~外から見たFリーグ、関西リーグの監督として~
Fリーグ初年度からデウソン神戸で活躍し、バサジィ大分で選手を引退してから1年。ドリブル「浩平ルーレット」など華があるプレーで、全国のフットサルファンから愛された原田 浩平さん(36)。引退後は関西リーグ1部のリンドバロッサで監督を務める傍ら、クリニックやイベントで全国を飛び回っている。
選手を引退して客観的に見たFリーグや、関西リーグの監督として感じたFリーグとの差、自身も経験がある日本代表への期待などを聞いた。
◆はらだ・こうへい 1983年6月生まれ、大阪府出身。大阪体育大学卒業後に、当時京都府1部だったリンドバロッサを経て、Fリーグ初年度、デウソン神戸に入団。日本代表にも選ばれたピヴォ。2017シーズンにバサジィ大分に移籍し、昨年に現役を引退。Fリーグ通算で300試合、109ゴールをマークした。
現役引退秘話 自分自身への言い訳で決断
ーーFリーグ初年度からプレーしたデウソン神戸からバサジィ大分に移籍後、引退を決断した背景を振り返ってもらえますか?
原田:デウソン神戸で10年間プレーして、残りの選手生活は「長くない」と感じた時に「違う環境でやってみたい」との思いがありました。大分に移籍して用意してもらった住環境や練習設備、トレーナーらのサポート、Fリーグ屈指の素晴らしい環境を経験できたことは財産です。
引退については、2008ー09年シーズンで左膝前十字靱帯を負傷してから、周囲に「ケガする前はもっとキレがあった」と言われることが本当に嫌でした。それなのに、最後のシーズンでは自分自身が「前十字を切る前はもっとできた」と言い訳をしていた。ケガも重なり、その時に「もう辞めよう」と決意しました。
ーー引退後はクリニックや関西1部・リンドバロッサ(略称・リンバロ)の監督などで忙しくされていますね。
原田:お陰様でイベントにも多く呼んでいただき、全国を回らせて頂いています。クリニックは週に1、2回入る頻度で、関西が多いですが、関東や名古屋などでもあります。クリニックでは初心者から上級者まで幅広くやっています。これまで応援して下さっていた方々とボールを楽しく蹴る機会もあり、充実しています。
リンバロは週に2回の練習に加え、公式戦が入るスケジュールです。監督はあまり考えていなかったのですが、引退後、リンバロの代表に「やってくれないか?」と言われ、最初は断っていました。ただもう一度「やってくれ」と頼まれ、元々自分が所属していたチームですし、これまでの自分の経験を伝える意味でも、最後は引き受けました。
判断の差 Fリーグと関西リーグ
ーーFクラブと比べると、環境は随分違うと思いますが、関西リーグの監督で大変だったことはどのようなことですか?
原田:選手は仕事を持ったアマチュア選手ですので、急に「仕事で練習に行けない」という連絡が度々あります。参加人数の関係で、当初考えていた練習メニューができなくなり、変更することもあります。Fクラブでは週6日練習するので戦術の落とし込みも早いですが、週2日ではやったことを忘れることもあり、浸透に苦労しました。
練習環境もリンバロは芝のコートを使っており、正規のサイズより狭い。公式戦はもちろん体育館なので、芝との感覚やコートサイズの違いで、いつもできるプレーができなくなることもあります。自分が自然にできるプレーや感覚的な部分を言語化して、選手にどう伝えるかも試行錯誤の1年でした。
ーーリンバロは関西リーグ1部で6位でしたが、どんなシーズンでしたか?またFリーグと比べて関西リーグのレベルをどのように感じましたか?
原田:開幕戦は勝ちましたが、そこから勝ったり負けたりで、もったいない試合もあり、なかなか順位を上げられませんでした。一時は入れ替え戦の危機もありましたが、最後は3連勝で締めくくることができ、戦術面でも最後にようやく浸透できてきました。
関西リーグを見ていて、Fリーグで通用する選手もいると感じました。ただプレーの判断面では大きな差があり、ミスも多く起こります。底辺でボールを奪われるなど、絶対にやってはいけないエラーがFリーグと比べて多いですね。Fの選手はミスが少ないうえ、年間を通して活躍できるコンディションの維持に長けています。関西リーグの選手も「ムラ」というか、その辺りが改善されれば、とは思いました。
名古屋と大分 2強時代の到来を予感
ーー現役を引退して、今シーズンのFリーグをどうみていますか?
原田:プレーオフの決勝は、名古屋オーシャンズ vs バサジィ大分で名古屋が優勝しましたが、やはりフットサルの環境が良いチームが強くなるのは間違いありません。名古屋の環境はわかりませんが、大分はマンションから徒歩1分で行けるコートに加え、トレーニングルーム、酸素カプセルなどもあり、大分は名古屋との「2強」時代をつくってくれると期待しています。
選手を離れると、リーグやチーム内で伝達されていた色々な情報が入らなくなり、情報発信がまだまだ「弱いな」と感じました。限られた予算で苦労しているのは理解していますが、多くの人に試合会場に足を運んでもらうために、選手も含めたSNS発信に力を入れないと。多くの方に情報が行き届かない現状は改善していきたいですね。
ーー原田さんが考える観客を増やすのに必要なことは何でしょうか?
原田:「華」のある日本人選手をどう育てていくかは重要と感じています。ペスカドーラ町田に在籍していた森岡薫選手、滝田学選手がスペインに移籍し、横浜の稲葉洸太郎選手や、町田の横江怜選手、湘南の中島孝選手らが今シーズンで引退します。
Fリーグを支えてきた華のある選手がごそっと抜けて寂しいですね。まずはそれぞれの選手が応援してくれるサポーターを増やし、選手たちがFリーグに観客を呼び込む流れを作りたい。僕もできる限りのことをしていきたい。
日本代表の勝利がフットサル普及に不可欠
ーー2020年はリトアニアでフットサルワールドカップ(9月12日~10月5日)があり、2月26日からはアジア予選となる「AFCフットサル選手権」も始まります。日本代表への期待を聞かせて下さい。
原田:自分はワールドカップ本戦での出場経験はないですが、日の丸を背負い、国歌をピッチで聞いた時、全身に鳥肌が立ちました。外からでは計り知れないプレッシャーがありました。アジアではイランに加え、タイも力をつけるなど、アジアで勝つことは難しくなっています。
それでも、やはり日本代表が「勝つ」ことは、フットサルで一番の普及になりますし、期待しています。海外の試合で「個」で勝つのはなかなか難しいですが、戦術を土台にそれぞれの選手がプレーで個性を出してくれれば、さらに見ていて面白いフットサルになると思います。
ーー最後に原田さんの目標や夢を聞かせて下さい。将来はFリーグの監督とかも考えていますか?
原田:いや~、監督は考えてないですね(笑)。リンバロの監督も4月で1年になりますが、その先は未定です。昔から「自分のフットサルコートを持ちたい」と思っていたので、実現したいですね。
関西で土地を探していて、良い場所があれば、すぐにでも行動に移したい。子どもたちを指導して、先ほどお話していたような「華」のある選手を育て、Fリーグに輩出していければ最高ですね。
ーーありがとうございました。
Text by Hide
Photo by Hide & ちっころ & 原田 浩平
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