~”最後のセントラル”に潜入取材!~
Fリーグ所属チームを一堂に集めリーグ戦を行う「セントラル」。全国各地から強豪チームが集まるこの方式は、毎年大きな盛り上がりを見せていたが、2020/2021シーズンは開催されないことが決まっている。
今回はそんな“最後のセントラル“に潜入し、サポーターを直撃取材。
Fリーグに夢中になったきっかけは?なぜ声を出して応援し、チームをサポートするのか?それぞれの思いを聞いてみた。
ピッチ上の誰もがヒーローになれる可能性がある
人目はバサジィ大分サポーターの御幡 浩二(みはた)さん。サポーター席で太鼓を叩き、一際大きな声で選手へ声援を送る。
「もともと自分でフットサルをプレーしていました。同時に観戦にも行っていて、大分が『エスペランサ』という名前で九州リーグに参加していた時から見ていたんです。その流れで、気がついたらプレーより応援の方がガチになりました(笑)。純粋にチームの応援に来ているので、特定の選手と関わったりは僕はしていませんね」
遠く大分から観戦に訪れ、翌週のプレーオフでも声を張り上げていた御幡さん。そんな御幡さんは、フットサルの魅力をこう語ってくれた。
「フットサルの魅力は、一瞬でピンチからチャンスに切り替わります。チャンスだと思ったら次の瞬間にピンチになるし、その逆も然り。切り替わりの速さはサッカーにはない魅力だと思います。それと、ピッチには5人しかおらず、誰にでもボールがまわってきます。ということは、ピッチ上の誰もがヒーローになれる可能性があるんです。僕もスポーツはあまり得意ではなかったんですけど、フットサルならボールが回ってくるし、たまに点を取れればオープン大会でMVPをもらえたりします。プレーをしてても見ていても楽しい競技ですよ」
大分は翌週のプレーオフでもフウガドールすみだに競り勝ち、名古屋オーシャンズの待つ決勝へコマを進めた。圧倒的王者のプレーオフ3連覇を阻めるか、要注目だ。
誰もいないなら私がやろう
続いては、ボアルース長野サポーターの荻原(おぎわら)さん。長野は今年からFリーグディビジョン1に参戦している昇格チームだ。サポーターになったきっかけは、会場のボランティアを務めていたことだという。
「長野はチーム発足から7年間、サポーターがいなかったんです。その当時から私はチケットもぎりのボランティアをやっていて、応援団がいなかった状況を見ていました。昨年Fリーグディビジョン2でいい順位につけていて、その頃から選手たちも『応援団がほしいね』と話していたので、いろんなところを回って応援団に入ってもらうように説得しました。でもなかなか入ってくれる人がいなくて、でも私はこのチームが大好きなので、誰もいないなら私がやろうと思って、今日も応援しています」
長野はF1参戦が1年目ということで、応援の仕方も手探りのよう。そこで、他チームのサポーターとも交流していろいろ教えてもらっているという。
「大分さん、仙台さんにも、みなさんよくしていただいて応援を教えてもらっています。長野はまだ1年目なのでわからないことが多いんです。じゃないと私はここまでやってこれませんでした」
この日も朝6時に車を出して、長野からはるばる応援に駆けつけた荻原さん。フットサルの魅力は「選手との近さ」だと教えてくれた。
「私は正直フットサルのルールもよくわかっていないんですけど、それでも選手たちはとても身近に接してくれて、近い距離感にいることができます。なかなか他のスポーツではないことではないでしょうか。長野の選手たちは本当に素敵な人たちなので、何かのきっかけで会場に来てもらえると嬉しいです。本当の熱気を感じてもらえるのは、やっぱり会場で生で見ることだと思います」
長野は今季、残念ながらF1で1勝もあげることができずにシーズンを終えた。しかし、ルールはわからずとも、華奢な体で太鼓を叩き大声を張り上げる荻原さんの熱量に、こちらも勇気をもらった。
応援はフットサルの大きな魅力
最後はエスポラーダ北海道の男性サポーターだ。関東在住だがもともとは北海道出身で、東京・駒沢で開催されるセントラルの応援に駆けつけていた。複数の競技を見る中でも、選手をサポートをすると選んだのがフットサルだった。
「いろんな競技を見た中でも、一番『自分がいなきゃ』と思わされたのがフットサルでした。やっぱりまだまだ応援に来る人は少ないし、サポーターの1人でも欠けると声の大きさが全然変わります。応援はフットサルの大きな魅力だと思います。北海道の人たちは北海道のスポーツチームのことが大好きなんです。名前を呼ぶのでも、拍手してくれるのでもなんでもいいので、エスポラーダ北海道もぜひ一緒に応援してほしいですね」
応援する中では、もちろん感情がたかぶってしまうこともある模様。しかしそれこそが、スポーツと応援の醍醐味だろう。
「もちろん選手たちの力が一番で、あれだけの技術とスピードでプレーして、それを続けられる走力はものすごいです。僕も彼らほどのレベルではないですけど、同好会でフットサルをプレーしていたことがあるので、彼らがどれくらいすごいかはわかっているつもりです。選手たちとの垣根は低く、気軽に接することができるからこそ、僕たちの思いは大事に伝えないといけないと思うし、ヤジは文句はなるべく言わないようにしています。まぁ、それでも『なんでだよ!しっかりやれよ!』って言っちゃうんですけどね(笑)」
終わりに
試合内容はもちろんのこと、その雰囲気を作るサポーターの存在が、スポーツ観戦には欠かせないものだ。実際にアリーナを訪れてみると、Jリーグやプロ野球に比べればサポーターや観客の数は少ないかもしれないが、数十人のサポーターたちでアリーナ中に響き渡る太鼓と声援を送る熱量は、決して負けていないと感じた。今回話を聞いた“You”たちは、非日常空間を自ら作る人たちだった。
Text by 中村 僚
Photo by 中村 僚
▶中村 僚の記事一覧