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偉大なライバルからの学びを活かして正守護神に(後編)

2020-2021シーズンを終えて、選手たちはオフに突入。その前に、今シーズン、湘南ベルマーレフットサルクラブでキャプテンを務めた上原拓也選手にインタビュー。ゴレイロになったきっかけから、今シーズンの振り返りまで、さまざまな話題について語ってもらった。

自分らしいキャプテン像を探して


今シーズンは、キャプテンを託された。

「今年は、コロナ禍もあって練習が始まる前に電話で話をいただきました。『今年のキャプテンは、拓也で行くよ』って。『あ、俺か』って。昨シーズンは元気くん(鍛代選手)がキャプテンをやっていて、僕は、Fリーグ選抜に行っていたのでチーム外でしたけど、キャプテンとして素晴らしい振る舞いをしていたのを見ていたので、だからきっと今シーズンも元気くんで行くんだろうなと思っていたので、驚いた部分もあった。でも、打診を受けたなかで、チームが自分に期待しているものがあって指名してくれたと思うし、チームの中心になってくれという意図も汲み取ることができたので、そういう姿を見せていかなくちゃいけないという責任も、自分のなかに芽生えました」

自分自身が試合出場の機会をつかむことに必死になりながら、チームをまとめていく立場でもある。シーズンを送るなか、苦しいことは少なくなかった。勝っても負けても、試合に出ても出なくても、キャプテンとしての振る舞いを求められた。

「一番意識していたことは、試合で苦しい状況のときとか、自分も苦しい状況のときにこう、弱気な表情とか、行動を見せちゃいけないというのを強く感じていて、それをチームが感じ取って不安にさせるのはキャプテンとして失格だと思いました。だから苦しい状況にいるなかでも、それを表に出さない。大丈夫だっていうのをしっかりチームに伝えられるように行動したり、そうですね、練習のときも人一倍声を出したり、人一倍練習に対する熱を持って、ときには年が上の選手に要求することもあるし、下の選手に伝えなきゃいけないこともあるし。そういう姿を見せていれば、きっとチームメイトも『拓也がこれだけやってるから、俺らもやんなきゃ』という思いにさせることができるのかなと考えながらやっていました」

しかしこれらの言葉は、シーズンが終わった今だから冷静に振り返って言える内容。特にシーズン序盤は、迷い、悩んだ。

「開幕前に大学生との練習試合に負けたり、開幕戦でボルクバレット北九州さんに2対3で負けてしまったりとかあって、そういうときにチームにかける言葉とか、どういう行動をしたら正解なんだろうなとか迷ったときがたくさんあって。最初の頃は、うまくいかないことが多かったです。そういうなかで、昨シーズンキャプテンをやっていた元気くんに相談したり、浦さん(浦上浩生選手)やヒサさん(久光重貴選手)に相談しました。ヒサさんに『他人のキャプテン像を追いかけるより、自分らしいキャプテン像を作ることが大事だと思うよ』というのはすごく言われて、自分らしさを出すっていうと、声を出したり、熱を持って練習するということで、とにかくそういうところを出していこう、間違っていてもいいし、間違っていたら変えれば良いというマインドになれました。間違うこともたくさんあったし、そのなかでうまくいくこともたくさんあったので、キャプテンをやらせてもらえたのは、本当に良い経験になりました」

しかもこれまで誰も経験したことのないコロナ禍でのシーズン。Fリーグのみならず、スポーツ界全体が迷いながらなんとかシーズンを進めてきた。

「開幕戦はリモートマッチでサポーターがいなかったというのは…。ベルマーレの一番良いところ、その1つはサポーターの熱が素晴らしいところだと思うんですけど、そこが今年はなかったので。声援を受けて、足が動いたりとかあると思うんで、特に最初の頃はすごく難しかった。有観客になって、試合に人が入ってくれたときに、サポーターの声を聞けなかったのはすごく残念だったのがまず一個と、やっぱり人に見てもらうというのは選手として大きな喜びだと思いました。あとは試合の延期が重なることが多くて、試合に向かっていたはずが、なくなってしまうというのは気持ちを整えるのがすごく難しかった」

試合が延期になって開催場所が変わっても、声は出せずとも、入場の人数が制限されるなか、黄緑のユニフォームを着たサポーターの姿があった。

「本当にすごいです。僕らに何かを伝えたいと思って来てくれている。あいさつのときも声を出せない分、『頼むぞ』っていう気持ちを表情で伝えてくれたり、拍手や手拍子をしてくれたり。声がなくてもいてくれるだけで全然違う。どんな形でも僕らに力を届けたいっていう思いは伝わったし、SNSとかでも『何かできることはないかな?』ということをツイートしてくれているのを見たりしたので、選手として感じなきゃいけないなと思いました」

選手もサポーターも、守るべきことを守り、なんとかリーグ戦は開幕時に予定した全ての試合を消化して終えた。

「延期が続いたりしましたけど、まず開催できたことがよかったですし、やり切れたことっていうのはすごく良かったと思います。陰で動いてくれた方々がいたから開催できたと思うので、そういう方々に感謝したいです」

通常の年以上に苦労も多かった分、より一層、記憶に残るシーズンとなったはずだ。 

来シーズンこそ正守護神に


Fリーグ選抜で経験を積んで戻って来たシーズン。キャプテンの重責を担って過ごすなか、個人的には自分の定位置を求め続けて過ごした。

「今シーズンは、今までと比べたらスタメンで出場する機会は何試合かあって、もちろんもっともっと試合には出たいですけど、だんだん大事な試合を託されるようになって信頼は得られているのかなって。結果はまた別の話ですけど。全然満足はしてないですけど、すごく頑張ってきたと思うし、そういう信頼を得られたのはよかったと思います」

今のところ、正守護神争いは、フィウーザ選手に軍配が上がる。ほとんどの試合でスタメンに名を連ねている。そのフィウーザ選手は、2016-2017シーズンにやってきた。

「最初にフィウーザが来たとき、すごく正直なことを言うと『なんで外国人選手を取ったんだ、ふざけんなよ』みたいな思いがちょっとあって。その頃、僕が試合に少し出ていたというのがあって、出場機会も減ってしまうし、僕じゃダメなのかって思ったりもした。でも、フィウーザのプレーを見たとき、納得できた部分があった。価値観が変わったというか。それにブラジル一部のトップリーグでプレーをしていたので、そのプレーだったり、人間性のところだったり、吸収できれば成長できるんじゃないかというのもあった。多分、ベルマーレとしてもすごく良かったことだし、ベルマーレに関わるキーパーの選手たちにとっても、一つ自分をレベルアップするのに必要なものを見せてくれているんじゃないかなと思います」

フィウーザ選手のプレーが変えた上原選手にとっての価値観とは。

「フットサルのキーパーって、守ってるだけじゃダメだっていう話をしたと思うんですけど、まさにそれを体現してくれているキーパーだと思う。もちろん守ることに関してスペシャリストだと思うけど、守るだけじゃなくて自分で攻撃参加のスキを作ったり、自分で点を取ったりしますし、守れて、攻められるキーパーだと思うし、それがフットサルのキーパー像だと思うんですよね。こういうプレーの仕方もあるんだ、こういうプレーでこうやって相手にスキを作ることができるんだっていうのを感じることができた。本当に良いキーパーだと思います」

お手本があるだけで、世界はどんどん広がっていく。上原選手もフィウーザ選手のおかげで、プレーの幅が広がっている。とはいえ、教わったことだけできても超えていくことは難しい。自分の持ち味を磨くことでフィウーザ選手にはないストロングポイントをアピールしていきたい。

「身長がない分、アジリティだったり、スピードの部分で彼に勝れると思っている。他の選手より一歩早く動ける、そこを磨くことが自分の良さを出すために大事なことだと思っているんで、自分の身体能力の高さをしっかりレベルアップしていきたいと思っています」

今シーズン、ピッチに立てないことが苦しかった。この悔しさは来シーズンに向けての糧。どんなにライバルが素晴らしくても、譲れないものがある。

「毎日、それは感じています。今後のことも考えたら、そろそろ奪わないといけない」

来シーズンの目標は、もうすでに決まっている。

上原拓也選手が教える、フットサルの楽しみ方


ゴレイロだったら、身体全体を使ってシュートを止めにいくブロッキングとか、シュートがすごく近い距離で打たれるんですけど、それでも反応して止めて見せたりとか。そういうところで魅了させたいなと思うので、そういうところを見て欲しいなと思います。それからフィールドプレーヤーとの駆け引き。フットサルは駆け引きがすごく大事なので、見てわからないかもしれないですけど、小さな駆け引きが繰り広げられているんだよっていうのは、知っていて欲しいと思います。
 
(了)

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 湘南ベルマーレフットサルクラブ

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