コラム

プロスポーツを活かした地域貢献

~北九州市立大学地域創生学群とボルクバレット北九州の理想的な関係~

Fリーグに限らず、プロスポーツの試合運営にボランティアスタッフが関わっていることは珍しくない。ボルクバレット北九州の試合運営にも多くのボランティアスタッフが携わっているが、その中に大学の授業の一環としてボランティア活動に参加する存在があった。
北九州市立大学地域創生学群・プロスポーツ実習の学生達だ。

北九州市立大学・プロスポーツ実習とは

プロスポーツを北九州市民の生活の一部に』を目標に掲げ、北九州を本拠地とするプロスポーツクラブ(ギラヴァンツ北九州ボルクバレット北九州)の活動支援、運営の補助を行っている。

ギラヴァンツ北九州では主に前日設営、試合当日の運営の補助。プロスポーツクラブの裏側や試合を行うまでの過程、どんな努力が必要なのかを体験しながら学んでいる。
ボルクバレット北九州では前日設営、試合当日の運営の補助に加え、3つの班(イベント班・広報班・バレ子班)を編成し、各種イベントや企画を行う。

「イベント班」は、試合会場でのイベントの企画運営、「広報班」は、試合やイベントに関するSNSでの広報活動全般、「バレ子班」は、ボルクバレット北九州のマスコットキャラクターである『バレ子』がインスタグラムを中心にSNSで活動。
プロスポーツを支える立場を経験するともに、地域文化振興には欠かせないプロスポーツについて、一人でも多くの北九州市民に知ってもらえるよう、日々、試行錯誤を繰り返しながら活動している。

今回はボルクバレット北九州での取り組みについて、担当教員の相羽 枝莉子(アイバ エリコさん、バレ子班の儀宝 彩乃(ギホウ アヤノ)さん、広報班の中津江 新(ナカツエ アラタ)さんと松田 美琴(マツダ ミコト)さんの3名の学生に今シーズンの活動の振り返りと来シーズンの目標などについて話を聞いた。

―初めてボルクバレット北九州に関わった今シーズン全体について感想を聞かせて下さい。
松田:初めてプロのスポーツチーム、それも全然知らないフットサルという競技にかかわらせていただくことになり、最初は右も左も分かりませんでした。実習活動を重ねるうちにだんだん自分達がすべきことはどういうことなのかという要領も分かり始めて、ボルクさんからも必要とされていることが分かりとても嬉しく感じました。広報班としてはボルクからお借りしているツイッターのバレ子のアカウントや、プロスポーツ実習のアカウントで自分達の出した企画に対するツイートに対して「いいね」が多くもらえたり、選手から引用リツイートで反応してもらえるのはやりがいを感じる事でした。ボルクからお借りしているアカウントを運用する責任の重さを一年間を通じて感じました。

(松田さん)

―バレ子といえば、Fリーグマスコット総選挙でも2位になり、着ぐるみ化のクラウドファンディングも見事目標達成しました。
儀宝:はじめはフットサルって何?みたいな状態からはじまりましたが、最近は次は何をしたらいいかとか、自分達からやるべきことを見つけられるようになってきました。私はバレ子班で主に「バレ子の旅」という、バレ子が北九州の観光地を中心に色んな場所を紹介するというインスタグラムの企画をやらせていただきました。投稿を始めるとファンの人から「〇〇に来てよ」とか「次はあそこに行ってみたら?」とかアドバイスをもらったり、「バレ子来てくれたんだね!」と反応してくれたりしたのでとても嬉しかったです。リアクションあるとモチベーション上がりました。

(儀宝さん)

中津江:実際に試合に来てくれる方にツイッターの投稿に対して『あれ良かったね』とか声をかけてもらえるようになったり、SNSを通して試合に来てくれるようになった方もいたり、認知してくれる方がいたのでやり甲斐がありました。ツイッターの投稿に「面白い」とか「かっこいい」とかコメントをくれたり引用リツイートの反応があると嬉しかったです。

―中津江さんは北九州市立大学フットサル部の部員ということで、自らもフットサルのプレーヤーでもありますね。
中津江:試合でオフィシャルカメラマンをやらせてもらっていますが、なかなかプロのフットサルチームのカメラマンをする事は出来ないと思うので、貴重な機会をいただけています。その写真を使ってSNSで『ベストショット企画』などボルクの企画も出来てとても感謝してます。フットサル部ではゴレイロをやっていますが、うまくいかなくて気持ちが落ちるようなこともありますが、ボルクの試合を間近で見て、プロのプレーから学べる事、そして何よりあの試合会場の高揚した雰囲気の中でプレーする選手へのリスペクトや憧れで自分も頑張ろうと力をもらえます。

(中津江さん)

来シーズンに向けて


―4月には新入生が仲間に加わる予定とのことですが、来シーズンやっていきたいことは?

中津江:授業ではありますが、その前にまずスポーツの楽しさを知って学んで欲しい。僕らの学群は地域を盛り上げるために色々考える所なんで、それを知ってもらえるきっかけ作りや社会の疑似体験をしていきたい。自分の役割や責任をもって活動したいし、出来る場所にしたい。今はほぼSNSだけでの広報活動となっているので、これからはマスメディアを含め、他のメディアでも大学生がこれだけ関わっている特殊なチームがあるんだということを発信していきたいです。

松田:バレ子が着ぐるみになって試合に出かけることができるので、バレ子を広告塔とした活動をしていきたい。大学生がメインで関わる試合の運営だけど、他のチームに負けないような特色を出していきたいです。

儀宝:これまではパネルだけの存在で、出来ることが限られていたバレ子が着ぐるみになるので、今まで出来なかったこと、街のイベントなどでバレ子を使ったチームのPRをしていきたいです。

―最後に相羽先生からも伝えたいことを。
相羽:今年度の実習の学生は全員1年生で、去年の今頃はまだ高校生だった学生達です。スポーツを支える裏側でどのような活動が行われているのか、目を向ける機会もなかったと思います。この一年の間にとてもたくさんの事をすごいスピードで吸収していって、毎試合後に振り返りをし、次に向けての改善などかなりの頻度で話し合ってきました。それもボルク側が学生たちに任せてくれている責任感があるから。どうすれば試合に来たお客様一人一人がスムーズに快適に過ごして下さるか。思いやりの気持ちを持ち、相手への立場になって考えています。学生が運営の事までこんなに関わらせてもらえるというのは多分他のクラブではない事なんじゃないかと。そのことをもっと広く知っていただければと思っています。

(相羽先生)

今回のインタビューから感じたのは、ボルクバレット北九州を通して街に活気をもたらしたいという学生たちの想像以上の熱意と意欲。スポーツを活かした地域貢献をという共通の目的のもとで協働することにより、双方にメリットが生じる理想的な関係。プロスポーツクラブが地域に存在する意義を示すひとつのかたちだと感じた。
新シーズンはF1というステージに挑むボルクバレット北九州。チーム、クラブ、そしてそれを支える全ての人と一緒に進化したいという彼らの強い意志と共に、更なる飛躍のシーズンとなる事を期待している。

編集後記


一年前はフットサルが何なのかもよく分からなかったバレ子班の儀宝さん、ボルクバレット北九州の活動に関わるようになったのをきっかけに、自らも趣味でフットサルをプレーするようになったとのこと。

沼にはまってるかもしれない…」とつぶやいていたのが印象的だった。

【参考】
北九州市立大学地域創生学群
https://sousei.kitakyu-u.ac.jp/

Text by 東 恭子
Photo by 東 恭子
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