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22年間の最後の時間を、今いる選手たちと楽しみたい

~ペスカドーラ町田の金山友紀選手が引退を表明~

Fリーグが創設された2007年から現在に至るまで、現役を続けている選手が何人かいます。その中の一人、ペスカドーラ町田の象徴的存在である金山友紀選手が今シーズン限りの引退を発表しました。決意に至るまでの心のうちと、引退を決めてからの思い、残りの選手生活をどう過ごしたいと考えているかを伺いました。
※取材は1月26日実施

ーー今シーズンで引退しようと決めた理由から教えてください
金山友紀選手
金山
ここ数年、ずっと考えていました。Fリーグが開幕してからずっと得点をとってきていて、2桁取れなくなったら、そこが自分としてのタイミングかな、ということは自分の中にありました。その2桁得点が取れなかったシーズンの翌年に、ルイス監督(※)に代わったんですね。このタイミングでまず1回、考えたのが最初です。そこからは、『来年は、残って欲しい』と言ってもらうことが続いた中で、毎年毎年考えてはいたんですけど、甲斐(修侍)さんに代わるというタイミングで、ちょっと…本当に考えました。自分のコンディションをどこまで上げられるかというところ、やれる可能性もあるんじゃないかなというのもあったんですけど、今シーズンの開幕2日前にケガをしてしまって。その後、中断明けに2試合出たんですけど、そこでまたケガをしてしまって、最終的に決断したという感じですね」

※ ルイス ベルナット・モリーナ前監督(2019/2020〜2021/2022在籍)

ーー甲斐監督は、金山選手にだいぶ期待されていたようですけど、そこは感じていましたかか?
金山
そうですね、ルイス前監督のときは甲斐さんがコーチで、数年自分のプレーを近くで見ていた中で、今シーズンのリーグ開幕前に、名古屋オーシャンズとプレシーズンマッチをしたり、オーシャンカップを戦う中で、ここ数年では一番いい状態、いいコンディションなんじゃないかという声はかけてもらっていました。自分自身も、その状態で戦えればチームに貢献したり、チームの力になれることがあったと思うんですけど、そこでケガが続いてしまった。ケガをして戻ってきて、またケガをしてというところで、自分自身のもどかしさもあったり。そういう部分で、次にまたケガを治して復帰するためにそこから上げてとなるのであれば、最後に治してホームラストマッチ、成瀬のこの間の試合(1月22日開催20節立川アスレティックFC戦@町田市立総合体育館)に持っていく方がいいのかなという思いがありました」

ーーシュライカー大阪戦(1月15日開催19節@町田市立総合体育館)で久しぶりのメンバー入り、続く20節がホーム最終戦となりました。どちらの試合も金山選手がピッチに入るときには客席から拍手が起きていました。サポーターの存在を、どう感じていますか?
金山
僕、試合の前に紹介される選手コメントをホーム最終戦で出したんですけど、『唯一の心残りというのが、僕の応援のチャントを聞けずにここを去ることです』という内容の話をしました。最後の心残りになるくらい、やっぱり町田のサポーターの後押しで勇気づけられて、力づけられて、プレーをさせてもらってきたので。サポーターの応援がなければ、ここまで強い気持ちを持って戦い続けることはできなかったと思います」

ーーでは、引退セレモニーで2人の後輩、中村心之佑選手と山中翔斗選手がチャントを歌ってくれたのは、うれしかったですか?
金山「チャントが聞けないままなのが心残りだというあいさつは、前日にチームに出したんですけど、その出した内容がセレモニーで起きたから、『あれ、僕が言ったから急にやることにしてくれたのかな?』と、そのときは思ったんですけど、後輩たちは『違う』という話をしていたんです。僕が思っていたことをサポーターたちも思っていてくれたから、後輩たちも歌うことを考えてくれたと思うし、僕が最後に聞きたいなというその思いが届いたというか、共有できたのはうれしかったですね」

ーーそういう意味では、大阪戦でサポーターに得点を取るところを見せられたのは、よかったのではないですか?
金山
僕、去年はアウェイでは得点しているんですけど、成瀬では点を取れてないんですよ。しばらくホームで点を取れていなかった中で引退発表をして、残りホームは2試合というところで得点を決めることができたときは、本当に、頑張ってやってきてよかったなと思える瞬間でした。それともう一つ、僕が思ったのは、この年齢でフットサルをやれているのは当たり前じゃないということ。ヒサ(久光重貴さん※1)とか、昔のチームメイトで友人のブラジル人、ホブソン(※2)とか。いつもこの2人に必ず声をかけてから試合に臨むんですけど、そういった2人が空からごほうびをくれたのもあるのかなと、ちょっと思い浮かびましたね」

※1 久光重貴さん(2007シーズン:ペスカドーラ町田在籍、2008〜2020シーズン:湘南ベルマーレ在籍、2020年12月19日逝去)
※ 2ホブソンさん(2008シーズン:ペスカドーラ町田在籍、2010年3月7日逝去)

ーー声をかけるのは写真にですか?
金山
いえ。ヒサのTシャツは、試合前に自分のユニフォームのところに一緒に置いています。ホブソンは、ブラジルに帰っていたんですけど、日本に戻ってくるときがあったらということで僕が十字架のお守りみたいなものをお願いしていて。それを『友紀に渡してくれ』と、ジャッピーニャ(本田真琉虎洲選手:現湘南ベルマーレ)が預かって渡してくれて。ホブソンの方が先に亡くなっていたので、それを試合のときに持っていくのがずっと習慣だったんですけど、その後にヒサが亡くなって、そこからはヒサも一緒に。

ヒサは、自分の具合が悪くても僕の試合のことやプレーのことをずっと気にかけてくれていました。病気が分かってからは特にプライベートでも会って、ご飯行ったりだとか、会場で会ったら話したり、電話したりして、常に僕のプレーに勇気付けられてるという話をしてくれていたこともあったし、僕も彼にパワーをもらっていた。こうしてプレーができる、フットサルができるというのは、決して当たり前のことじゃないよっていうところは、ずっと思いながらプレーしていたので、そういう部分でそうですね、大阪戦のゴールは、そういうたくさんの人たちの思いが乗って、取らせてもらえたゴールだなって思います」

ーー大阪戦は、金山選手の得点につながったフリーキックのためにピッチに入りましたが、そのときはどんな思いで入ったんですか?
金山
試合の前にヴィニシウス選手には、僕が入ったときにはちょっと僕の方を見て欲しいという要求をしていました。実際、そんなそぶりはまったく見せない2人だったんですけど、彼がキックに入るところから、自分がそこに入っていくイメージは自分の中でできていて。多分ヴィニシウス選手も同じイメージを共有していたと思います。自然とこう、身体が動いた感じっていうのと、あとはピッチに入ったときに、サポーターが拍手で盛り上げてくれて、そういう雰囲気が大好きなんで僕。『やってやろう』じゃないですけど、そういう気持ちでピッチに入りました」

ーーここまで長くフットサルを現役で続けてきたというところで、金山選手が感じているフットサルの魅力はどんなところにありますか?
金山「やっぱりコートが狭いので、ゴール前の攻防が常にあるところ。攻められたと思ったら、そこからゴール前に行くチャンスが生まれるというところで、目が離せない展開の多いスポーツだと思います。やっぱりゴール前の攻防が多い方が楽しいし、魅力の一つだと思いますね、まずそれが一番。それから見にきてくれた人にとっては、ピッチとの距離も近いので、身体と身体がぶつかる音であったり、体育館を走ったり止まったりっていう音、迫力を近くで感じながらプレーが見られるというのもフットサルの魅力なのかなと思います」

ーー金山選手自身のプレースタイルとしてゴールに絡むことが多いというのも、ご自分でやっていて楽しさを感じるところですか?
金山「そこは常に狙ってるというか。イゴール選手(現バルドラール浦安)が町田にいたときは、いつも彼に『ボールを持ったときは僕を見て』と話していたんですけど、僕が裏を狙って走ってゴール前でパスを受けてワンタッチで決めたりっていうシーンは、過去にもたくさんあります。それから、『攻められた!』っていうところから次の瞬間にはゴールを狙ってるというところ、これは自分の一番の特徴でもあるし、自分が一番好きなプレーでもあって、そこは自分がプレーする上で見てもらいたいプレーの一つでしたし、自分自身、とても楽しんでいました」

ーー選手としての期間が長いとモチベーションのコントロールも大変なところがあったのでは?
金山「長いシーズンを戦ってくれば、うまくいくことばかりではないので、本当に10連敗くらい負けが続いたシーズンもあったりして、苦しいときもあったんですけど、そういうところは一つ、乗り越えていくというか。そういう壁の1つ1つを超えていくことでこれまでとは違った景色が見えてくることが楽しいというか。

ただボールを蹴って楽しいというだけではなく、チームメイトと共に、高いところを目指す、苦しみながらも成長していく、その過程のところがやっぱり一番のモチベーションだった、そういう部分はありました。その中でケガは毎年のようにあったんですけど、ケガをするとやっぱり気持ちが落ちることもあったんですけど、そこもケガをしたことでまた成長できるというふうに考えることにして、また一つ大きくなれる時間だなって考える。モチベーションは、上げるというより、モチベーションは普通に保たれてきたと思います。だから今年ですね、モチベーションというか、ケガが多かったことで、そういう考えが持ちづらくなった。それがこのタイミングだったのかなって思います。ここまでは、そういうモチベーションの起伏はそこまで大きくなかった15年間だったけど、この16年目のシーズンに、その起伏がちょっと大きく出たのかなと思います」

ーー2014シーズンに大きなケガをされましたが、そのときはモチベーションの起伏は大きくはなかったんですか?
金山「そこは全然大丈夫でしたね。そのときは、1つケガをしたところで、そのケガを抱えながら、誤魔化しながらやったことで、どんどん重なってしまって、最終的にプレーできなくなるくらいになったんですけど、その後、6、7年くらいひきづりながらやっていて、途中から、このケガは治らないケガだとマインドを切り替えました。この痛みは、いつもあるものと思ってプレーするようになって、気持ち的にも少し変わった部分があったので、やっぱり気持ちの持ち方、気持ちをどういうふうに持っていくかだなと思います。

試合の中でもそうだと思うんですけど、追い込まれてるときに、追い込まれて『やばい』と思うのか、追い込まれてることも『楽しめる』か、というところ。それがやっぱり大事だと思うので。それにいくつもケガはしましたけど、その経験をまた今の若い選手に話せます。その話ができる自分の経験にもなったと思うので、ケガも決してネガティブなだけじゃないと思います」

ーー引退後のキャリアは、どのように考えていますか?
金山「今は、選手であることだけを考えているので、まだ何も決まってないし、自分の中で明確なものはありません。漠然と、このチームに長く関わってきたので、今までの経験から自分が伝えていけるものがあれば、若い世代であったり、その下のカテゴリーであったりに、伝えていければなとは思っています」

ーー残りのリーグ戦と全日本フットサル選手権が最後の現役生活となりますが、残りの時間をどういうふうに過ごしたいと考えていますか?
金山「やっぱり悔いなくというか。僕は、時代を跨いで令和の時代にプレーしているので、そういう部分もしっかり噛み締めながら、試合だけじゃなくて、練習も含めて、あと1カ月2カ月というところなので。カスカヴェウ時代から数えたら22年間、その最後の1カ月2カ月だと思うので、今いる選手たちとその同じ時間を共有して、楽しめたらなと、とても思っています」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by ペスカドーラ町田
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