試合

同じ相手に2度負けない、名古屋が新シーズン最初のタイトルを獲得!

~名古屋オーシャンズ VS 立川アスレティックFC~

Fリーグの開幕を2週間後に控えた6月5日(日)、駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場でオーシャンカップ2022の決勝戦が行われた。対戦したのは、昨シーズンのリーグ王者、名古屋オーシャンズと、シーズン終盤の3月に開催された全日本選手権の覇者、立川アスレティックFC。この2チームは、立川が優勝した全日本選手権の決勝でも顔を合わせており、短い期間で同一カードが再現された。

オーシャンカップは、コロナ禍を経て3年ぶりの開催。F1とF2のチームにU-19フットサル日本代表を加えた22チームが参加した。1回戦から3回戦までの1次ラウンドは、5月25日〜27日に、エスフォルタアリーナ八王子で開催。F1に所属する名古屋オーシャンズ、ペスカドーラ町田、立川アスレティックFC、F2のしながわシティの4チームが決勝ラウンドへ駒を進め、6月4日に屋内球技場で準決勝が行われた。また、決勝戦の前には3位決定戦が行われ、町田がしながわを破って3位を獲得している。

全日本選手権は3月に行われたばかりだが、シーズンとしては一つ前の2021-2022シーズン終盤の大会。オーシャンカップは、2022-2023シーズン最初の大会であり、シーズンオフを挟んで選手の入れ替わりもあるので、似て非なるチームとなる。また、立川は、今季からホームアリーナの関係で名称を変更。新しいクラブ名となって迎えた最初の大会となっている。とはいえ、どちらも監督は継続し、選手の入れ替えはあってもここまで積み上げたクラブのカラーは受け継がれている。また、チームのクオリティも維持されている。前回の決勝を再現するのか、それとも名古屋のリベンジなるか、興味深い一戦となった。

お互いに連戦の疲れを感じさせない立ち上がり。より攻撃に重心を傾けて先制点への意欲を見せたのは名古屋。守備もタイトに行い、立川が攻撃を仕掛けてもシュートまで持ち込ませない。その狙い通りに名古屋が先制。大きな展開で揺さぶって、守備のバランスが崩れたところを左サイドからゴール前に入ったボールを、ゴレイロの裏を取ったオリベイラ アルトゥール選手がするりとゴールに流し込んだ。しかし、そこで立川も慌てず、自分たちのリズムを取り戻していく。ピッチの幅と深さを使った攻撃でらしさを取り戻すと、シュートまで持ち込むシーンが増えていく。同点ゴールは、キャプテンの上村充哉選手のミドルシュート。シュートの跳ね返りを拾ってダイレクトで押し込んだ。その後、名古屋、続いて立川がタイムアウトを取得。立川は、タイムアウト後のセットプレーで皆本晃選手兼代表が得点し、逆転に成功した。

2ndピリオド、キックオフ前に自分たちのサポーターを煽ったのは名古屋。同じ相手に2度負けるわけにはいかないという強い意志を見せた。その名古屋が立ち上がりから主導権を握る。開始2分も経たないうちに、コーナーキックからのサインプレーで、ブラジル代表経験もある新戦力のダルラン選手が豪快なゴールを決めて、再び同点に。そこから1分も経たない間に攻撃の形を作ってアルトゥール選手がこの試合2点目を決めて再度逆転した。後半は、終始名古屋のリズムで、攻撃をシュートまで持ち込むせいか、相手陣内でのセットプレーも多く、33分にはコーナーキックから水谷颯真選手が得点し、立川を突き放した。このまま負けるわけにはいかない立川は、7分弱を残したところでパワープレーをスタート。新井裕生選手が決めて1点差に迫るものの、追いつくことはできずにタイムアップを迎えた。

新シーズン、初タイトルを獲得したのは名古屋。その強さはやはり一枚上。しかし、立川やF2のしながわなどの戦いぶりは、善戦というより、その名古屋を脅かそうとする挑戦的な姿勢が際立った。これから始まるリーグ戦に向けて、期待が高まる決勝戦となった

試合後会見


名古屋オーシャンズ フエンテス監督
ーー試合の総括をお願いします
フエンテス
両チームとも目的としているものがはっきりとしていて、決勝にふさわしい試合だったと思います。自分たちは、試合開始からできるだけミスをしないように、自分たちのプレーができたと思います。特に今日の試合は、相手が立川ということで先制点が取れたことがすごく大事でした。私たちは、試合をコントロールしながら、自分たちにプレッシャーを感じることなく戦えたと思います。

集中力が大事な試合でしたが、ディフェンスの部分で自分たちのエラーが出たところから失点してしまい、逆転されてしまいました。しかし、そこでも自分たちは失点したから終わりというわけではなく、その次があるということを理解しながらプレーできました。ハーフタイムにスコアを動かすためには何をしなければならないかということを話し、選手たちがそれをしっかり聞いて理解してプレーできたことでそこから逆転できました。プレーすることで成長できた試合だったと思います」

篠田龍馬選手
篠田
「今監督が言ったように、先制点を取れたことがすごく大きかったゲームだと思います。昨シーズン(全日本選手権の決勝で)、立川には1-0という無得点で負けていたということがあったので、得点を取れたということで、一度は逆転されましたけど、前回の決勝とはまた違った、点が入るというイメージを持てたなかでのビハインドだったので、自分たちを信じてやることをやれば、勝てると思っていました。慌てている選手もいなかったですし、そこで逆転できてからも緩むことなく、一体感を持って、いい選手たちが揃っているのは間違いないので、その中でチームのために走るだったり、体を張るっていうところができていたので、それができたら絶対に負けない、絶対に勝てると思っているので、それがしっかり表現できたゲームでした。昨日もそうですけど、それが難しい試合を勝ちきれた要因だと思います」

ーー全日本選手権大会で負けた相手との戦いでしたが、試合前にどんなことを伝えましたか?
フエンテス
「自分たちはモチベーションが高いですし、監督からプレッシャーを与えることはしません。試合の戦術やコンセプトの話をしました。選手たちにプレッシャーがかかっているのもわかっているので、それ以上のプレッシャーをかける必要はないと思っていますし、選手たちがピッチの中でより表現できることを手助けできるようなことを話しました」

ーープレッシャーを和らげるのに、どういった声をかけましたか?
篠田
「決勝なので、みんな気持ちが入ってるというのはわかっていたし、前回の決勝で負けた相手というのもあって、和らげるということは特にしませんでした。円陣の前に自分が言ったのは、昨日の試合でのチームの雰囲気だったり、一体感だったり、チームのために、さっきも言いましたけど、走る、体を張る、そういうところ、犠牲心を持ってみんながしっかりやれれば勝てると言いました。今日もうまく行かない時間帯はありましたけど、そういうときも絶対あるから助け合ってやろうという話をしました」

ーー準決勝、決勝と追いつかれたりしましたが、勝ち切る強さも出たと思います。リーグ戦に向けてはいかがでしょうか?
フエンテス
「自分たちはやることを変えずに、毎週毎週積み重ねているものを引き続き積み重ねてやっていく。また、常に自分たちがいい状態でいられるように、フィジカル的にも戦術的にも少しずつ積み重ねていきます」

篠田「リーグ戦はまた別物になので、戦い方であったりが変わる中で、先ほど監督が言ったことと同じようなことになるんですけど、自分たちでしっかり、よりチームを成熟させるために練習や試合をこなして、より成長して、リーグの終盤を迎えられるように、本当にいい準備をしていくだけです。昨日、今日のほうなゲームになることもやっぱり多いと思いますし、簡単に勝てるとは思ってないので、しっかり気を抜かずに、このタイトルは取りましたけど、また別の戦いが始まるので、気を緩めずに準備をしていくだけです」

ーー篠田選手が一体感があって、ハードワークができるチームと言っていたが、チームづくりについて教えてください
フエンテス
「すごくいい質問だと思います。

それは、何かをするというわけではなく、自然になっていくものです。選手のみんながプロフェッショナルであることがすごく助けになっています。また、ロッカーでの雰囲気をすごく大事にしていますし、そこが基本になって人間として成長していけます。

自分たちが一体感をもってやるためには、監督自身がみんなの手本になることが大事です。監督は、チームを象徴するので、できる限り多くの仕事を選手に見てもらえるようにしています。それはいろんなところに関係していますし、お互いにリスペクトを持って関わることが大事です。スポーツ選手である前に、人間であるので、その人間性をすごく大切にしています。人間性が良ければ、そこからスポーツ選手としてもより成長できると思っています」

ーー今大会も面白い試合をしていたが、観客が少なかったと思います。今後、Fリーグを盛り上げるために、王者名古屋としてどんなことが大切だと考えますか?
篠田
僕たち選手は、ピッチの中で魅力のあるゲーム、また見に行きたいと思ってもらえるような試合をすることが、一つの大きな仕事だと思います。僕たちは勝利を義務付けられているチームで、僕も長く名古屋でプレーしていますけど、僕も以前は結果を出せば見にきてもらえると思っていました。でも、最近はそれだけではダメだと感じています。

クラブとしても、いろんな取り組みをしている最中で、新しくトレーニングセンターを作って、試合に関しては本拠地の武田テバオーシャンアリーナから離れて、巡業のように、いろんな場所でやる形になっています。街中の動物園が近くにあるようなところで試合をして、以前は見にきてもらえなかったような新しい層の方達にホームゲームを見にきてもらえるようにしています。移転したことはそういうメリットがあるのかなとも感じていて、そこから本当の集客につなげていくのは、クラブとしてもリーグとしても課題であると思いますけど、選手たちも勝つだけでは足りないということには気づいています。クラブもいろんな取り組みをしているので、その成果を出せるように、選手たちも試合・練習だけじゃなくて、いろんなことをしていかなければいけないのかなと感じています」

立川アスレティックFC 比嘉リカルド監督
ーー試合の総括をお願いします
比嘉
「まず悔しい気持ちはありますが、いい戦いをしたし、まだこれから先があります。全日本選手権で優勝したあと、選手たちにもう一度同じ気持ちを感じたかったら、もっとやらなやきゃいけないし、簡単ではないと言いました。試合は勝ち負けがあるので、決勝で負けましたが、勉強になりました。もう一つ、名古屋と決勝で2回戦って、2回勝つのは難しい。でも、王者名古屋といい試合ができて、自分もすごくうれしい。リーグ戦に向けて切り替えていきたいと思います」

上村充哉選手
上村
「僕たちの力不足だったと思います。名古屋の方がチーム力があることは明らかだし、ただ、まだリーグが始まってなくてよかったなと思います。名古屋の方が環境も良くて、練習量も倍近いと思うんですけど、でもこの負けを僕たちが環境のせいにするのか、名古屋に追いつくためにその環境の中でもやっていくのかで、多分大きく違うと思います。それは、今だけじゃなくて、将来のアスレの選手のためにもなると僕は信じているので、いいチームを作っていきたいと思います」

ーー決勝の舞台にも上がるいいチームになってきたと思うが、もう一歩上に行くのにはどういうことが必要だと考えますか?
上村
「僕が大切だと思っているのは、日々の意識とか、取り組みです。さっきも言いましたけど、名古屋とは練習量にまず差があるし、環境も違う。だけど僕たちが環境のせいにしたら本当に終わりだと思っているので、まずそこをなくしたい。僕自身は、自分にベクトルを向けて、時間を見つけてトレーニングしていきたいという気持ちは、個人的には持っています。あとは、『いい試合をして惜しかったね』と言われることもありますけど、僕たち選手はまずその気持ちをなくしたい。『絶対に勝つ』という意識で臨まなければいけない。『惜しい』ではなくて、『負けたらもう終わりだ』という、一人ひとりがそういう気持ちを持って取り組みたいと思います。でも一つ言えることは、うちのチームは良くなってます」

ーーパワープレーがチームとしてかなり洗練されてきていると思うんですが、練習でも多く取り組んでいるんですか?
上村
「個人的な話になりますが、(代表活動で)マレーシアから帰ってきて練習に参加して、パワープレーの練習もしたんですけど、僕、足を痛めて、あんまり練習に入れなかったんです。だから今日はちょっと不安要素もあったんですけど。そこはトレーニングしていた(新井)裕生と(中村)充と(皆本)晃くんと(金澤)空が、よくやってくれたかなと。もう1点取りたかったんですけど。練習している成果が出たと思います」

ーーパワープレーは、狙いが明確で、どこからでも勝負できる形ができているのかなと思いますが?
比嘉
「まず相手のディフェンスのやり方をスカウティングしてから、どこからディフェンスのバランスを崩して攻めるかを共有します。今日は、うまくいったところもあったんですけど、途中から相手のディフェンスの形が変わったので、そこから中村選手が何回か飛び込んだり、直接打ったりしました。入らなかったのは残念だけど、それも良かったと思うし、よく攻めて戦ってくれたのは、自分としては良かったと思います」

ーー今季加入した中村選手は、すぐにフィットして大きな武器となったと思いますが、いかがですか?
比嘉
「チームにすごくプラスになった選手だと思います。ポテンシャルはあるので、時間が経てばもっと合うようになると思う。みなさん、期待してください」

ーー大会を通じてどういった収穫があったかと、リーグ戦に向けてその収穫をどう解していきたいかを教えてください
比嘉
「昨シーズンの終わりは、全日本選手権で決勝まで行って優勝もできましたけど、怪我人が多くて、フィールドプレーヤーが9人しかいなかった。オフで1ヶ月以上休んでもまだ練習に戻れない選手もいるし、別メニューの選手もいて、フィジカル的にきつい選手もいる。それでも1年を通して、オーシャンカップ、リーグ戦、全日本選手権で、3つのタイトルを狙っていきたいと思っているけど、そのタイトルに向けてまだベストコンディションじゃないこともわかっています。これを伸び代として、リーグ戦に向けて、もっと走れるチームになることを期待しています」

上村「数年前の話になりますけど、谷本俊介さんが監督をしていたときのテーマの一つに、『隣の人を輝かせる』というのがあったんですけど、谷さんの指導を受けた選手が多くいるので、そういう隣の選手を輝かせるという思いを持っている選手が多いと思います。多分うちのチームは誰が試合に出ても自分以外の4人、キーパーを含めた4人のいいところを出してあげようという気持ちが持てていると思う。ジョーや内田隼太はいなくなったけど、今季は充や上林快人が入ってきて、そういう谷さんやマルコス(山田マルコス勇慈)が監督をしてくれていた頃のいいところを引き継ぎつつ、比嘉さんが監督になって、新しくいいところも増えて、伝統じゃないですけど、少しずつ少しずつ良いチームになってきているんだなというのは思いました。

と言っても準優勝なんで、リーグ戦と選手権は、本当にタイトルを取れるようにやっていかないと思いますし、またチームで一丸となって頑張りたいと思います」

ーー何か具体的にここが足りないとか掴んだものはありますか?
上村
「まだちょっと、ボール回してるときに、セーフティになりすぎるというか、もう少しリスクを冒してもいい場面もあると思うし、逆にリスクを冒しちゃいけないところもあるし、そういう勝負どころ、特にゴール前の自陣も相手陣地も含めて、ゴール前のところを選手一人ひとりが勝負をわかっていかないといけないなと思います」

比嘉「昨シーズンのリーグ戦で、浅い位置でボールを取られて失点して負けた試合が多かったから、それを意識しすぎているかな? もっと強いチームになりたかったら、もっとボールを持たないといけない。そういうところ、僕も期待してます(笑)」

ーー今大会も面白い試合をしていたが、観客が少なかったと思います。今後、Fリーグを盛り上げるためにどんなことが必要だと考えますか?
上村
「僕たち選手は、まず勝つこと、結果を残すこと。惜しい、とかではなく勝たないといけない。ただ、結果を出すことイコールお客さんが増えることではないと思っています。それは、全然別軸の話です。僕たちは、まず結果を出すという軸と、お客さんを増やすという軸も頑張っていかないといけないし、今季からアスレを迎えてくれた立川市に貢献できるようにもやっていきたいと思います。僕たちのクラブには『スポーツで、人生に大きな夢と、毎日に小さな彩りを』という理念がありますが、この理念に沿って、僕たちは行動しなくちゃいけないし、立川市をより良くしていきたいなと思います」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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