試合

ホームで迎えた再開初戦は、湘南が7得点で大勝

~湘南ベルマーレ VS バサジィ大分~

AFCフットサルアジアカップクウェート2022の開催によって中断していたF1リーグ、湘南ベルマーレは再開後の初戦となる第10節を、10月30日(土)ホーム小田原アリーナにバサジィ大分を迎えて開催した。9節の名古屋オーシャンズ戦は、12月下旬の開催予定となっている。

湘南にとってこの試合は、アジアカップ決勝での活躍も記憶に新しい内村俊太選手の凱旋試合。また、プレーオフからの優勝を目指していることもあり、負けられない一戦となっている。そんな期待もあってか、観客は1,636人。一方の大分は、館山マリオ監督を迎えて心機一転を図る新シーズンとなっているが、なかなか勝ち星を掴めず現在最下位。とはいえ、館山監督の手腕と選手のポテンシャルが噛み合えば、現状を打破するのは時間の問題といえる。そのことを理解している対戦相手は常に警戒を怠らず、湘南の伊久間洋輔監督も試合後、大分を警戒した選手たちは「ピリピリして試合に入った」と語った。その緊張には、今節から出場が可能となったブラジル人新戦力のサラ選手とジョン選手への警戒感もあったようだ。

湘南の注目選手である内村選手はスタメンに名を連ね、アジアカップに向けた強化試合の対戦相手となったブラジル代表に選出されたロドリゴ選手は、セカンドセットからのスタートとなった。大分は、昨年まで湘南に在籍した高溝黎磨選手に加え、新加入のサラ選手、ジョン選手をファーストセットに配した。

湘南のキックオフで始まった1stピリオド、大分はハーフウェーラインより下がった位置でのディフェンスを実践。多くのチームが高い位置からプレスをかけてくることもあって、湘南の選手たちは一瞬戸惑いを見せたが、すぐにいかにスペースを開けていくかという方向へ攻撃をシフトしていく。しかし、引いた守備を崩すのは難しく、なかなか得点までは至らなかった。こじ開けたのは、ロドリゴ選手。中盤でのボールの奪い合いの中、攻守の切り替えで守備のバランスが崩れたところを左足一閃、先制した。さらにキックインからオウンゴールを誘発。タイムアウト明けのコーナーキックからは堀内迪弥選手が得点し、リードを3点に広げた。この直後、大分は森村孝志選手が起点となり、裏に抜け出た高溝選手が湘南のゴレイロ、フィウーザ選手との1対1を制して、意地の得点を決めた。

2ndピリオドは大分も前からボールを奪うべく、守備ラインを上げていく。しかし、開始20秒で湘南のロドリゴ選手がセットプレーからこの試合2点目を決めて再びリードを3点に広げる。大分は攻守の切り替えを意識し、ボールを奪ったときは攻め切る姿勢を見せるが、なかなか得点に繋がらないまま時間が進んでいく。湘南は、攻撃に重心をかけた姿勢を保ちつつ、ボールを前に運ぶ意識を強める中で再び大分のオウンゴールを誘発。終盤には、鍛代元気選手が2得点を決め、合計7得点を上げて再開初戦を勝利で飾った。

大分は、得点こそ少なかったが、攻撃の形をしっかりと作り、ゴールに迫るシーンも数多く見せて、新戦力も存在感を発揮。最後まで攻める姿勢を崩すことなく、40分を戦い抜いた。現状、苦しい時間は続いているが、その時間は長くないだろうことを予感させる試合でもあった。

湘南ベルマーレ 試合後会見


伊久間洋輔監督
ーー試合の総括をお願いします
伊久間
今日もたくさんの方に応援に来ていただき、ありがとうございます。中断明け、うちの試合としては1試合目で、(バサジィ)大分さんは現在最下位ですけど、力のあるチームなので、選手たちも非常にピリピリしながら試合に入りました。

試合は最初、相手ディフェンスが引いていたので、ちょっと戸惑いはありましたが、落ち着いてシュートを打っていこうということで、シュート本数もありましたし、うまく先制できて、2点目も運良く取れて、3点目もタイムアウトのあとに取れたりとか、ゲーム運びとしては、非常によかったと思います。後半も立ち上がりから攻めて、ロド(ロドリゴ)が点をとってくれたので、あとはしっかりとディフェンスしてという形でした。本当に選手は良くやってくれたなと思います」

フィウーザ選手
フィウーザ
「みなさん、こんにちは。今日もサポート、ありがとうございます。大分は、チームも上手いし、選手たちも上手いし、前半はディフェンスが引いていたのでオフェンスが難しかったです。前半で3点取れたのは良かったですが、3対1にされたのは、よくなかった。そのあとは、ディフェンスを頑張って、たくさんブロックした。ドリブルをしたり、シュートもたくさん打って、良かったです。今日の試合は、とても大事だったので、勝てて僕たちもうれしいです。来週もがんばります。ありがとうございます」

ーー大分は前半、だいぶ引き気味のディフェンスでしたが、その難しさはどういったところにありますか?
伊久間「難しさは、スペースがないのでスペースを開けていかなければいけないというところ。基本的にどのチームも前からプレッシャーをかけてくるので、裏にスペースがあるんですけど、そこがない分、スペースを開けるために確認しないといけないという部分で難しかったかなというところですね。あとは、フィウーザも言ったように、引いているとカウンターになる確率が高まってしまうので、ボールロストをしないような攻め方が必要になるので、そういう気を使う部分があるということが難しさだと思います」

ーーそのあたりは、選手が試合中にアジャストしていったという形ですか?
伊久間「相手のプレスを回避して、相手コートに押し込んだ場合は、同じことなので、そこは選手たちがどこから攻めていくか、ということです。例えばサイドでロドリゴが1対1になるときは、フィクソのカバーはどうするのかとか、その辺が確認できた上で、じゃあどう攻めていこうかというところが共有できれば、アジャストできるということかなと思います」

ーー中断期間中に強化したポイントと、今日はその辺りがどう出たかということを教えてください
伊久間「中断期間中は個人に特化しました。サイドでの受け方とか、ピヴォの受け方を、もちろんみんなできるんですけど、そこを強化していくことで個人をもっと出せます。あとはセットプレーのシュートの確率です。そういうところに取り組んでいたので、今日もセットプレーで何点か入っていると思うんですけど、その辺が出たところじゃないかなと思います」

ーー今日の試合に向けて、選手たちのモチベーションを上げるためにどのようなことをしましたか?
伊久間「我々もアジアチャンピオンを目指すというところで、中断期間中は、個人を上げていくことによってさらにチームとして強化されていくと考えて取り組んできましたし、その取り組み自体がモチベーションだと思います。この試合に合わせてモチベーションを上げていくというところについては、みんなプロですので、そういう面では特に何かをやってということはないかなと思います」

ーー内村俊太選手は日本代表から、ロドリゴ選手はブラジル代表から戻られましたが、他の選手たちに何か影響はありましたか?
伊久間「彼ら自体は、本当にいつもと変わらず(笑)。ただ周りのみんながおそらく、自分もやってやろうみたいな形になっているんじゃないかなと思います。彼らが何か変わったかというと、いつも通り、練習の取り組みもいつも通りだと思います。多分周りがどうだったのかという話を(内村)俊太とかロドに聞いて、そういうところで影響を受けて、『自分も』という形にはなっているのかなと思います」

ーーロドリゴ選手は、昨シーズンMVPになってからマークも激しかったと思うが、今日はスペースがない中、得点にも絡んで今後は変わっていくのかなという印象を受けましたが、どう思いますか?
伊久間「本当にマークはきついですし、なかなか左足でシュートを打たせてもらえないというところはあるので、本当に仰った通り、今日、ロドリゴが点を取らないかなと思っていました。早々に取ってくれたので、このまま調子をどんどん上げてもらえればと思いますけど。そうはいっても本当にそこは戦いなので相手もケアすると思います。今日はロドリゴも気持ちよく点を取れて、良かったと思います」

ーー今日は1600人を超える観客が入って、内村選手、ロドリゴ選手の活躍を楽しみに来られた方も多かったと思うが、率直にこういった湘南らしいアリーナの中で、7対1で快勝したところで、そのお気持ちは?
伊久間「まず、このアリーナの中でやる気持ちというのは、さっきモチベーションを保つという話がありましたが、最早ここでやれば誰しもがモチベーションは上がってしまうという状態があります。演出に関しても、明確にクラブにアリーナ構想やエンタメをやるという意図があるので、選手も、あのファイヤーを出したくて点を取るみたいな、戦術とかではないというか、このホーム感というのはすべてをプラスに変える状態だと思います。今日はFURUKAWAスペシャルデーだったんですけど、去年は大敗していたので、それだけが懸念でした。本当に勝利できて良かったです」

ーー首位の名古屋オーシャンズとの試合が後半に2試合固まってありますが、まずはリーグ優勝というところで高めていきたいところ、継続していきたいところというのはどこにあるでしょうか?
伊久間「今年の名古屋は見ていても隙がないですし、その試合を後ろに2試合残している不安はありますけど、じゃあ何をするのかといえば、自分たちの力を高めることしかできないと思ってます。今日も試合に長く出ている選手もいれば、短い選手もいますけど、出場時間が短かった選手たちがいかに自分を高めて試合に食い込んでくるか、これが名古屋との戦いをプラスに持っていく鍵じゃないかなと思っています。ベテラン勢は、絶対にやってくれるんですけど、そのプラス要素がおそらくそういう方向にいくと思います。(バルドラール)浦安さんも、全然ブレないし、取りこぼさないので、我々も本当に1試合1試合を勝っていくのみというところです」

ーー日本代表との親善試合でロドリゴ選手がブラジル代表に選出されましたが、何か、感じるものはありましたか?
フィウーザ「とてもうれしく思いました。ロドリゴは日々努力をとてもしている選手で、選ばれる価値があります。努力をしていれば、なりたいようになれるということ。刺激になりました」

内村俊太選手
ーー試合の総括をお願いします
内村「大分は、前から(プレスをかけて)来ると思ったんですけど、ハーフというところで、自分たちの時間が多くなりました。その中で、最初はちょっと点が入らなかったんですけど、焦らず我慢してやろうとチームで声がけをして、そこからしっかり点が取れて、いい展開だったんじゃないかと思います。ただ失点のところだけ、こっちが得点した直後の失点は、ああいうことを続けていたら、トップにはなれないと思うので、あそこだけは修正しないといけない。でも、いいゲームだったと思います」

ーー久しぶりにチームでの試合だったんですが、そのあたりはいかがですか?
内村「確かに久しぶりで、他の選手より連携の部分では、ちょっと時間は足りなかったかなと思います。でも、ゲームになったら、各々役割は明確にあるので、そこはすんなり入れたかなと思います」

ーー代表でアジアカップで優勝して、その勢いというのが何かチームに還元されたなというところはありますか?
内村「意識が代表と、チームに戻ってくると違うなっていうのは、明確に感じます。ベルマーレは、シーズン前からアジアで1位を取ろうというのをチームで掲げていて、そこに行くにはまずFリーグで優勝だよねというところも話していますが、そうは言っても個人個人でやっぱりばらつきはあるので、そういうところの激しさだったり、そういう経験というのは伝えていきたい。まだチームに戻って時間も短いので、これからどんどん伝えていきたいなとは思っています」

ーー同じチームメイトのロドリゴ選手と今日も良い連携がたくさんありましたが、ブラジル代表に選ばれたロドリゴ選手に変化は感じますか?
内村「そんなに感じるところはなかったですけど(笑)、彼は一番ストイックなので。僕も今までいろんな外国人選手とやってきましたけど、本当にストイックで、常に上手くなりたい、強くなりたい、と努力しているのを常日頃から見ているので、当たり前のパフォーマンスというか。彼が点をとってくれると、チームも乗りやすいので、それもロドの仕事だと思うので、よかったと思います」

ーーブラジル代表と日本代表と、二カ国の代表がいるチームは珍しいと思うが、他のメンバーに与えている影響などは感じますか?
内村「やっぱりかなり刺激にはなっていると思いますね。今回アジアで優勝して、(代表に)入れなかった選手もたくさんいる中で、おめでとう半分、悔しい気持ちも絶対選手としてはあると思います。ロドはブラジルで、僕は日本代表で結果を出して、それがこれからもっと相乗効果で上がってくれればなと思います」

ーー改めて日本代表で得たものはありますか?
内村「フットサル、楽しいなって感じですね。もっと上手くなりたいなと思いました」

ーー2年後にW杯がありますが、そこで代表に入ることも目標ですか?
内村「僕の強みは、強いピヴォに対するディフェンスなど、主にディフェンスの部分だと思うので、それはアジアの決勝でも示せたと思います。世界の舞台で戦うときに、その力が必要になれば呼んでいただきたいですし、そこに向けて練習もそうですし、リーグの方も頑張りたいと思っています」

ーーアジアカップでなかなか出場機会に恵まれない中、決勝までどのようにモチベーションを保っていたのでしょうか?
内村「めっちゃ難しかったですね。(所属)チームでは、一番出場しているのに、代表に行って、アジア大会では全然出られなかった。そこまで試合に絡めないことは結構初めてだったので、やっぱり悔しさもありました。でも、(代表)チームの目標はアジアで1位を取るというところで明確だったし、みんなが全力で向かっていたので、しかも僕は年齢も30歳を超えていて、役割もやっぱり若手とは違うので、そういう雰囲気作りとかをしながら。難しかったですけど、チャンスをもらったときにやるしかないと思っていたので、そこの気持ちは自分なりに調整というか、頑張りましたね」

ーー決勝で出場するというのは、どのタイミングで聞いたんですか?
内村「会場に入ってからです」

ーー会場に入るまでは、「今日はどうかな?」という感じだったのでしょうか?
内村「まぁ、『今日はどうかな』みたいな感じで入りましたけど、逆に一番チャンスをもらえるのはイラン戦だと最初から思っていたので、ある意味準備はできていました。それは大きかったですね」

ーーいきなりの決勝で緊張はありましたか?
内村「緊張は、普段の試合から、あんまりしない方です。ホームの試合ももちろん好きですけど、アウェイも好きで。現地は、日本の(サポーター)ゾーンは、ほんのちょっとで、あとは全部イラン、みたいな超アウェイだったので、逆に燃えました。そういう方が好きですし、絶対倒してやろうみたいな気持ちになりました。なのでマジで緊張ゼロでしたね。楽しかったです」

ーーアジアカップで優勝して、サポーターの皆さんはすごく喜んでいたと思うんですけど、凱旋試合で7対1と大勝して、1600人も入りましたし、いかがでしたか?
内村「やっぱり注目もされて入った試合だったので、そこの緊張感はちょっとありましたけど、勝ててすごくホッとしてますし、これからはそういう見られ方をすると思うので、チームの中心選手として、しっかりやるのと、点を取りたかったですね。でもベルマーレのサポーターは本当にリーグ1、熱い人たちなので、みんなと優勝したいなと思っています」

ーー決勝は結婚記念日だったということですが、奥様は中継は見られていたんですか?
内村「寝てましたね、普通に(笑)。翌日に見たそうです(笑)。そんな感じです」

バサジィ大分 試合後会見


館山マリオ監督
ーー試合の入りからディフェンスを引き気味で入った意図と、後半はラインを上げて前からプレスをかける形になっていましたが、その狙いを教えてください
館山
前節のゲームでは前からプレッシャーをかけにいった際にマークの交換エラーが生まれ、前からプレッシャーをかけることが難しかったので、ハーフの位置で守りました。後半は負けていたので、前からボールを奪いに行くしかなかったのでラインを上げました」

ーー中断期間に取り組んだことは?
館山「主に、セットプレー、ハーフラインの守備とディフェンスに取り組みました」

野口茅斗選手
ーー中断期間中の練習では、チームはどのような雰囲気でしたか? また、今後ピッチの中から改善したいとか考えていることがあれば教えてください
野口「”何か”を変えようと全員が取り組んでいたが、”何か”が明確になっていなかったのでチームとしてはそこまでの大きな変化がありませんでした。個人的には中断期間で細かい部分を意識して行ってきましたが、個人ではどうにもならない難しい状況です。今後は戦術も大事ですが、まずは戦えていないので、ゲームキャプテンとしてもっと皆とコミュニケーションをとって勝ちにこだわっていきます」

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▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
▶Photo by 湘南ベルマーレフットサルクラブ
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