選手

皆さんの記憶に残るようなゴールが残せたのであれば、自分がやってきたことに胸を張ることができます

2020-2021シーズンをもって現役引退を発表した立川・府中アスレティックFCの田中俊則選手、上福元俊哉選手、渡邉知晃選手。 第2弾はアスレのストライカーとしてゴールを量産し続けた「ストライカー」渡邉知晃選手。

ーー渡邉選手、12シーズンのFリーグでの現役生活、本当にお疲れ様でした。まずは引退を発表してから少し時間は経ちましたが、今はどんな気持ちでしょうか?
僕の中では今シーズンが始まる前に「今シーズン限りで引退をしよう」と決めていたので、急に決断して、あらためて引退の心構えをしたというわけではないので、特別に何かが変わったというわけではないのですが、引退発表後の周囲の反響やSNSなどを通じてのメッセージを見させてもらい、あらためて今シーズンで現役を引退するという実感が湧いてきました。

ーー引退を決めたから臨んだ今シーズンは、今までのシーズンと心境の違いなどはあったのでしょうか?
ひとつひとつが今までとは違う感覚でした。毎年続けてきた日々のトレーニングや試合も「ああ、これが最後になるんだな、終わりに近づいているんだな」という感覚を抱きながら過ごしてきました。

ーー引退を決めた理由を教えていただいても良いでしょうか?また、引退を意識したタイミングなども教えてください。
30歳を超えた頃から引退のタイミングは意識はしていました。いつかしなければならない決断であり、「区切り」というものを考えていく中で、2019-2020シーズンの最終節の直前にリーグ戦300試合出場を達成しました。実はこのタイミングでの引退というのも頭の中にはありましたが、自分が引退をするにあたって、シーズンが終わってから決断をするのではなく、「今年が最後のシーズンだ」と決めてやるシーズンを過ごしたいと思いました。それと昨シーズンが終わったタイミングで自分のゴール数を確認したら「192ゴール」だったんです。200ゴールを目前に引退をしてしまったら、後々自分自身の決断に対して、後悔してしまうのではないか、と思いました。それに200ゴールまで残り8ゴール、今シーズンは試合数が少なくなり22試合となりましたが、「22試合あれば絶対に決めることができる!」という自信もあったので、今シーズンを最後のシーズンとして見据えてプレーしようと決めました。もし今シーズン中に200ゴールを達成していなかったら、引退していなかったかもしれませんね。(笑)

ーーアスレには2015-2016シーズンからの6シーズンをプレーしましたが、アスレでの6シーズンを振り返ってどうでしょうか?
キャリアで最も長く過ごしたクラブなので思い出もたくさんあります。ステラミーゴいわて花巻でキャリアをスタートして、名古屋オーシャンズで自分自身を高めて経験を積んで、フットサル選手としての最盛期をアスレでプレーさせてもらいました。通算で201ゴールのうち121ゴールはアスレで決めたゴールですし、2017-2018シーズンは45ゴールを決めて、Fリーグ得点王を獲得することもできました。ある意味でアスレが一番自分の力を引き出してくれたチームだと思いますし、「ゴール」という自分が最も得意とするプレーを発揮することができました。チームの中心選手としても戦い続けることができたこともあり、一番充実した、一番良い時間を過ごせたと思っています。

ーーステラミーゴいわて花巻時代の思い出
大学を卒業してすぐにFリーグの世界に飛び込みました。当然初めてのFリーグの舞台ですので、自分の力がどれだけ通用するのか、不安な気持ちも抱えていました。

ただ、チャレンジャーとして花巻に行きましたし、「ここで活躍できないようなら自分に未来はない」という覚悟をもっていました。当時の花巻の順位も分かっていましたが、ここからステップアップしていくぞと意気込んでいたことを覚えています。

一番の印象に残っているのは、ホ-ム開幕戦でFリーグ初ゴールを決めることができたことですね。チームの順位は良くなかったですが、個人としてはFリーグ1年目から2桁ゴールを決めることができたこと、そして中心選手としてプレーすることができたことは大きな自信となりました。花巻で過ごした2シーズンは、自分のステップアップには欠かせない時間だったと思うので、自分にとって良い選択ができたと思っています。

ーー名古屋オーシャンズ時代の思い出
花巻から名古屋に移籍するにあたって、最下位のチームからチャンピオンチームである名古屋へ移籍するというのは、かなり稀なケースだと思うので、大丈夫かな?という多少の不安を抱えていました。チームメイトには強烈な外国籍選手たちや日本代表クラスの選手ばかり。こんな環境に自分が行って試合に出られるのかな、と考えもしました。本当に難しい決断でしたが、「誰もができるチャレンジではない」と考えるようになりました。最終的には「こんなチャンスは逃せない」と思いチャレンジすることにしました。

一番最初に衝撃を受けたのは、環境の充実です。プロとしてフットサルに専念できたことは自分自身の成長にも大きかったと思います。練習もとにかくハイレベルで、ここで頑張れば成長できると強く実感できました。レベルの高い中で切磋琢磨できるのは単純に楽しかったです。チームメイトとしてリカルジーニョと一緒にプレーすることができたことも財産です。世界最高峰の選手がどんなプレーをして、普段はどんなトレーニングをしていて、フットサルに対してどのように考えているのかを近くで学ぶことができました。

名古屋では一年目からそこまで試合に出場できたわけではないですが、少しずつレギュラーポジションに近づいていって、二年目以降は中心メンバーとして、多くのタイトルを取ることができました。フットサル選手として濃い時間を過ごし、選手として大きく成長できたのは、名古屋オーシャンズの環境や高いレベルの競争に身を置いたことが活きていると思います。苦しい時間もありましたが、振り返ると良い思い出がたくさんあります。名古屋でしか経験することができないアジア最高峰の戦いや勝ち続ける難しさと喜びを教えてもらいました。

ーーアスレに移籍加入した経緯を教えてください。
実はアスレ以外のチームからもオファーが届いていました。アスレに決めた理由は、入団後の挨拶でも伝えたのですが、「タイトルを取る」という目標に対して、一番可能性を感じたのがアスレだったからです。身体が大きい選手も多かったですし、日本代表に選ばれる選手や元名古屋の選手も多かったですし、名古屋に在籍しているときも数少ない敗戦の相手はアスレが多かったので、優勝の可能性を感じることができたので移籍先としてアスレを選びました。

それと同い年の皆本晃がアスレにいるというのは大きかったです。大学時代から知っている選手で日本代表でも一緒でしたので、自分のプレーを良く分かっている選手ですし、彼の存在はアスレを選んだ理由のひとつでありましたね。大学の同級生であるカミ(上福元俊哉)の存在もありましたね。

ーー現役生活でもっとも印象に残っていることは何ですか?
たくさんあり過ぎて難しいなぁ(笑)

いくつか選ぶとすると・・・名古屋へ移籍して最初の試合がAFCフットサルクラブ選手権だったんです。いきなりアジアが舞台の国際大会でした。この大会まで名古屋はアジアのタイトルを取ったことは無かったのですが、自分が名古屋に移籍して獲得した最初のタイトルがアジアのタイトル。決勝戦で僕が優勝を決めるゴールを決めて、名古屋オーシャンズのアジア初タイトル獲得に貢献できたのは印象に残っています。ほぼオウンゴールみたいなゴールだったんですが(笑)

フットサル日本代表の試合だと優勝した2014年のAFCフットサル選手権。日本は優勝したことはあったけど、アジア最強と呼ばれていたイラン代表に勝って優勝したことは無かった。この大会で日本代表が初めてイラン代表に勝って優勝することができたんです。だから印象に残っていますね。

ーーこの大会の決勝戦でもゴールを決めていたよね?
延長戦の前半かな。これも相手選手に当たって入ったからオウンゴールみたいな形ですけどね。

ーーアスレの試合で印象に残っている試合やゴールはありますか?
忘れられないような会心のゴールやキレイな崩しからのゴールはたくさんありますが、一番印象に残っている、パッと思い出せるのは、府中市立総合体育館のラストマッチですね。あの決勝ゴールはただセグンドで合わせただけなのですが、決めた後の会場の光景・雰囲気は一番印象に残っています。綺麗な会心のゴールではないけれど、あのゴールは忘れられないゴールですね。

ーー渡邉選手と言えば、ストライカー。とにかくたくさんのゴールを決めてくれましたが、ゴールを決めるために努力してきたこと、試合中に意識していたことなどがあれば教えてください。
常に平常心でいることです。ゴールを決めるために最も大切なことはメンタルだと考えています。イライラしたり、気負い過ぎてしまっては力を発揮できません。チャンスが来た時に如何に平常心を保つことができるかがとても重要です。

また技術では「キック」が最も重要です。ボールを蹴るという基礎技術を大切にしてきました。ポイントは「シュート」が大事なのではなくて「キック」が大事なんです。ダイレクトなのか・2タッチなのか・ドリブルをしているのか、アウトサイドなのか・インサイドなのか・つま先なのか・インステップなのか、色々なキックがあるので、そのひとつひとつのキックの技術を高めれば、状況に合わせてボールを正確に枠に飛ばすことができると思うので、そういったキックの基礎というものを大事にして欲しいですね。

ーー得点王となった2017-2018シーズンですが、あのシーズンはなぜあんなにゴールを決めることができたと思いますか?
当時は所謂「ゾーンに入っている」というような感覚でした。自分がゴールを決めることができるという雰囲気と言うか、自信もありました。それに加えて試合を重ねていくに連れてだんだんとゴールに対する執念というものが強くなってきました。例え1回、2回とチャンスを逃しても「絶対ゴールを決めてやる!」といった執念が結果に繋がったのだと思います。加えて当時の自分のコンディションがとても良かったことも大きかったですね。

そしてチームメイト、特に一緒のセットで出ていた皆本選手・完山選手・柴田選手の助け、彼らからのお膳立てもありましたね。

ーー今シーズンで現役を引退するということなのですが、今後はどのようなことに挑戦しようと考えていますか?
色々なプランはあるのですが、選手として引退して間もないうちは選手の育成について携わってみたいと考えています。今後ずっと育成だけをやるわけではないけれど、小学生から大学生年代まで幅広い年代の育成に携わっていくつもりです。

僕自身の特徴でもあった「ゴールを決める力」というもの持った選手を育成していきたいと思っています。

ーー今後のアスレに期待していることはありますか?
アスレは近年世代交代を推し進めていますが、世代交代の途中には苦しい場面も多くあると思います。頼れるベテラン選手がいなくなっても、ひとりひとりが責任感を持って、どうやってチームに貢献していけるのかを考えて、これまで以上に高いレベルを目指して欲しいです。そして試合で勝利を決定づける力を持つ選手が増えてきて欲しいなって思っています。

僕は約6シーズン、アスレに在籍していたけれど自分が出ていないアスレを見たことがないので、ある意味、来年からアスレの試合を見るのが楽しみですね。誰が活躍するのか、期待して見守りたいと思います。

ーー渡邉選手はこれまで多くの場面で語っていましたが、故郷・福島への想いについて教えてください。
今年はコロナの影響もあって、帰ることはできていないのですが、これまでは地元の子どもたちやチームに教えに行ったり、ジュニア世代の大会で解説をしてみたり、自分のできる範囲で貢献できることをやってきました。

また、自分のプレーを通じて元気や勇気を届けたいという想いでやってきました。少しでも自分の想いが届いていたら嬉しいなって思います。

今後は現役を引退したからできることもあると思うので、自分にできることで関わっていきたいと考えています。

ーー渡邉知晃 ラストメッセージ
アスレでは6年間、そして選手としては12年間応援していただきありがとうございました。応援していただいた皆さんの心の中に記憶に残るようなゴールが残せていたのであれば、自分がやってきたことに胸を張ることができます。そして少しでも皆さんの心に訴えかけるプレーが残せたのであれば嬉しく思います。

自分はアスレを離れますが、これまでと変わらずアスレを応援、そしてご支援して頂けると嬉しいです。

ありがとうございました!

※本インタビューは2021年3月1日(月)に実施しました。

◆渡邉知晃
1986年4月29日生まれ、福島県郡山市出身
順天堂大学GAZIL出身。Fリーグではステラミーゴいわて花巻、名古屋オーシャンズでプレーした後、2015年にアスレに加入。
名古屋オーシャンズでは中心選手としても活躍し、多くのタイトルを獲得することに貢献した。2017-2018シーズンでは45得点を決めて、クラブ初の得点王となった。特に代名詞ともいえる「ボレーシュート」は高い決定力を誇り、多くの歓喜をクラブにもたらした。 

▶Text by 立川・府中アスレティックFC
▶Photo by 立川・府中アスレティックFC
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