試合

粘り強い守備の長野を制し、ホーム町田が3位に浮上

~ペスカドーラ町田 VS ボアルース長野~

11月6日(日)、ペスカドーラ町田は、ホームアリーナの町田市立総合体育館で、立川アスレティックFCとF1リーグ第11節を共同開催。第2試合をボアルース長野を迎えて戦った。

ホームの町田は、中断前は上り調子で勝点を積んできたものの、中断が明けてからの2試合で敗戦し、10節を終えた時点で6位となっている。しかしながら中断期間中に獲得した新戦力、ゴレイロのジオヴァンニ選手を前節からスタメンで起用し、その特徴を活かした戦い方も取り入れ、今後の戦いに向けての準備を整えている。対する長野は、今季これまでの勝利は2つ。中断明けも敗戦が続いているが、そういったチーム力も織り込み済みで、パワープレーも武器と考える戦い方を選択している。

町田のアグレッシブな攻勢が予想された試合は、蓋を開けてみれば長野が粘り強いディフェンスからチャンスを作り出し、戦いとしては互角なものに。むしろ際どいシーンは長野の方が多い印象で、町田のゴレイロ、ジオヴァンニ選手のビッグセーブが際立つ展開となった。とはいえ町田は攻撃を得意とするチーム。ゴール前のシーンはしっかり作る。お互いゴレイロの活躍もあって、1stピリオドは両チームともに無得点のまま折り返した。

2ndピリオドも序盤は大きく変わらず、長野の粘り強い守備が光る展開。そんな中、自力に勝る町田が荒川勇気選手の個人技による得点で先制する。しかしこの試合、攻撃面でも積極性が目立つ長野は、町田の攻撃を裏返したカウンターで米村尚也選手が得点し、同点に。ここで折れないのが町田。ヴィニシウス選手が得点し、再びリードする。

町田が1点をリードしたまま5分強の時間を残したところで、長野は武器としているパワープレーをスタート。何度かシュートまで持ち込んだが、今度は町田が丁寧な守備を見せる。ジオヴァンニ選手の好セーブもあり、リードを守ってタイムアップを迎えた。

町田はこの試合の勝利で3位に浮上。長野は敗戦を喫したが、粘り強い守備もまた自分たちの武器であることを再確認した試合となった。

ペスカドーラ町田 試合後会見


甲斐修侍監督
ーー試合の総括をお願いします
甲斐
お疲れ様です。非常に難しい試合で、我慢強く戦わないといけないゲームだったんですけど、結果として勝点3が取れたことはよかったと思っています」

原辰介選手
「我慢が非常に必要なゲームを、若い選手が多いチームで勝ちきれたというのは次節以降の試合につながる大きな勝利になったと思います」

ーー難しいというのは、具体的にはどういったところですか?
甲斐「得点がまずなかなか入らなかったということと、スコアが動かないゲームで、チャンスがあっても決まらないゲームというのは、特にカウンターを受けやすかったり、失点をして一気に流れが変わったりする試合が多いので、そういう意味でなかなかこう、スコアが捗らない難しさがあったということですね」

ーー長野が粘り強く守って来て、ペースは長野のようにも感じましたが、そのあたりはどう感じましたか?
甲斐「そうですね、ペースがどっちかというのは特に、長野にペースがあるなと思いながらはまったくやってなかったですけど、ただ、自分たちの決定機を決めきれない時間帯が長く続いたのと、その決めきれない合間に、起こるトランジションだったりという危険性を常に考えながら進めないといけないゲームだったので、そういう意味で難しかったですね」

ーー途中加入したジオヴァンニ選手を先発で起用していますが、ゴレイロが代わったことで戦い方に変化はありますか?
甲斐「そうですね、ジオヴァンニは足を使うことに非常に長けているので、ゲームの中で状況によっては、数的優位を生み出すということは練習からやってきました。これまでは強いて足を使う、キーパーを押し出すという形はとってなかったですけど、そこを信頼して使えるだけの技術はあるので、そこで優位を生み出すという形は、意図的に何回も、というよりは、流れの中でそういう可能性があるときは積極的にやっていこうという形が増えてきたというのは変化の一つだと思います」

ーーシーズンの途中で外国人キーパーを獲得するというのは、守備の連携などを考えると難しい面もあったのではと考えますが、そのあたりはどうですか?
甲斐「助っ人として呼ぶにあたっては、正直、我々がこれまでやってきたディフェンスのシステムだったり、そういうものを落とし込むことの不安は、最初からなかったです。というのも、ブラジルのトップリーグでやっているキーパーなので。そういう経験値も踏まえて考えると、彼自身がこれまで経験してきた自信だったり、そういう状況判断レベルが高いというのはわかっていたので、シーズン途中に起用が始まることに不安はなかったです」

ーー獲得リリースには、守備面の問題があるからという書き方だったが、先ほどの話や今日のプレーを見ていると、どちらかというと攻撃面の起点を意識しているようにも見えるが、そのあたりはどうですか?
甲斐「獲得する前からジオヴァンニの映像とかどういうタイプかということはリサーチをしているので、そもそもキーパーとしてシュートを止める能力も高いことに加えて、足が相当使えるという情報はありました。まず大前提として足を使えるからというよりは、そもそもの失点をしないクオリティというところが優先順位です。その先で足を使えるという情報があったんですけど、足を使うキーパーを呼びたいがために呼んだという順序ではないです」

ーーとはいえ、代表の小暮監督もおっしゃっていたが、世界的には足が使えるキーパーが前線に上がって攻撃の起点になるというのが潮流で、日本にはまだないという話もあったのですが、そういうところも取り入れていこうという考えもありますか?
甲斐「基本的にはビルドアップだったり、相手コートに入っての優位性を生み出すという意味では、これまでの日本人のキーパーではそれを安定的にこなせるレベルの選手はなかなかいなかったんですけど、ブラジル人としてトップリーグで、そういうビルドアップも含めて、トータル的なスキルが高いというのはわかっていたので、それに加えて足が使えるということです。世界の流れがそうだということももちろんありますけど、だけど我々は、ずっとそれをやろうというスタイルではないです。状況に応じて、必要なときはやりますけど、1試合中それをやるかというと、そういうことではないです」

ーー2連敗後の負けられないという状況で迎えた今日の試合でしたが、試合前にどんな気持ちで試合に入りましたか? また、0-0で折り返して1点とったあとすぐに同点に追い付かれる難しい展開だったと思いますが、ピッチ上ではどんなことを思われたか教えてください
「試合前の面持ちとしては、いつもと本当に変わらなくて、キャプテンの伊藤(圭汰)選手が今日は出られなかったので、僕がキャプテンマークを巻くことにはなったんですけど、やることは変わらないですし、他の選手たちも自分のスペシャリティを出してくれるだろうという思いもあったので、試合の入り自体はいつも通りリラックスした形で入りました。

難しい試合展開のところでいうと、スコアがなかなか動かない中で失点が許されない状況で、僕のタスクとしてはそこのリスクをどれだけ抑えられるかというディフェンスの部分が求められると思ったので、そこはしっかりとやりつつ、攻撃のサポートだったり、さらに点が取れるような動きを意識して、今日は試合に臨んでいました」

ボアルース長野 試合後会見


柄沢健監督
ーー試合の総括をお願いします
柄沢
今日もありがとうございます。まず結果、負けてしまったっていうところは、真摯に受け止めなければいけないなと思っています。今私たちは、後ろから2番目にいて、あとがない状況での結果というところを、しっかり受け止めたいなと思っています。中断明けに(シュライカー)大阪さん、立川(アスレティックFC)さんと対戦し、難しいゲームが続いた中で、今日の(ペスカドーラ)町田さんに対しては、とにかくチーム一丸となって、ハードワークして挑もうというところをみんなで確認して、その点についてはみんな非常によく戦ってくれたなと思っています。ただ、いずれにしても結果でいうと、お互いのゴール前の局面で、決めるか、もしくは決められるかというところであり、町田さんの方がひとつ、そこのところは集中して、決めきらなきゃいけないところを最後決めきったなと思っています。これで第1クールが終わりましたので、良かったところ、改善しなきゃいけないところを、第2クールに向けて改めてしっかり1週間整理して、次の名古屋(オーシャンズ)戦に向けて戦っていきたいなと思っています。また頑張ります。応援よろしくお願いいたします」

米村尚也選手
米村「中断明け、立川さん、大阪さんとの対戦では、自分たちが積み上げてきたものがチームとしてなかなか出せずに終わってしまって、結果として、どちらも5失点した悔しい敗戦でした。その中で、自分たちがやってきたことをしっかり40分間通してやり切ろうというところで、そこに関しては、前の2試合と比べても、チームとして全員がやろうとしていたと思います。ただ、自分の感覚ではあるんですけど、前半は自分たちの方が決定的なチャンスが多かったと思っていて、そこは0-0で終わったところは、悪くはなかったですけど、あそこで点が取れていればとか、後半に関しても、決定的なところで、やっぱり何度もチャンスシーンがありましたし、そこで自分たちは点を取れずに相手に先制点を許してしまったところが勝負の分かれ目で、本当に悔しかったですし、失点に関しても、イージーなところ、自分たちがやられてはいけないところでやられてしまった失点だったと思います。特に2失点目は、同点に追いついて、いつも言っている点を取られたあと、取ったあとの5分というところで点を取られてしまったので、そこがやっぱり難しい展開にしてしまったかなと思います。第1クール最後の試合というところで、勝っていい流れの状態で第2クールにいきたかったんですけど、そこに関してはすごく悔しいです。以上です」

ーー2試合連続5失点していたところで、今日はいい守備ができていたように見えたが、どのように修正をしましたか?
柄沢
「まず中断明けの第1戦目の大阪さんは、キーパーの高見(政顕)選手が出てくるところも警戒はしていたんですけれども、それ以前にファーストディフェンスの強度が全然なかった。言い方は悪いですけど、自分たちは今まで弱いチームだからこそ泥臭く、チームでハードワークしようと、山蔦(一弘)ヘッドコーチ、山元(優典)コーチを含めて言ってきたのに、コーチングの声をかけることも、ハードワークもありませんでした。その後の立川との試合は、それでも前半の残り7分までは、私たちのいい守備はできていたので、今日の試合は、まずそこのところはとにかく自信を持ってやろうと。もっと言えば、立川戦後の休み明けの火曜日のところで、山蔦ヘッドコーチを中心に一回整理して、守備は非常に良かったから、そこはとにかくやり続けようと。あとは今、米村からもあった通り、ゴール前の局面で、とにかく決めきるところ、頑張るところを、もう一歩頑張ろうというところでやってきました。ですから守備に関していうと、今日は、それでも自分たちがやるべきファーストディフェンスの強度とか、チームでハードワークするとか、コーチングで思い切り声をかけるとか、そこのところは前の2試合に比べて踏ん張れたなと思っています」

ーーあとは攻撃面というところですか?
柄沢
「そうですね。そうはいっても、米村からも先ほどあった通り、やはり自分たちの奪われてはいけない、個でやられてはいけないというところはもっともっと突き詰めないと。第2クールに入れば、より研究されると思うし、そこがやっぱり結果につながると思うので。改めてそこは、1人でうまくいかなければ2人で行かなければいけないし、3人で行かなけれいけないし、キーパーと連携しなければいけないし。そこを突き詰めながら、プラストレーニングの中で守備をやる、そこを一生懸命やる、そうすれば自然と攻撃もより強度が上がって、決めなければいけないというところが出てくると思います。まず守備をやって、プラス取りきるところ、そこはしっかり取りきるというフェーズ、トレーニングになってくるかなと思っています」

ーー今日のパワープレーは、米村選手の言葉にもありましたが、フィクソを動かして田口選手のところにスペースができたり、増山選手にパスが通ったり、精度が高くなったなと思いましたが、パワープレーはどのように強化していますか?
柄沢
「まずは素晴らしい分析をありがとうございます。前回の立川さんとの対戦の反省から、町田さんに対してはまずはしっかりスタッフ同士で分析して臨みました。今、分析していただいた通り、私たちのパワープレーがいいときは非常にテンポが良く、右足左足にボールが来て、ワンタッチ、ツータッチではたいて、ピッチの中で選手がそれを認知、決断していく。今日は、そのサイクルが非常にテンポ良くできたなと思っています。あとは決めきるところ、そこがとにかく課題になってくると思いますが、そこも最後はトレーニングなのかなと思います。とはいえ、トレーニングでもテンポが悪いときもあって難しいところなんですけど、それでも今日は米村中心に自信を持ってやって、選手たちもしっかり声をかけ合いがならやってくれたので、やっぱりいいところ、改善しなければいけないところを整理して、第2クールに向けて突き進んでいきたいと思います」

ーー最後、山田選手から松原選手に交代したのは、どんな意図がありましたか?
柄沢
「松原の左足の1発です」

米村「去年もチームで一番点を取っている選手であり、もともとフィニッシュに長けているので、山蔦ヘッドコーチがフィニッシャーとして送り出したのだと思います。うまく繋いでフィニッシュに持っていこうという意図だったかなと思います」

柄沢「キッカーが勇気を持って、彼が空いたところへパスを通せないというところも、もっともっと練習しなければいけないなと思います」

ーー粘り強く守備をしていたが、ピッチの中ではどういう声をかけていましたか?
米村
「チームとしては、町田さんは自分たちと同じように3-1のピヴォを置く戦術を行っていたので、ピヴォに関してはまず入れさせないというところで、前の3人が努力をする、フィクソはボールが入っても前でパスカットする、もしボールが入ってしまっても前を向かせない、反転してシュートまで行かせないというところと、29番の山中(翔斗)選手は、1対1に長けていて、パスやカットインからのシュート、縦に運んだ後のシュートだったりがすごく脅威だったので、そこに対する対策、まずは山中選手にスペースを与えないというところで、そこに関してはより強くプレスにいくというところをチームとしてはコンセプトを作ってやっていました」

ーー2失点後、追わなきゃいけない状態では、ピッチの中でどんな声がけを行っていましたか?
米村
「2失点目の後に関しては、もちろんチームとしては痛い失点ではあったんですけど、正直、自分個人の感覚としてはチャンスも作れていましたし、チームとしては悪くない展開だったと思っています。今シーズンはどの試合でも話していますが、パワープレーは自分たちの武器の一つになっています。柄沢監督や山蔦コーチからも、1失点2失点は、最後のパワープレーもあるので、メンタル的にそこまで焦る必要はないと毎試合言われています。もちろん失点してしまったことで展開を難しくしたと思いますが、チームとしてはそこで気持ちが落ちたりということはなかったです。欲を言えば同点に追いついた時点で、失点せずに自分たちのペースで試合をうまく運ぶことができれば、パワープレー以外のところ、インプレーでの得点もチャンスがたくさん作れていたと思います。逆にいうとそこを勝ちきれないのが今のチームの課題、第1クールでも追いつきながらとか、逆に3-0までリードしながら逆転されてしまう試合もありましたので、そこを勝ちきる、もしくは同点に持っていって、勝ち点を一つずつでもいいので拾っていく、ということが今の自分たちには必要なのかなと思います」

ーーパワープレーは、3分くらいあったと思うが、ボールを回す時間が長く、シュートの本数が少なく感じたが、そのあたりはどう考えていますか?
米村
「そうですね、今週に関していうと、相手のパワープレーのディフェンス自体がすごくアグレッシブにくるというスカウティングを行っていて、フィクソの選手が自分たちのアラに対してすごく出てくるというところで、もちろんチャンスに繋げようと思えばもっとシンプルに行うこともできたんですけど、自分たちとしてはフィクソを振った状態で、より確実に一本を取りに行こうというところで、結果的にチャンス自体というか、シュート本数自体は少なくなってしまったと思います。それでも本当にフィクソを振って、角で間に合わなかったところから、中に折り返してのキーパーとの1対1だったりとチャンス自体は作れたと思うので、あとはそこを決めきるかどうかだったかなとは思います」

ーー大阪戦も町田戦も米村選手の得点でしたので、これからマークがキツくなることもあると思いますが、個人としてどう突き抜けていくのか、また周りをどのように使っていくのか、どのように考えていますか?
米村
「そうですね、ありがたいことに自分が点が取れているというところは、ポジティブに捉えています。とはいえ現状、そこで試合に勝ててないので、自分としてももっとリスクを伴ってでもフィニッシュまで持っていかないといけないですし、今日で言いますと自分が1対1を仕掛けているときに、自分は縦に運んで左でフィニッシュまで持っていくというパターンが得意なんですけど、町田さんは、おそらくなんですけど、縦を切って、中に行かせるというスカウティングをおそらくされていたのかなと思うので、自分としてもパターンを増やしていかなければいけないと思います。その中でも今日は、チャンス自体はありましたし、結果1得点は取れましたが、自分は1対1だったり対人というところ以外では、なかなか得点が取れていないので、個人としてはやっぱりそこですね。(ボルクバレット)北九州時代にウーゴという選手がいて、その選手から学んだパラレラだったりとか、フットサル特有の動きのプレーをもっと洗練させて、自分でもっと抜け出して点を取っていくスタイルプラス、今続けている対人だったり、セットプレーの外からのシュートはこれまで以上に伸ばしていなかければいけないと思います。

逆に自分がフィニッシャーとして警戒されれば、他の選手にチャンスが生まれやすくなるので、シュートだけじゃなくて、例えば縦に運んだとき、中に運んだときに、相手選手が自分へのマークのカバーリングに来たところを使うとかできるようにしたいと思います。また、カウンターの際も自分のシュートをまず警戒されるときがあるので、ギリギリで判断を変える、シュートなのかパスなのかというところで相手を迷わせて、結果、相手がパスを切ればシュートもあるなど、できるようにしていきたいです。北九州戦の2点目は、まさに自分たちが思い描いていたようなゴール、自分が中へのパスを見せたことで松永選手の折り返しが空いたかなと思うので、自分がフィニッシュとして持っていきながらも、味方のチャンスを作り出せる選手にはなっていきたいなと思います」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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