パルドラール浦安でFリーグデビューし、その後はイタリアセリエA2のASD Man fredonia C5 へ入団。帰国後にはFC NAKAIでの活動とユニークな経験を重ねている宮崎岳選手。彼が次の舞台として今シーズン戦いの場として選んだのはFリーグ1部のボルクバレット北九州だった。
開幕戦で2得点をあげ、ホームでの鮮烈なデビューでファン・サポーターにも強い印象を残した宮崎選手。北九州で8試合を終え、リーグ中断期間を過ごす中で、フットサルだけでなくプライベートに関する話題についても語ってもらった。
イタリア、そして北九州
宮崎「北九州はご飯が美味しいって言うのがもうすべて。僕、千葉の方でも一人で美味しいご飯調べて食べに行くのが大好きでよくやってたんですよ。北九州でも同じようなことしてて。やっぱり住むのに食っていう面は大事だなと思っているので、そういう意味でも住み心地のいいところですね。
元々どこに行っても平気で生活できます。イタリアに二年住んでたんですけど、一切ホームシックにならなかったですね。むしろ(日本に)帰りたくない気持ちの方が強かったです。それくらい居心地が良かったです。
言葉の問題もなかったです。イタリア人と一緒に住んでて、そこで勉強もできたし、向こうで日本人とまったくかかわってなかったんですよ。それも良かったのかなって。日本人がいると日本語に頼っちゃう面とかも出てきちゃうから、そういう面では自分に厳しい環境に身を置けて良かったなって思います。
元々二十歳くらいの時に三週間ほどイタリアに行ってて、その時に少し勉強してましたけど、それ以外は簡単な言葉がわかってたくらいで全く勉強はしてなかったですね。結構急に決まったんで、イタリアに行くの。浦安の時の監督がスペイン人で(アルベルト・リケル)、スペイン人の選手とかも結構いて、プレー中に言語で困ることはなかった。その経験で上手くやれたのもありますね。コミュニケーションについては全然大丈夫でした。
イタリアで一年ちょっと経った頃バスに乗って目的地に行くことがあったんですが、それが厄介なことになって。帰りが夜になって、バスの帰りのチケット買おうと思ったらもう売り場が閉まってて。本当は先に帰りのチケットも買っとかなきゃいけなかったんですよ。で、どうしようってなって、バスの運転手さんに『チケットないけど売り場閉まってるし、お金払うから乗せて!』って交渉した時『あぁ、俺もうどこででもやっていけるわ』って。生命力が増しましたね(笑)
そこ、バス停もすごく沢山あって、でも夜で電光掲示板も消えてしまってて何も見えないからどこに停まるかもわからなくて、それも聞いて。俺生命力増してるわ!って(笑)」
好奇心旺盛。興味あることはすぐにチャレンジ
宮崎「結構器用なんですよ。昔から何でもやれる方で。小学校の頃から図工も美術も好きで、音楽も独学でピアノやったりしてたし、すぐ色んなものに興味持っちゃう。習字もやってましたし、すぐあれやりたいこれやりたいって言いだして、やりたいと思うものを即やっちゃいますね。
美味しいものを食べに行って、それを再現して作るのも好きです。料理好きなんですよ。イタリアの時とか毎日一時間半から二時間練習して、そのあとずっとフリーなんで、今日は何作ろう?ってめっちゃやってました。
向こうって料理の材料が少ないんですよ。その中でどうやって作ろうかっていうのが大変で。カレーもルーがないんでスパイスから作ってたし、クリームシチューもホワイトソースから作ったり。
今も美味しいご飯食べに行くと、すぐ『これ作れないかな?そしたらいつでも食べれるし』みたいに思っちゃいます(笑)
好奇心旺盛です。子供みたいだってよく言われます。中身子供なんで。今は猫かぶってますけど(笑)
試合になるとスイッチ入っちゃうんで熱くなります。試合中は何にも考えてないです。モードに入ってるんで、アドレナリンが。
俺の普段の姿しか知らない人が試合見に来るとびっくりしますね。『えー!真面目にやってる!』って。それくらい日頃はおちゃらけてる。逆に試合の自分を見に来てくれてる人にはボロが出ないように頑張ってます(笑)浦安の時も試合の自分しか見てなくて、フットサルクリニックに来てくれた人からは『全然違う』って言われてました」
異色の活動で注目されたFC NAKAI。高い熱量の日々、そして挫折
宮崎「最初はFC NAKAIに対していいイメージじゃなかったです。『フットサル舐めんな』って思ってました。実際、中に入ってみると最初のイメージとは全然違いました。競技面で足りてない部分はすごいありましたけど。
プロフットサル選手って見てる人に何かを与えなきゃいけない存在だと思うんですよね。例えば、ありきたりなんですけど勇気とか感動とか。そこに関してはFリーグのチームよりも勝ってたんじゃないかな、見せ方の部分も含めて。フットサル大好きな集団がひとつになって、既存のものに立ち向かう姿。本当に素晴らしいチームだったと思いますね。
でも、掲げていた(全日本フットサル選手権で優勝するという)目標を達成できなかった。
あの時はやばかったですね。今までにないくらいの絶望感で。
みんな言ってたんですけど、一人の時間作ったらまずいみたいな。もう死のうと思っちゃうんじゃないかって、そのくらいのレベルで。俺も負けた次の日はずっと寝てましたもん。電気もつけずにずっと。
フットサルもやめようと思いました。言い方悪いですけど、Fリーグの下部組織に負けて、もうやってる価値あるのかなと。このレベルで勝たせることのできない自分にやる意味あるのかなと。もうやめた方がいいってずっと考えちゃうんですよ。だからそういう意味でも一人にならない方がいいってなって、チームメイトと浅草で食べ歩きしました(笑)
でもそれくらいの気持ちでみんなやっていた。それを経験すると、浦安でやってた時も、今もそうだし、本当にそういう危機感を持ってFリーガーたちはやれてるのかなって。あの時間を過ごしたことによって感じましたね。
たとえば、契約期間が一年あるという状況でやってて、こないだの長野戦も、もう次の試合が来ない、首を切られるかもしれないというマインドでやれてるのかなって。FC NAKAIだったら負けたら次の試合はもうないわけで、常にそのモチベーションで練習にも取り組んでたし試合にも臨んでいたけど、Fリーガーでやってる選手たちはそのモチベーションでやれてるのかとずっと思ってますね。でも、難しいんですよね。僕もそうですけど、マンネリ化しちゃうんですよ。それはFC NAKAIでも感じたことがあって。
イタリアでやってた時、練習普通にやってたのに次の日一人いないんですよ。そして知らない選手がいて。『何であいついないの?』って聞いたら『あいつクビになったよ』って。それくらいイタリアも厳しい世界だった。
(Fリーグは)全員完全プロ契約じゃないし難しいんですけどね。もちろんみんな生活かけて、人生かけて戦ってるんだけど、でも本気でそうなのかっていうのが定かではないなと思ったりしますね」
日本に残る決断、そしてFリーグで、北九州で何ができるか
宮崎「正直、イタリアにいた時もFリーグを見れなかったのもあったし、情報もなくて。北九州に対してチームの特徴とかのイメージは持ってなかったです。FC NAKAIの時、最後選手権を見たくらいで。いい若い選手がいるなっていうのはありました。浦安の時、まだFに上がる前のボルク北九州時代に対戦したことがあって、その時前半は3-0で負けてて。後半に4点入れて勝ったんですけど、その時3点入れたボルクの選手が小林(謙太)でした(笑)
ただ、確実に難しいシーズンになるだろうなとは思っていました。こんなに(選手)入れ替わるってほかのチームでもほとんどない。半分入れ替わるし監督も替わるってもう別の新チームですよ。知らない人たちが集まってさあやるぞって。FC NAKAIと大して変わらないみたいな(笑)でも確実にいいチームになると思いました。シーズン中にどんどんよくなるだろうなって。
本当は海外に行きたいなと思ったんですけど、ここで行っちゃうのももったいないなと。せっかく日本で、FC NAKAIでやったことで色んな人に認知してもらえたというのがあって。
FC NAKAIでやってて気づいたんですけど、個サルとか行く人たちってあんまりFリーグ見てないんですよ。でもFC NAKAIは知ってる。この層をFリーグにつなげられないかなと。
見せ方かなと思うんですけど、毎回次どうなるんだろう?って感じで終わってたから、多分みんなFC NAKAIをフットサルを見ているというより、ドキュメンタリーを見てる感覚で『目指せ!Fの頂』を見てたんじゃないかな。
今もSNSでもなるべくみんなをフォローするようにしてるんですけど、それで俺のこと初めて見に来てくれるっていう人とか、明日見に行きますとか言ってくれる人たちもいて。そうやって一人でも多くの人たちに見に来てもらえるのはよかったなと思います」
今シーズン、ボルクバレット北九州の現在地
宮崎「難しさって言うのは色んな面で抱えてて、思ってた以上に難しいシーズンになってるなと思います。どんなに考えても結局次の試合はくるわけで、やっていくしかないんですけど。それをチーム全体として今後具体的にどうやっていくべきなのかというのを改めて方針を話し合わないと、具体的な改善案をださないとより良くはなっていかないのかなと。
ここまで大敗してる試合ってないんですよ。ほとんど一点差の負けが多くて。となるとめちゃめちゃ悪いわけじゃない。それはある程度選手それぞれの経験値でまかなえてる部分が多いから。チームとしてというより個々の経験で戦ってるという。チームとして成熟しないと後半良くはならないかなと思います。組織として、チームとしてより連携が良くなっていったら絶対もっといいチームになれる。選手それぞれのスキルは高いですし。
個人としての目標っていう、そこの意識はあんまりなくて。正直チームが勝てばもう何でもいいっていうマインドなので。自分が点取れなくても全然いいんで。チームが勝つために何ができるかっていうところに最終的にはいくから、そのために得点が欲しいしアシストしたいし、相手の決定機を阻止したいし。チームのために何ができるか。それに尽きます。チームを勝利に導ける選手になりたいです」
取材協力
店名:ボルク クレセント カフェ
住所:福岡県北九州市八幡西区陣原三丁目23番9号
営業時間:11時00分~19時00分
定休日:不定休(定休日はInstagramでチェックを)
Instagram:bork_cafe
電話:070-2427-6647