Fリーグ参入前のボルク北九州時代から所属し、現在チーム唯一の地元出身選手でもある小林謙太選手。ボルクでの8年目を迎えた今年、チームと共に大きな変化を経験することとなった。「Mr.ボルク」とも呼ばれる小林選手に、自身のこと、そしてチームとフットサルの未来などについて冗談を交えながら話してもらった。
F2に上がった頃が既に大昔のように感じる現在
小林「小中高ずっとサッカーをやっていましたが、やめて普通に就職してサラリーマンやってました。その時遊びで『フットサルやらない?』と声をかけられたのがフットサルを始めたきっかけです。やっているうちに少し物足りなくなってきて、もっと本格的にやりたいと思って「北九州」「フットサル」ってネットで検索して1番目に出てきたのが「ボルク北九州」でした。当時九州リーグ1部で強かったんですけど、そんなレベルとかも全然わからず、道場破りのように行ったら練習に参加させてもらえて。『おぉ、いいじゃないか』と有無を言わさず加入が決まって。そこから本格的にフットサルを始めて今に至るという感じですね。
サッカーがめちゃくちゃ上手いからフットサルが上手くなるというわけでもないと思うんですよ、違うスポーツだから。もちろんサッカーが上手くて止めて蹴るというスキルが高ければ上に行きやすいと思うんですけど、細かい戦術理解とか、そういうところでついていけないとフットサルのトップとしては難しいんじゃないかなと。今までも、サッカーやっててポテンシャルは高かったけど、フットサルで上手くいかなかったっていうパターンをたくさん見てきているんで。
僕は稀な存在で。馬場(源徳元監督)さんに1から「フットサルとは」というのを学べたんで、僕は恵まれた人間だと思うんですよ。完全に、最初に師事した人が良かったというか。あのレベルの人にフットサルを1から教えてもらうってそうあることじゃないと思うんで。しかも僕が入った時(のボルク)はやっぱりこう、フットサルのノウハウが分からない状態だった。馬場監督も砕きながらマンツーマンディフェンスとは?みたいなところから入って。そういうところから学べて、体現できて、やっていけたから恵まれてましたね。
馬場さんとやったのは6年くらいですね。九州リーグ時代の2年含めて。そこからずっと同じチームにいてチームと一緒にF1までたどり着いて。確かに珍しいですよね。なかなかできない体験だし、本当に恵まれてると思います。
自分は全然上手い選手だとは思っていない。それでもこうしてF1の選手としてギリギリやっていけてるのって、馬場さんが何を問しても返してくれて、戦術の話も事細かくやってくれたからって思ってます。本当にまわりの助けがあったから。馬場さんだけでなくチームのスタッフとかもそう。彼らがいなかったらF2にも上がれなかった。正直やめていかざるを得なかった選手とかもいたし、携わってきた人で今いない人もいますけど、そういう人たちがいてくれたおかげで今の僕も、チームもあると思っています。
そして今、こうやってボルクカフェがあったり、ボルクダイニングがあったりと、ボルクの名前がついてる店が出来たりしていることは数年前では考えられなかった。そこは今のスポンサーやたくさんの方々の支えがあるからこそで、こういう環境の中でプレーできるようになったことに僕が一番びっくりしていますね。最初は今見たいな環境でできるようになるなんて全く思ってなかったんで。
F2の頃は嘉穂とかに行って、めちゃくちゃ重いパネル(アドボード類)とか自分たちで運んで設営して、もうそれだけで足パンパンになって。これで明日試合出来るん?って感じだった。まだ4,5年前の話なのに、体感的には10年くらいたってる感じですよね。
その前の九州リーグの時もヤバかったですけどね。夜中まで練習したりとか。TOTOに勤めながら、練習が夜の9時から12時までで。僕の入団2年目の時に馬場監督が来まして、夜中の3時まで練習してました。頭おかしくなりますよね(笑)そこから着替えたり色々して家に帰りついたら4時,5時で。7時に起きてまた仕事行ってって感じで。気付いたらパソコンの作業しながらずっとFキー押してる(笑)その時期は全然寝てなかったですね。それがまた練習行くとすごい喝と情熱があるんでパって起きるんですよね。もう朝か昼かもわからなかったです。その情熱とやる気があったからプロ化に向けてやってみようってなったのは間違いないですね。中途半端にやってたら今プロとしてやれてないです。
でももう今やれって言われても出来ないです(笑)あの練習量と睡眠時間のなさは本当にクレイジーでしたね。当時、今の僕くらいの年齢の先輩たちがいたんですけど、よくやってたなと思いますよ。そこは本当にリスペクトしてます。好きじゃないとできない」
北九州、福岡からもっとフットサル選手を
小林「チームに地元出身選手は絶対必要。北九州とか九州自体がフットサルは「するスポーツ」としては結構知っている人もやっている人もいると思うんですけど、プロチームがあってそれを見るという文化がまだあまりない。そして趣味としてフットサルをやっている人だけでなく、競技としてそれ以上のレベル、例えば社会人リーグに所属してフットサルをやっているという人にも増えて欲しい。まずは子供のころからフットサルをやる選択ができるようにならないと。
地元の子供たちが『フットサル面白いね』『やってみたいね』と思うようになるには、まず自分達ボルクバレット北九州ががんばらなければいけない。ボルクバレット北九州を知ってもらい、見てもらえば、面白かった、自分もやってみたいって思ってくれるかもしれない。
北九州だけじゃなくて、日本には子供の頃にフットサルをやる文化がないですよね。子供たち、ジュニアのフットサルの大会があまりないからチームもない。スペインなんかだと小さい時はフットサルとサッカーと両方やって、中高生の年代になってフットサルかサッカーか選ぶような感じでフットサルの文化がある。日本だと、ジュニアのフットサルの大会があってもジュニアのサッカーチームがちょっと出てみようか、みたいになってる。
Fリーグ含めての課題ですよね。フットサルっていうまだマイナーな競技をどう普及させていくかって、フットサルに関わっていく人みんなでやっていかないといけないんですけど。その中で僕たちが出来ることは、試合で頑張るのは当たり前で、それに加えてSNSとかイベントとかに参加してどれだけ盛り上げていくか。こいつら来たら盛り上がったよねって思ってもらえるような、北九州のイベントのスパイス役になっていくとか、そういう存在にもなる必要がある。応援してもらってるかわりに盛り上げるのは役目ですよね。応援してくれている人たちが盛り上げようとしているところを、もっと盛り上げる必要があるのかなと思います。
今年はわっしょい百万夏まつり(北九州市を代表する祭り)のパレードにも出演して、「夏まつり賞」を受賞しました。盛り上がるように頑張りました。TikTokとかで流行ってるような動きをしてみたり(笑)そうやってイベントに参加したりするのも含めて、もっと色んな人に存在を知ってもらわないといけないと思います。
プロと言っても完全プロ契約のチームはほとんどないし、もっとフットサルが、Fリーグが注目されるようになって見てくれる人が増えればその辺も変わると思いますが、やはりただフットサルの試合をやっているだけじゃ厳しい。
選手それぞれSNSとかも頑張ってるんで、フォローして応援していただけたらと思います。みんな表向きスカしてても、『わー、フォロワー増えた!』とか言って喜んでるんで(笑)一人でも増えると本当に嬉しいですよ。応援してもらえるって本当に力になるんで。
子供たちに興味持ってもらうために漫画やりたいんですよね。原案作りたい。誰かに作画お願いして(笑)やっぱり「スラムダンク」みたいな革命を起こすことがあれば、フットサルも文化になっていくと思うんですよ。ただそこで『フットサルやりたい』ってなってもフットサルコートが少ない、チームがないってなるんですよね。大人はいいんですよ。ワンデイとかあるから。子供たちの環境が整ってないんですよね。うーん。何からやったらいいか難しいしよく分からないんですけど、やっぱり言えるのは地元の子供たちにやりたいって思ってもらうにはまず僕らボルクバレット北九州がカッコいいとかすごいとかいうのを見せることが一番大事で、今やってる選手たちが頑張らないとと思って日々鍛錬してます」
ボルクバレット北九州を、地元を象徴する存在のひとつに
小林「まず北九州とか福岡といえば「ボルクバレット北九州」の名前が出てくるようになってくれたら嬉しいですよね。メジャースポーツの野球やサッカー、ホークスとかギラヴァンツ、アビスパとかがある中で、フットサルってまだまだマイナースポーツだと思うんですけど、その中で色んな人がフットサルを見に来てくれて、面白いって思ってくれる人を増やしたい。フットサル知らない人でもボルクの名前なら知ってるくらいにはしたい。
自分達は町の人たちにとって身近な存在でありたい。『うわー!ボルクバレットの選手だ!』ってキラキラした感じで眺められるというよりは、町を歩いてて『おぉ、小林!今度の試合も頑張れよ!』『ありがとうございます!』みたいな感じの方が自分のキャラとしても、チームカラーにもあってるんじゃないかなと思ってるんで。たくさんの人に声かけられるようになって、試合がみんなの週末の楽しみみたいになってくれたら嬉しいです。
チームとしては「北九州から世界に」というのを考えているので、これから日本一は当然ですけど、アジアに向けても戦えるチーム作りをやっていく。そのためにまずは目の前の試合を一試合一試合勝つ、そしてその先に世界があるというコンセプトでやっています。
個人としては今28歳。まだまだ競技できると思っているのでまずはチームのためになるプレーをやっていきたいと思っていますし、結果が伴って行けば日本代表とか、そういうところにもたどり着ければいいなと思っていますので、これからも頑張って努力していきたいと思います。
そして自分のファン獲得(笑)地元出身なんで、僕きっかけで試合に来てくれる人は多いんですよ。で、みんなそこから安嶋健至とかイザケとかのファンになっていって、僕のファンっていないんですよ。自分のファンを増やしたいです!」
取材協力
店名:ボルク クレセント カフェ
住所:福岡県北九州市八幡西区陣原三丁目23番9号
営業時間:11時00分~19時00分
定休日:不定休(定休日はInstagramでチェックを)
Instagram:bork_cafe
電話:070-2427-6647