかつパワープレーのトレーニングをしていたディドゥダが退場しているから、ディドゥダが退場した時点でパワープレーどうするかなと、長坂も最後は足が攣っていましたから、長坂とディドゥダがいなくてパワープレーか、なるほど、となりました。

ディドゥダが退場しなかったらもうちょっと違うゲームになったかなとは思います。ディドゥダがいたら、タイムアウトをとってセットプレーで1回やりたいものがあったんですけど、いないし、パワープレーも迷いましたけど、僕らも名古屋に離されたくない思いはありますが、立川は絶対こっちに勝ちたい、勝点3が欲しいはず。しかも立川はここ最近勝ってるし、パワープレーのディフェンスはやりなれてる。僕らもずっと勝ってる、だからパワープレーをやってないんですよ、試合で。練習ではやってますけど、そこの成功率ですよね、自信があるかないか。

本来のメンバーが欠けている中でやる成功率、ここ最近彼らはずっとディフェンスの経験をしている。僕らは名古屋に負けてから1回もパワープレーをしていない。一番大事なのは、名古屋以外に負けないこと。分けてしまったから勝点は離されてしまいましたけど、だけど負けたわけではないですし。昨日の名古屋も長野を相手に3-2、苦しんでいる、そんなに簡単に勝てるリーグじゃないです。さっきも言った通り、立川は間違いなく強い、だってオーシャンカップでは決勝まで行ってる、昨シーズン終盤の全日本選手権も優勝している。じゃあ自分たちはどこでどうするかということ。僕らは、ここ何年もタイトルも取ってないチーム、ファイナリストにも行ってないチーム、それが今新たなことにチャレンジしているということは、絶対に負けちゃいけないということ。ホームですから勝ちたかったですけど、こういう試合もあるよなと思っています」

ーー退場局面で三笠選手が出場して、すごくいいディフェンスしていたと思いますが?
小宮山「はい。彼はちゃんと準備していますから。それに、ディドゥダが退場すると思って、4-3の練習してますし。1年に1回は退場するので(笑)。しょうがないです」

立川アスレティックFC 試合後会見


比嘉リカルド監督
ーー試合の総括をお願いします
比嘉
すごくいい試合でした。最後までどっちが勝つか、すごくワクワクして、お客さんも喜んでくれたんじゃないかなと思っています。でも僕は、立川の監督として、最後の4対3(退場者が出た2分間)のときに点が取れなかったことは、ちょっと悔しいですね。チャンスを作ってもイゴールに止められたシーンもあったし。前半は、相手の攻撃に対してディフェンスが下がりすぎました。裏を取られるのが怖かったせいで自分たちのいつものアグレッシブなディフェンスができませんでした。それはハーフタイムに修正して、後半は、ボールを持つ時間も多くなってセットプレーもたくさん作って、同点にできました。僕らは精一杯やり切ったと思っています。いい試合でした」

ーーボラ選手と新井選手を一緒に使う時間がありましたが、その狙いを教えてください
比嘉
「浦安のディフェンスもすごく堅いんですよ、アグレッシブだし、フィクソも強いし。それで今日の使い方をしました。ボラは、フィジカル的な部分で心配もあったので、デメリットもありましたけど、勝点3を取りたかったので。でも、よくやってくれたと思います。(新井)裕生はピヴォもできるし、左利きのアラとして、よくバランスを取ってくれたと思います」

ーーこういう形は普段から練習していますか?
比嘉
「今、(完山)徹一以外、ケガ人がいないので、いろんなフォーメーションの練習ができるんですよ。ボラ選手を、(皆本)晃のセットに入れたり、他のセットに入れたり。関尚登や酒井(遼太郎)とか、今日は出てない柴田(孝平)選手とか上林(快人)選手とかも、いろいろな場合を考えて、そういうときにはこういう戦い方する、という練習はしています」

ーー数的優位な状況で、タイムアウトを取りましたが、その指示内容は?
比嘉
「相手のディフェンスが、2-1だったんですね。前に2人、後ろに1人、旋回するディフェンスでした。ただ攻撃がツータッチ、ツータッチになっていたので、相手はディフェンスをやりやすかったと思います。どこかのタイミングでダイレを入れて走ってバランスを崩したかったから。それはもうちょっと練習しないといけない。これは(監督としての)自分のせいでもあります。みんな、いつもボールを持ってから考えます。違います、ボールが来る前に考えないといけない。まずは相手のディフェンスを走らせろ、それをしたらバランスを崩すから。そういう話をしました」

ーー浦安とは開幕戦でも1-1の時間が長くて、最後に浦安が得点しましたけど、まずそういう試合になるというのは想定されていましたか?
比嘉
「堅いですよね、浦安。だから強いし、リーグで2位ですね、だからそういう試合になります。試合を決定するのは、細かいところだと思っています。中断が明けてから(ペスカドーラ)町田に勝って、次に(ボアルース)長野と戦いましたが、そのときも普段以上に厳しくしました、集中するように。それで勝ったので、今週も調子に乗らないように厳しくしました。みんなは、そのメッセージからこういう試合になるとわかっていたと思います。いい試合でした」

ーー中断明けの3試合で15得点取っていますが、今日は1得点でした。それは浦安の守備やイゴール選手が良かったということですか?
比嘉
「それもあります。イゴール選手には、いつも止められます。本当にいい選手、ちょっと悔しいですね。黒本(ギレルメ)もいい仕事してくれました。セーブだけじゃなくて、足元を使って(攻撃に加わり)、それで相手のディフェンスがちょっと不安になったところもあったし。どちらのキーパーも、本当に良かったです」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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