JFA 第29回全日本フットサル選手権大会 決勝
〜名古屋オーシャンズ VS 立川アスレティックFC〜
毎年、シーズンの締めくくりに開催される全日本フットサル選手権大会。第29回目を迎えた今大会の決勝が3月3日(日)に駒沢オリンピック公園総合運動場 屋内球技場で行われた。
この日に向けて、9つの地域で行われた予選を勝ち抜いた地域代表チームとFリーグに所属する21のクラブが2月24日(土)25日(日)に行われた1、2回戦を4つの会場に分かれて戦った。そこから3月1日(金)の準々決勝に駒を進めたのは、いずれもFリーグディビジョン1のクラブ。その後のタフな連戦を勝ち上がり、リーグ王者の名古屋オーシャンズと、リーグ3位の立川アスレティックFCが決勝で顔を合わせた。立川は、前身のチームである立川・府中アスレティックFCが2年前の大会で優勝、そのときの決勝戦も名古屋と対戦している。
試合は、3連戦目とは思えない強度で展開。お互いに主導権を握ろうと攻守ともにアグレッシブに戦うなか、先制したのは名古屋。ダルランが中央から強烈なシュートを叩き込んだ。その後はお互いに集中力高く戦い、スコアレスの時間が続くが半分を過ぎた時間帯に再び名古屋が得点。ゴール前でフリーになったアンドレシートを見逃さずに鬼塚祥慶がパスを送った。しかし立川も、セットプレーの流れから湯浅拓斗が得点して、1点差に迫って折り返しを迎えた。
2ndピリオドも先に得点したのは名古屋。出場時間が限られていた清水和也がシュートの跳ね返りを押し込んで得点。清水はその2分後にも強引な突破からシュートを決めた。また、その3分後には昨シーズンまで立川に在籍した金澤空がアンドレシートとのコンビネーションから得点。さらにセットプレーから再びダルランが決めてリードを5点差に広げた。
このタイミングで立川はパワープレーをスタート。しかし、中村充がゴールを決めて一矢を報いるが、反撃もここまで。6得点を決めた名古屋が5年ぶりに優勝を勝ち取った。
両チームともにシーズン終了後の監督の退任が発表されている。特に名古屋を5年間率いたフエンテス監督は、この試合を持って日本を去る。その監督が唯一手にしていなかったタイトルがこの全日本選手権。フエンテス監督は、最後のシーズンにオーシャンカップ、リーグ戦、そしてこの大会で優勝。3冠を達成して有終の美を飾った。
名古屋オーシャンズ 試合後会見
フエンテス監督
ーー試合の総括をお願いします
試合の入りが良く、先制点を取れたこともすごく良かったと思います。そのおかげでより落ち着いてプレーできて、2点目を取ることができました。この得点は、 こういった大会では珍しく、すごくきれいな形でのゴールだったと思います。コーナーキックから失点してしまいましたが、これは2つ目のアクションのところへの対応が少し遅れたのかなと思います。
それでも誰も顔を下げることなく継続して戦うことができたと思いますし、全員が大丈夫だということを信じながらプレーができていたと思います。より自信を持ってプレーをするとか、戦うというところで少し心配はありましたが、そこはこの大会でより成長できたと思います。
コンディションがあまり良くなかった選手がいたので少ない人数での戦いにはなりましたけど、そういった選手もプレーをして、なおかつゴールという結果を見せてくれました。そこが自分たちにとってよりプラスになって3点4点5点6点と決めることができて、優位に試合を進められたと思います。
それにプラス、この前の2試合も含めて自分たちは後半、いいプレーができていると思いますが、そこも継続してできた部分だったと思います。
パワープレーで失点をしましたけど、残り時間も多くはなかったので、そこでも試合を有利に進めることができたと思いますし、試合を通して自分たちが優勝にふさわしいプレーができたと思います。
ーー総括のなかで選手が自信を持ってプレーすることができるか心配だったという話がありましたが、それはコンディションについてか、連戦による疲労か、それともメンタルか、その要因はどういったところにあったのですか?
まず両方のことがすごく大事だと思いますけど、この(全日本選手権)タイトルを取れてないというところで、この大会に臨むにあたってメンタルの部分がより大事だったと思います。
フィジカルに関しては、リミットがあると思いますが、メンタル的な部分はコントロールできると思っているので、よりメンタルのところに集中して声がけをしていました。
ーーケガを抱えている選手が多く少人数で回すというところでどういったところに注意していたかを教えてください
まずメンタルについては先ほども言いましたけど、そのメンタルを大事にするというところで、いつもは周りにいる選手がいないことことを理解した上で、個人としてより集中して、人がいない分、より戦うところに集中する必要があったと思います。
こうしたシチュエーションに対しては、シーズンを通して準備をしてきましたし、シーズンの途中でも、ケガ人が出るシチュエーションもあったので、そういったところでもフィジカルのベースを落とさずにやっていく準備をしていましたし、メンタルの部分の準備もしていました。
もちろん選手にはいつも全員いて欲しいですが、いないときのためにどういうことをやっていかないといけないのかということは、シーズンを通して準備してきたので、そのシチュエーションがこの大会になりましたけど、しっかり準備ができていましたし、戦えたと思います。
ーーフエンテス監督が来て5年が経ちますが、日本のフットサルの成長をどのように見ていますか? また、監督にとってどのような5年間でしたか?
日本のフットサルについては、まずは戦術的な部分が成長したと思います。私が来た当初は、名古屋が大差で勝つ試合が何回もありましたが、今はギリギリの戦いになってると思います。
監督という立場としては、自分の出身、スペインだったり、他の地で経験したフットサルとはまた違うスタイルのフットサルをたくさん学べた5年間だったと思います。
フットサル以外の個人的なところでいうと、今まで経験した中で唯一の経験だったと思います。日本の文化だったりというところもすごくいい経験ができたと思っています。
ーー日本での最後の試合でしたが、監督自身はどういった気持ちで臨んだかを教えてください
皆さん、知っていると思いますけど、私は、すごく落ち着いた性格ですし、試合前は、ベンチに座って、練習の様子を見たりするのがいつものスタイルなんですけど、今日に関しては、ロッカーに残って、今までやってきたことを思い出しながら、時間を過ごしました。なぜかというと、(人が去るとき)最後に起こったことが印象に残りがちで、今までやってきたことが忘れられてしまうようなことが多いので、そういったことを考えるとやっぱり最後の大会でいい結果を残したいという気持ちもありました。そういった思いもあって、最後の試合に臨むためにロッカーで準備をしていました。
ミックスゾーンにて
※ミックスゾーンでの取材のため、写真はありません
名古屋オーシャンズ
安藤 良平選手
ーー試合を振り返った感想をお願いします
今日は、2年前に同じカードで僕たちが負けて準優勝した、その再戦じゃないですけど、そういう思いもやっぱりちょっと。その2年前を僕は経験してるので、落としたくないなとは思っていました。
立ち上がり、割といい時間帯に先制点を取れましたけど、試合は長いので、そのままずっと僕たちの流れになるとは思ってませんでしたが、試合を通してある程度は想定内のなかでできたのかなと感じています。相手は気持ちも強く戦ってきますし、ちょっとアフター気味なような感じで、試合を壊しに来るだろうなというのも想定はできていたので、そこも自分たちはやることブレずに、うまくゲームをコントロールできたのかなと思います。
ーーゲームをコントロールできるところがベテランの安藤選手であり、名古屋というチームというところですか?
どのチームと対戦してもそういう試合展開じゃないですけど、そうなることが多いので、それをはねのけて勝って、僕たちがより成長していくという循環を作っていかなきゃいけないと思っているので、試合は冷静にプレーできたかなと思います。
ーーケガ人やコンディション不良の選手がいるなか、少ない人数で臨んだ3連戦で、初戦は特にセットプレーで安藤選手に得点が生まれそうなシーンもありましたが、あれはチームとしての狙いですか?
(吉川)智貴が一緒のセットに出ることが多いんですけど、僕があのポジションにいるときは見てくれているので。僕のポジションが空いてれば(パスを)出してくれるし、僕に(相手が)食いついてきていたら他の選手を使うし、みたいな判断をちゃんとしてくれるので、いつでも自分がゴールを狙えるポジションに行って準備をしてました。でも、決められないところがね。
ーーループシュートがあったり、ヒールパスがあったり、おしゃれなプレーがありましたが?
ちょっとらしくないプレーがありましたね(笑)。決めたかったんですけどね、それが僕ですね。
ーーそういう意味では、技術的な成長も感じますが?
その欲はすごく強いです。今、本当に身体の調子もすごくいいですし、3試合やりましたけど正直全然疲れてなくて、もう3試合くらいいけるんじゃないかっていう感じです。日頃の取り組みが少しずつプレーにも現れてきてるのかなっていうのが僕自身も実感できているので。だから早く練習したいですね(笑)。
ーーオフですよね?
休むのはもったいないなっていう感覚ですね。
ーー吉川選手もそうですけど、出場時間が長くてもあれだけ走れるのは、日頃の練習の賜物ですか?
うまく、省エネしてるんじゃないですかね(笑)。
どの試合もそうですけど、僕はパワープレーの守備をするときが一番身体が元気で、(その時間帯は)相手はどんどん疲労していくっていう感覚でプレーしているので、メンタル的にはかなり余裕が出てくる時間帯かなと思います。ヒリつく時間帯ではあるんですけど、楽しくプレーしています。
ーーフエンテス監督がこの大会のタイトルだけなかったというところで、その点は選手としてはどのように感じていましたか?
僕も長くいるので、監督がというよりは選手もフエンテスと同じ期間、全日本は取ってないし、単純に名古屋オーシャンズには落としていいタイトルなんてないと思っているので、何が何でも勝ちたいなという思いが、一人ひとり、今シーズンで去るスタッフが結構多いのでスタッフも含めて、そういう思いがうまく優勝につながったかなと思います。
ーー立川の選手たちはそういう思いが力みにつながったという話もありましたが、その辺りの違いについては?
ああ、そうですね。自分を見失うくらい気合を入れちゃうと悪循環というか、自分のプレーができなくなると僕は思っているので。そのいいバランスを探すのが選手としては必要なスキルだと思います。シーズン最後の大会だし、一発勝負だとやっぱり気持ちの面が乗ってくると思うので、そのなかで僕たちは気持ちを乗せながらも自分たちのプレー、優勝するっていうところをしっかり見つめて、一試合一試合戦えたかなと思います。
ーー苦しいシーズンでしたが、終わってみれば3冠を達成しました。振り返ると?
全日本選手権に関しては久しく取ってなかったので、今年は何がなんでも取りたいなという思いで挑めました。リーグ戦は、年間を通してかなり苦しいシーズンが続いていて、寝られない日も正直ありました。なんでこんなに上手くいかないんだろうなと考えさせられることが本当に毎日あって、それでもみんなが優勝することを諦めずに取り組み続けた結果、最後の最後で奇跡に近いような大逆転優勝ができたので、みんなの、一人ひとりの取り組みが最後の最後で実を結んだのかなと思っています。
ーー今シーズンは若い選手も加わりましたが、名古屋の選手としてのキャリアも長くなって、最年長という立場で、声がけなどで心がけていたことはありますか?
なんかそういうタイプじゃないし、うまく伝える能力も特にないので。単純に自分自身が成長するために日々の取り組みを実践して、チームが優勝することを逆算しながら毎日過ごすことでチーム内にいい連鎖が起きていけばいいかなとは思っていたので。まず自分自身がやるべきことを最大限、毎日やり続けて、という意識しか持ってなかったですね。
ーーフエンテス監督に学んだことや成長を実感していることは?
5年間一緒にやっていたんで、僕自身はいろんな要素がすごく成長できたと思っています。試合では、決められた動きにこだわるような戦い方ではなく、選手一人ひとりの、セットによっての戦い方とか、仲間とうまくすり合わせることがすごく大事になってくる戦い方だなと僕は思っていたので、そういう意味では自分自身の引き出しはかなり増えたかなと思います。僕は、ゲームを組み立てるのが自分の仕事だと思っているので、(一緒に)出る選手によって特徴を生かしながらバランスをとって、周りに目を向ける力がかなりついたかなと思います。
ーーこれでシーズンオフに入って、新しい監督が来られるということで、迎える準備をする期間になると思いますが?
僕自身もまた成長できると思うので、いい状態で次のシーズンに入れるようにというところに向き合う時間だと思います。でも、早くトレーニングしたいです。
身体は全然疲れてないですけど、心の部分はちょっとリフレッシュが必要だと思うので、時間をうまく有意義に使いながらいいオフにしたいなと思ってます。
ーー来季はそこを活かして、新しい監督の元、また新しい成長をというところで?
ですね。はい、まだ成長できると思うので。
ーーちなみに何歳くらいまでは選手を続けたいという希望はありますか?
あんまり考えてないんですけど、この感じだったら全然まだやめたくないなって思います。身体で痛いところはないですし、試合をしても筋肉痛にはならなくて。それは体質というより、取り組みがかなり影響していると思います。今日の朝、起きたときも身体の調子はいいし、目覚めも良くて、「あ、これ来た、優勝したわ」という目覚めだったんですよ。めちゃくちゃ元気なんで、自分自身がどういう成長を遂げていけるのか、今後の自分が楽しみですね。
◇◇◇
金澤 空選手
ーー試合を振り返った感想をお願いします
今日は本当に試合全体を通して主導権を握れたというか、自分たちのアグレッシブな姿勢、勝ちにこだわる姿勢を見せられた40分だったと思います。
ーー自分のプレーというところはどう感じていますか?
自分的には、ファイナルシーズンから本当にいいコンディションでプレーできているのを実感しながらプレーしていました。選手権でも準々決勝、準決勝と得点に絡むことができていたので、今日もしっかり、今回はオウンゴールじゃなくて、自分で点を取れたっていうのは良かったなと思います。
ーー名古屋に移籍して、この1年はどういうシーズンでしたか?
移籍を決断したときも難しいというか、自分にとって大変なことが多くなるのは想定していましたけど、それ以上に大変なことが多かったというか。フットサルを始めてから初めてといってもいいくらい出場機会がなかなかない時期を経験しながらも、名古屋で強度の高いトレーニングをしっかり積めたことで最終的に自分は成長できたと思います。ドリブルとか自分の得意なプレーだけじゃなくて、そういうハードワークの部分であったり、フィジカル的な部分で特に成長を実感できたんで、本当に移籍して良かったなと思える一年だったと思います。
ーー試合に出られない期間は、どういったことを考えながら?
やり続けるしかないというか、毎日の練習でアピールするしか方法はないので、そこはブレずにというか、フットサルに集中できる環境なので、トレーニングをしっかり積みながら継続してやっていました。
ーー試合に出るためにたりないと感じたのは?
さっきも言ったように、得意なプレーだけじゃなくて、ハードワークの部分が最初は足りなかったと思いますし、そこは代表に行くためにも必要な部分だったので、そこが1年間成長できたことで最後は出場機会を得ることができたんじゃないかなと思います。
ーーこれまでのフットサルとの違いも感じましたか?
自分の役割も違いますし、そこは難しい部分でしたけど、どの監督でも、どのチームでも出られる選手にならないと、代表であったり、海外でプレーするのは簡単にはいかないので、そういう意識でずっとやっていました。
ーー名古屋のスタイルを含めて、要求を理解する時間が必要でしたか?
最後はハードワークもしながら、自分の良さを出していくことができるようになったのは良かったかなと思います。
ーーリーグ戦は苦しい時期もありましたがチームとして、そこを超えて優勝して、そこからこの大会までで、また一つ強くなったようにも見えますがどう感じていますか?
この大会に向けての準備期間も本当にいい練習ができていましたし、今季限りで去るスタッフとかダルランであったりの思いとか、ケガをしている選手の思いも背負ってというのもあって、より一層強いチームができたのかなと思います。
ーー移籍1年目で最後の試合が古巣というのもできすぎたストーリーですが?
そうですね(笑)、2年前の決勝は自分は逆にいた立場で、今度は名古屋の選手としてアスレと決勝で戦うのは、その当時は考えることはできなかったですけど、自分がお世話になったクラブとこういう決勝で戦えるのは、自分にとって誇らしかったですね。
ーー挑戦者のときとはまた違うメンタルだったと思いますが、その違いは?
そこがやっぱり名古屋の一番の難しさというか。他のチームは名古屋と対戦するときは2倍3倍くらいパワーアップしてくるので、それを跳ね返すというのが自分にとっての成長につながるんだなというのは感じました。
ーー古巣対戦となった今日の試合に臨むに当たっての気持ちは?
今日は、やっぱり楽しみが大きかったというか。変なプレッシャーもなく、楽しむことだけ考えてやっていたんで、大丈夫でした。
ーーゴールシーンを振り返ってもらえますか?
自分はドリブルで2人くらい引きつけることができたし、アンドレ(アンドレシート)に出す前からなんとなくスペースが空いているのを把握していたんで、出した瞬間に走って。アンドレは確実にあそこを見てくれるので、信じて走り込んでうまく決められたかなと思います。パスを出した瞬間に、リターンが来るイメージはだいたい感じていました。
ーー味方と共通のイメージが持てるようになったのは、来季の活躍に向けて大きな要素だと思いますが?
来季はもっともっと活躍できるように、という思いです。
ーーこの後、アジアカップがあります
1週間2週間くらいですけどしっかり休んでリフレッシュして、いいコンディションを作って行きたいです。今後の人生に向けて、本当に大事な大会が始まるのでいいプレーができるようにやっていきたいと思います。
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立川アスレティックFC
比嘉 リカルド監督
ーー試合の振り返りをお願いします。
すごくいい試合だったんですよ。試合を見てない人が結果を見て、(名古屋にとって)余裕の試合だったというかもしれないですけど、実際はチャンスも多く作ってよく戦ったんです。後半に3点目を決められて集中が切れてしまった。そのあと、点差が離れてしまったけど、そこは僕らがもう1回試合に戻るのがちょっと遅かったですね。
パワープレーをかけたけど、もっと早めにパワープレーをすれば良かったかなというところもあります。
ーーもっと早い時間帯からですか?
そうですね、点差が5点も離れてしまったんで。それまでに5回チャンスを作ったんですけど決めきれなかったんですね。名古屋も強いので、悔しいですよ。優勝したかったです。
ーー2年前に優勝したときと同じカードでしたが、どんな違いがありましたか?
優勝したときは、フィールドプレーヤー9人で戦った。人数が少なかったね。でも、みんな、悪い状態でもオーガナイズ、ちゃんと残したんですね。ちゃんと集中していた、やりきったんです。今日は、悪いときにオーガナイズ、続けられなかったんですよ。集中が切れたところでやられて、試合に負けてしまったなという思いです。
ーー前回は、集中して守備ができていた印象です
自分たちのチームは、守備、ディフェンスをするチームです。失点までは大丈夫だったんですけど、ミスして、失点になって、メンタル面でバランスを失って、オーガナイズがなくなって、それがまた失点につながってしまったんです。
ーー前回のときは、1試合を通してオーガナイズされていた?
今日も正直、32分くらいはうまく戦うことができて、チャンスをいっぱい作って、その8分くらいの間に、集中切れてしまって、チームのオーガナイズがうまくできなくて、やられたですね。
ーー集中が切れてしまったのは、失点のショックによるものですか?
失点をなんとかしたいと焦ったからもっとやられたね。だからオーガナイズ、それが大事ね。オーガナイズするためには意識高く、僕を含めてチームとして、メンタルコントロールを持ってオーガナイズするように、悪いときは冷静に考えないといけないね。
ーー冷静さを欠いてしまった?
決勝は特に、難しいところがある。戦いがあるから、熱いところ。いつも言ってる、心は熱い、頭は冷静。でも、そういうメンタルを忘れてしまうところがあるんですよね、しょうがないです。でも選手たちに感謝してます、よくやってくれたです。1日目(準々決勝)、何人か足を攣っていて、昨日もすごいタフな試合になった。しょうがないです。
ーー確かに今日は3連戦目とは思えない強度でした。
よく走ってくれた。無事に試合が終わって、誰もケガしてないから、それが一番良かったです。
ーー立川の監督としても今日で終わりますが、振り返っての思いは?
楽しい時間でした、本当に。今シーズンだけじゃない、3年間、監督として、現場のリーダーとして、選手は19人いて、スタッフも入れて、同じ方向に向くのは難しい。良いときはみんなついてくるんですけど、悪いときはバラバラになってしまう。でもこのチームは、本当に悪いときに、みんな力を合わせて頑張ってきたんです。だから人間として本物の大人、すごくいい人たちだったんですよね。それが一番、一番高く評価しているところです。
◇◇◇
新井 裕生選手
ーー試合の振り返りをお願いします
昨日、無失点で終われて、自分たちはあくまでも守備に重きを置いているチームだっていうのを再認識できたんで、今日も苦しい展開になるかもしれないけど、あくまでも守備から入るということを試合前に言っていました。だけど、前半に2失点あって、ちょっとそこは自分たちの足りなさが決勝の舞台で出てしまった。それでも前半は2対1で折り返せたので、後半もう1回立て直して、我慢強く守っていればチャンスが来ると思っていたんですけど、ああやってチャンスを決められなかったのは僕ですし、1失点してからポンポンポンと失点してしまったチーム力というところは、やっぱり足りなかった部分なのかなと思います。
ーー後半は相手ゴールに迫るシーンも多かったですが?
僕自身、今シーズンは得点という形でチームを何度か勝利に導くことができたんで、今日の試合も、本当に最後の試合だったし、チームにもすごく恩があるので、そういうところは得点という形で力になりたかったんですけど、11本シュートを打って0点というのは本当にすごく悔しいというか、恩返しし切れなかったという意味では悔いが残る試合でしたね。
ーーシュートを11本打ったんですか?
らしいです。(上村)充哉が言ってました。本当に、1対1も3、4回くらいあったのかなっていうところで、こういう緊迫した試合でこそゴール前で一つ余裕が持てるような、世界のトップレベルのアンドレシート選手だったりダルランは、熱くなったああいう展開の中でもキーパーを交わす余裕があったりだとか、コースを狙う余裕は上だったと思うので、僕もそういうところはもう少し成長していかないといけない部分かなと思います。
王者相手に11本、自分はこのレベルまできたんだなと思いましたけど、もう一つ上を目指すうえでは、そこを決めていかないといけないですし、勝利につながるゴールが今日は本当に欲しかったんで、そこは悔しい気持ちでいっぱいですね。
ーー試合前から試合後まで、立川のサポーターの応援が熱かったですが?
本当に今までで一番「裕生」という声が届いたというか、胸に響いた試合だったので、結果で示せなかったのは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、ここまでこういう活躍ができたのはチームメイトやスタッフ、サポーターの力が大きいものだと思います。得点王という賞は一人では決して取れなかったと思うんで、本当にすごく感謝したいと思います。
ーーサポーターの得点への期待は感じましたか?
僕が打つたびに「裕生」「裕生」っていう声が聞こえてきてたんで、本当に何がなんでもっていう、それが逆に力みにつながってしまったっていうのは、僕の未熟な部分だと思うんで、応援の力をゴールという、勝利という結果に結びつけられるような選手になっていきたいですね。
ーー試合後は涙も見えましたが?
立川というかアスレというチームを背負って戦う最後の日なんだっていうのを、この大会に入ってからすごく考えていました。それで今日が本当に最後というのを考えたときには、いろんなことを思い出しましたし、ジュニアユースから始まって、ユースは高校サッカーをやっていたんですけど、サテライトを経験して、トップチームに上がれなくて他のチームに行って戻ってきて。1、2年目は結果を残せなくて、ここ最近結果残せるようになってきてという、いろんな思いが込み上げてきて、なおかつこの試合で自分の結果を残せなかったというところで本当に悔しい気持ちがあふれ出てきてしまって。最後はサポーターを見るのも辛いくらいの気持ちだったんですけど、このアスレで過ごしてきた時間は、僕のフットサル人生においてかけがえのない財産ですし、大きな経験だと思うので、ここで培ったものは忘れずに今後に活かしていけたらなと思います。
ーー印象に残る思い出や試合などは?
リーグで2位になって(2022-2023シーズン)、プレーオフで(名古屋に)3連敗したところは、僕にとっては本当に大きな、フットサル観というかプロフェッショナルという部分で、差を感じたときでした。そこで一つ、自分に大きく足りないものが感じられた。今回の移籍の決断というのも2年前の3タテ食らったときにやっぱりいろいろと考えるものがあったので、あの試合が本当に印象的でした。
ーー移籍を決意させたのは、その経験なんですね?
優勝は優勝でうれしかったですけど、今後のフットサル人生を考えたときにあそこで…。僕たちも2位になれて自信があったんですよ、5試合目までもつれ込むくらい自分たちもできると思っていたなかで、名古屋の気迫というか、プロとして、フットサル選手として生きてきてる人たちの気迫というものを直で感じたときに、やっぱり日本代表を目指すうえでも、リーグの優勝っていうところを目指すうえでも、そういうところが大きく名古屋と違うのかなと。
ーー名古屋は優勝を決めてからプレーオフまで準備期間があったが、立川はその前に勝ち抜かなければならない試合もあって難しいところもあったと思うが?
それはそうですけど、そこで圧倒された。もっと戦えると思っていたなかでのあの何もすることができなかったっていうのが自分的にショックな出来事だったんで。今日の負けも悔しいですけど、あのときは本当に人生で一番悔しい試合だったなって思います。
ーー環境を変えるチャンスがあるなら掴みたいと思わせる出来事だった?
選手として上を目指していくことを考えたときには、やっぱりそういうチャンスがあれば掴むべきだし。フットサル界は、恵まれた環境ではないし、特に今年は、W杯イヤーということもあるので。自分もこのチームに帰ってきたときは、一生アスレでやっていくんだろうという思いで戻ってきましたけど、そういう試合を経て、今回の決断に至りました。
ーー代表のポルトガル遠征では、フィットしてない守備面を突かれたり、今回は決定力というところで物足りなさが出たが、今後はどこを磨いてどんな選手になっていきたいという希望はありますか?
代表で求められていることは、今アスレでやっていたこととは真反対のこと。守備だったらマンツーマン、ポジションもアラ。そういうところが求められると考えると、ユーティリティ性ですね。今、チームの守備ではセットプレーも同じ場所でやってるんですけど、代表だといろんなところをやるので、本当にどこでもこなせるくらいの頭、フットサルのセンスだったり、頭の使い方というところ。守備も攻撃もやっぱり頭がいい人が活躍していくと思うんです、吉川(智貴)さんみたいな。吉川さんは体格的にすごく優れているわけではないと思いますし、やっぱり動き方だったりタイミング、テンポ、そういうところも全部含めてフットサルを上達していくというところが僕にとっては、今後目指していくべきところなのかなと思います。
ーーポジションはアラでもピヴォでもこだわりなく?
今日もこうやって体格的に差があるチーム相手だったら4枚気味にやることもありますし、僕を使ってくれる監督は、そういうところも多少はオプションに入れてると思うんで、そういうところのクオリティが上がってくれば、どんな監督だったとしても、裕生がいれば3-1もできるし、クワトロもできるし、アラもできるし、ピヴォもできるしって、すごく大きな強みになると思うんですよ。守備も必然的に必要になってくると思いますし、攻撃もユーティリティ性というところはすごく大きくなってくると思います。
ーーあとはこういう一発勝負の試合で決められる選手になるというところ?
リーグ戦だと気持ち的にちょっとゆとりがあるような感じがあるんで、来たボールをシンプルに決めることができるんですけど、こういう一発勝負は、自分が考えてる以上のプレッシャーだったり、思いがあると思うので、そこを冷静にできるというのも頭だと思うんで、そういう部分も成長していきたいと思います。
ーー今日は枠に飛ばせなかったシュートも多くあったが、これだけ打つチャンスが多いということもなかなかないと思いますが?
リーグ戦でもそうですけど、チャンスの数はリーグの中でもトップレベルで多い選手だと思うんです。だから決めるところを決めていれば、渡邉トモ(知晃)さんの記録も狙えるくらいのチャンスの数はあったと思うので、そういうところは打ち分けだったり、シュートの種類を増やしていくのも必要だと思います。でも、今日のような試合はちょっとした力み、決めなきゃっていう思い、決めたいっていう思いがやっぱり力みにつながっていると思います。
ーー来シーズンも期待しています
上を目指して、今まで以上にハングリー精神を出して、やっていきたいと思います。
◇◇◇
中村 充選手
ーー試合の振り返りをお願いします
僕たちの完敗ですね、それ以外ないです。(名古屋は)決めるところを決めてきますし、決められなかった僕たちの負けなんで、はい。何もいうことはないです。
ーーそういったなかでも一矢を報いる2点目や、その前のチャンスメイクなど、中村選手の負けたくない気持ちが見えましたが?
あれはチームとしてやることをやってきただけなんで。それを決められなかったというのが僕たちの実力だったんで、それでは勝てないですよねっていう。名古屋のチャンス数と比べても、僕らが圧倒的に少なかったわけでもないし、チャンスは僕らにもあったので、僕らの実力が出てしまったんじゃないかなと思います。
ーー今日でシーズンが終わったというところで1年を振り返っての総括を?
そうですね、今は総括で全てを言葉にするのは難しいんですけど、リーグ戦も3位で終わってしまって、選手権も2位だし、オーシャンカップも全然いいところまでいけてませんし、なんだかんだ不甲斐ないシーズンだったかなって思います。
ーーそういったなかでしたが、自分の成長という部分は?
移籍しての2年間と考えると、比嘉さんの元にきていろんなことを教えてもらえましたし、選手としてレベルアップは、比嘉さんのおかげでできたものもありますし、このチームでこのメンバーのおかげでより技術が高くなったり、自分の心が変わったりっていうのは多くあるんで、このチームにきて良かったなって思います。