コラム

F1王者に軍配!PK戦を制して名古屋が決勝へ進出

~名古屋オーシャンズ VS しながわシティ~

フットサルもいよいよ新シーズンへ向けて始動!
リーグ開幕を前に、前哨戦ともいえるオーシャンカップがコロナ禍を経て3年ぶりに開催された。出場したのは、F1とF2のチームにU-19フットサル日本代表を加えた22チーム。1回戦から決勝・3位決定戦まで、トーナメント形式で行われた。1回戦から3回戦までの1次ラウンドは、5月25日〜27日に、エスフォルタアリーナ八王子で開催。F1に所属する名古屋オーシャンズ、ペスカドーラ町田、立川アスレティックFC、F2のしながわシティの4チームが6月4日・5日に駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で開催された決勝ラウンドへ駒を進めた。

準決勝第1試合は、F1王者・名古屋とF2首位のしながわが対戦。この2チームは、昨シーズンの終盤、3月に開催された全日本選手権2回戦でも対戦し、名古屋が勝利している。

1stピリオド、名古屋は、今季新加入したブラジル代表経験もあるダルラン選手を攻撃の核としたセットでスタート。一方のしながわは、記憶に新しい対戦を踏まえてか、守備を意識したメンバー構成のセットを起用した。序盤は、しながわが狙い通り名古屋の攻撃に対応。ところが2ndセットに交代した流れで名古屋の大きな展開に揺さぶられてディフェンスを崩され、最後は八木聖人選手に決められ失点。さらに名古屋は攻勢を強めてガブリエル ペネジオ選手が追加点を奪った。その後も名古屋はチャンスを作るが、しながわもそれ以上は得点を許さず、2点のビハインドで折り返しを迎えた。

2ndピリオド、しながわは攻撃に軸足を置いたメンバー構成に変えたセットでスタート、攻撃の強度を高めていく。焦らずパスを回しながらチャンスを伺い、名古屋の攻撃が不発に終わったところからカウンターを仕掛け、相手ゴール前に走り込んだラストパスを受けて佐藤佐建也選手がゴールを決めて1点差に迫った。追いかけるしながわに対し、強度の高い守備で対応する名古屋は、ファウルが嵩み、約5分を残したところで5ファウルに。その後、約3分を残してしながわも5ファウルとなる。お互い無得点のまま迎えた終盤、しながわはパワープレーをスタート。残り55秒でチアゴ セウバック選手が決めて同点とする。

ハイライトは、残り17秒を残したところでしながわが獲得した第2PK。名古屋は6つ目のファウルを犯し、絶体絶命のピンチを迎える。しながわのキッカーは、キャプテンの白方秀和選手。ボールを置いてから蹴り込むまでの数秒、名古屋のゴレイロ、篠田龍馬選手との駆け引きには緊張感があふれていた。渾身のキックは、篠田選手が足でセーブ。勝負の潮目に得点を許さず、延長戦へ突入した。

延長戦は、両チームとも5ファウルを持ち越しているため、ファウルを犯せば相手のチャンスに。延長前半、そのチャンスを先に掴んだのは名古屋。オリベイラ アルトゥール選手は、ファウルされた位置からのフリーキックを選択し、直接蹴り込んでリードを奪った。しかし、約1分後にはしながわが流れの中でゴール。その後、しながわが獲得した第2PKをサカイ ダニエル ユウジ選手が蹴るが、ここも名古屋のゴレイロ、篠田選手がセーブした。

延長後半になっても、お互い勝利への執念は衰えず、ゴールを目指して挑み続ける。そんな中、パワープレーを先に選択したのは名古屋。しかし、パワープレー返しのカウンターを狙うゴレイロ、柿原聡一朗選手をファウルで止めて第2PKを与えてしまう。再度、キッカーを担った白方選手が今度はきっちり決めて、逆転に成功する。残り時間は、2分18秒。ここで焦らず戦闘態勢を取れるのが名古屋の強み。パワープレーを継続し、狙い通り、吉川智貴選手が決めて同点とした。

勝負の行方はPK戦へ。ここで名古屋は、ゴレイロを田淵広史選手に交代する。

先行はしながわ。最初のキッカー、サカイ選手のキックを名古屋の田淵選手が読んでPKを止める。ここもまた勝負の分かれ目。その後は、お互い1人ずつ外したものの、残りの選手はきっちり決め、PK勝負としては4対3名古屋に軍配が上がることとなった。

この結果、名古屋が決勝に進み、しながわは3位決定戦に回ることとなった。

試合後会見


名古屋オーシャンズ フエンテス監督
ーー試合の総括をお願いします
フエンテス
「両チームが勝利を目指して戦ったすごくいい試合だったし、内容的にもすごくおもしろい試合になったと思います。フットサルの試合の中でも観客に楽しんでもらえる、喜んでもらえるような試合ができたと思います。

自分たちは、前半相手を上回って、すごくいい試合ができたと思います。2対0のアドバンテージを勝ち取って、でも2対0というよりは、もう少しスコアが開いていてもおかしくないような試合運びだったと思います。実際、3点目4点目を決めるチャンスがありました。でもフットサルは、そこを決め切らないと難しくなってしまいます。後半は、より接戦した内容になったと思います。相手は試合に勝つためには、2点決めなければいけない状況で、押し返してきました。自分たちもできる限りのことをやりましたけど、2対2に追いつかれてしまい、両チームとも5ファウルが溜まった状態になってしまいました。

そこからはコイントスのような、どっちに転がるかわからないような内容になりました。残り17秒で第2PKを与えてしまいましたが、篠田(龍馬選手)がPKを止めてくれました。延長戦にもつれて、自分たちは点を決めて3対2にしたけど、また3対3に追いつかれてしまったので、そこからはリスクをかけて点を取りにいかなければなりませんでした。5ファウルが溜まっていたので、パワープレーで無理をするとファウルを取られる可能性もあったんですけど、自分たちが勝てるようにリスクをかけて戦いました。そこでゴールを決めることはできなかったですけど、自分たちはポジティブなメンタリティを持ってPK戦にいけたと思います。自分たちは、PK戦も練習して準備してきましたし、準備してきたことが試合で出せたので、勝てたと思っています

篠田龍馬選手
篠田
「前半のうちに2-0になったところで、試合を終わらせる3点目4点目が取れなかったことがこの試合を難しくしてしまったなと感じていて、監督も言いましたけど、できることはすべてやったと思います。難しい試合にはなりましたので、疲労も溜まった状態ですけど、今日のゲームでチームが一つになって、メンタル的にいい状態で明日の試合に望めると思います。明日の試合に勝たないと今日勝った意味がないので、明日の試合で勝って優勝できるように。今日のゲームは、それにつながる内容だったかなと思います」

ーーしながわとは3月の全日本選手権以来の対戦ですが、改めて今シーズンのしながわの印象はどう感じましたか?
フエンテス
「同じ相手でしたけど、3ヶ月前とはまったく別のチームですし、シーズンの最後に試合をするのと、シーズンの最初に試合をするというのは、そこもまた違った内容になってくると思います。選手も抜けたり、入ってきたり、入れ替わりがあったなかで、3ヶ月前はダニエルは試合に出ていなかったですし、チアゴ(セウバック選手)も入ってきたり、あまり変わってないように思えるかもしれないですけど、選手の入れ替わりもあって、それが大きな変化になっています」

ーーしながわのクオリティを見ていると、現時点でもF1の上位とも十分に戦える実力を持っていると思うが、F1王者の監督から見て、しながわがF1に昇格したらどういう立ち位置になると思いますか?
フエンテス
「2年前に全日本選手権大会で対戦して、負けています。そのときにも選手たちには、F1に上がってきたら上位のチームと問題なく戦えるチームだということは伝えていた、ということです」

ーー第2PKを連続で止めたシーンですが、かなり準備をして、ここにくるだろうと的確に予測していたように見えましたが、振り返っていただけますか?
篠田
「はい、1本目の白方選手に関しては、キーパーコーチからスカウティング映像をもらっていました。それに、2年くらい名古屋で一緒にプレーしていたんで、性格もわかったうえで、向こうも映像を見ているというのは頭にあったと思うんですけど、彼の性格上、ここにくるんじゃないかな、同じところに来るんじゃないかなという性格も分析した上で、あの判断を取りました。

2本目のダニエル選手に関しては、助走が結構なスピードだったので、あんまりコースは狙えないんじゃないかなと感じて、体を大きく見せて、どこかに当たってくれというイメージでした。

1本目に関しては、残り17秒で(決められたら)ほぼ負けてしまう状況だったし、見てる人だったり、チームメイトだったりは名古屋が負けるんじゃないかなと思ったと思うんですけど、僕は、『止める』というよりも『勝てる』というふうに思ったので、絶対に勝てるなと思いました」

ーーあの時点でですか?
篠田
「はい、あの時点で、勝てると思いました」

しながわシティ 岡山孝介監督
ーー試合の総括をお願いします
岡山
お疲れ様です。全部、出し切った試合ですし、PKの結果は仕方がないと思いますが、もうちょっとやりたいことをやれた部分もあると思います。ただ、やっぱり新シーズン、新しいチームでの最初の大会で、なかなかそれを全部出し切ることができなかったので、そこをしっかり磨いていきたいと思います。トップレベルの基準というのを感じることができたんで、そこはポジティブに捉えて、また明日から頑張っていきたいと思います」

白方秀和選手
白方
「本当に苦しい試合でしたが、勝ち切ることもできたと思いますし、やっぱりこういうところでしっかり結果を出さないといけないなと感じました。後半の残り最後の僕の第2PKもそうですし、やっぱりああいうところで結果を残せる選手であったり、チームになっていかないといけないなというふうに感じました」

ーー名古屋とは3月の全日本選手権以来の対戦ですが、改めて今シーズンの名古屋の印象はどう感じましたか?
岡山
「ワールドクラスの選手もいるし、組織としても統率が取れているし、素晴らしいチームだと思いました」

ーー昨シーズンの入れ替え戦で昇格を逃して、失意から立ち直って臨む新しいシーズですが、新シーズンに向けての取り組みや気持ちについて教えてください
岡山
「おっしゃる通りで、多分今まで受けたことがないくらい、それくらいのショックをみんな受けて、多分、負けたときはこれで終わりだって思った選手もいたと思うし、続ける気持ちを持てない選手もいたと思います。ただ、本当に苦しい思いをした人は、本当に強くなれると思っているし、今シーズンの最初のミーティングでもそこは話をしました。去年で終わりだったら、失意の中で終わるんですけど、この世界は繰り返していて、常にリベンジするチャンスがありますので、ああいう苦しい経験から立ち上がって前に進むことが大事だという話をしました。選手たちは、F2という舞台ですけど、その中でも目標に向かって前に進もうという気持ちを見せてくれていて、それを誇らしく思いますし、人としても今すごく成長しているところだと思います。去年もいいチームだったんですけど、まだ足りないところがあったと思うし、そういったところの改善というにも選手たちは努めて前進してくれています。そういう選手たちと共に歩めることは自分にとって誇りですし、すごく喜ばしいことだと思います」

白方「個人的な話になりますけど、昨シーズンでF1に昇格できなければ、自分の中では引退を考えていました。それがあったので昨シーズンは、自分の中ですべてをかけてきたつもりだったんですけど、試合が終わって、少しずつ時間が経って、クラブからももう一度一緒にと言ってもらえたのがすごくありがたかったです。この苦しい思いをしたメンバーと、絶対にF1に行きたいなというのが、今シーズンのモチベーションのすべてで、切り替えることも忘れることもできないですけど、本当に今年が最後だと思って、前を向いてやれてます。

F1に行くためには、F2のリーグを首位で突破しないといけないですし、目の前の相手がどこであろうと、自分たちのフットサルをして、結果を出してというのが最後のところで生きてくると思うので、僕らはF2ですけど、一切、油断もしないですし、そこをモチベーションにしてみんなで頑張ってますし、僕もすべてをかけて頑張っています」

ーー後半のスタートのセットのメンバーを少し変えていたが、その狙いと、岩橋選手に期待したことを教えてください
岡山
「ちょっと守備に気を使った布陣を組んでいたんですけど、負けていたので、それより岩橋も含めてもう少し攻撃的に行かなきゃいけなかったのもあって、メンバーを代えました。もちろんダニ(サカイ ダニエル ユウジ選手)とか、他の選手も悪かったわけじゃないですけど、やっぱり選手にはそれぞれ特徴があるので、その特徴が名古屋と対戦したときにどう生きるかというのを見ながらやっていたので。中には練習でそこまでやってないセットも使いましたけど、そこはゲームを見ながら噛み合うかというのも含めて、組んでいました。一番は、攻撃的に行きたいっていうところで、縦への推進力だったりとか、流動性だったり、そういうのを出せるメンバーを増やしたというところです」

ーー先ほど監督がトップレベルの基準を感じたとおっしゃっていたが、選手としてピッチの中でそういうものを感じましたか?
白方
「そうですね、ダルラン選手とか、アルトゥール選手もそうですけど、やっぱり個人の能力が高いので、普通に勝負したらやっぱり負けますので、そこに対してどうチームとしてやるのかっていうのを、みんなで意識しました。ピヴォは強いのでそこに入れさせないようにであったり、前をとってとか、相手が嫌がるようなことをして、うまくできていた部分もあると思うので、そういうところをもっと突き詰めて、今度は試合を動かせるようにしたいなと思います」

ーー立ち上がりはネガティブトランジションが非常にうまくいって、相手をきっちり抑えていたところからドリブルで崩されて2失点して苦しくなったが、その辺はどう捉えていますか?
岡山
「そうですね、まずは無失点を目標にしますけど、名古屋を相手に0で終わるのは難しいので、1点はどこかで入るのは仕方がないと思っていました。ですから1点はそんなに気にはしてなかったんですけど、やっぱり連続で失点したことに関しては、もうちょっと上手く対応できたのかなと思うので、そこは1つ悔やまれる部分ではありますね。名古屋相手だとどうしてもまずはディフェンスから入ってとなりますし、そこで失点すると気持ち的に落ち込む部分もあるので。気を抜いたわけではないですけど、少し気持ちが落ちたところで、そこついてくるのが強いチームなので。どの試合でも連続失点はまずは避けなければいけないと思っていたので、悔やまれるところではあります」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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