コラム

Fリーグの審判に聞きました「晝間久美審判員」

~審判は実力社会、トップ8を目指したい~

2021年5月16日(日)に行われた明治安田生命J3リーグ第8節Y.S.C.C.横浜VSテゲバジャーロ宮崎の試合で、山下良美主審が女性審判員として初めてJリーグの主審を務め、話題となった。しかし、フットサルのトップリーグであるFリーグでは、もう数年前から男子の試合で女性の審判員が活躍している。これは、フットサルファンなら誰でも知っている事実。とはいえ、まだまだ“女性”ということに注目が集まる現実もある。それならそれでしっかり注目してしまおうというのが、女性審判員にスポットを当てるこの企画。まずは国際審判員の資格も持つ、晝間久美(ヒルマ クミ)審判員に登場していただいた。(取材協力:JFA)

女子というカテゴリーはないフットサルの審判員


2021年5月29日、FリーグのWEBサイトでは開幕に備えて担当審判員名簿が更新された。その数37名。名簿は、五十音順に掲載され、男女の区別はない。フットサルにおいて、国内の審判員の資格はフットサル1級が最上位。国際試合も担当できる資格を持つ審判員は、その資格が優先されて明記されている。Fリーグの試合で笛を吹く資格としても求められるのは、トップリーグに見合った実力があることだけだ

晝間「フットサルのリーグは男子と女子に分かれていますけど、審判においては男も女もない。条件を満たせば、男子の試合も担当できるということで、Fリーグも担当させていただくようになりました」

条件とは、審判としての技量に加えて、体力や運動機能などがFリーグにふさわしいレベルにあるということ。そのレベルを測るフィットネステストに合格することが必要だ。晝間審判員は、2017-2018シーズンから男子の試合も担当している。

晝間「フットサルの競技規則にも、女子フットサルは別のカテゴリーではなく、男子フットサルと同じ位置付けと書いてあります。ただ、男性の方がスピード感は速いし、スピードだけじゃなく判断力も早いものが求められるので、男子の試合を担当する技量がないと難しいということはあります。でも女性にもチャンスはありますよ」

審判員の資格を取得したのは、15年ほど前。大学卒業後に教員となり、保健体育を教えるかたわらサッカー部の顧問となったことがきっかけだ。サッカー部が大会に出るために帯同審判員が必要になり、生徒とともに審判員の資格を取った。もちろんその背景には、晝間審判員自身が大学までサッカーを続け、卒業後に始めたフットサルでは、現在も都リーグに加盟するチームに籍を置く選手だということもある。

晝間「そのときに声をかけていただいて、ご指導をいただきながら。なかなかすぐにうまくいくものではないので、次はこうしてみよう、ああしてみようとその繰り返しでハマっていったというか。審判員として上達するなかで、サッカーって知らないことがいっぱいあるんだなと気づいたり。試合をするときには必要な存在なので、そういう責任感も感じるようになりました」

帯同審判のために取得した審判員資格も、経験を積み、自身がそのおもしろさ、奥深さを探求することによってステップアップし、とうとうサッカー審判員女子1級まで取得。その後の2014年にフットサル1級を取得すると、2015年にはフットサル国際女子審判員に任命された。現在は、Fリーグと日本女子フットサルリーグで笛を吹く。

とはいえ、男子のリーグであるFリーグで最初から抵抗なく受け入れられたとは思っていない。

晝間「フットサルに限らず、サッカーでもそうでしたけど、最初はやっぱり『今日、女の審判じゃん』とか『審判、できるの?』って言われました。でも今は、だいぶ認知されてると思いますし、先日のJリーグもそうですけど、男性女性関係なく、やっぱりいいゲームができたら認められるものだと思うんですよね。私も男子のリーグだから、女子のリーグだからって、何かを使い分けることはないですし。もちろんスピードとか動きだしとか技術的なことは意識していますけど。私たちが男性女性関係なく、きちんとできるところを認めてもらえるようになれば、そういった抵抗はなくなると思いますし、後ろに続いてくる女性審判員にも道が開けると思います。そこは最初から意識していることではありますね」

自分の可能性を追求することが、後から続く女性たちへのバトンとなる。ピッチに立つ時はいつも、フロントランナーとしての自覚と責任を自分自身に問い直している。

いいゲームができる環境を作ることが審判の仕事


フットサルなどスポーツを見るとき、誰もが審判員を、いて当たり前の存在と思っている。しかし、その役割をきちんと答えられる人は、それほど多くないように思う。また、審判という文字からは、「裁く」イメージもつきまとう。

晝間「反則を前提に、それを罰したり、裁いたりするというより、競技規則があって、それを施行しながら、ゲームを正しくより良い方向に導いていかなきゃいけない。どちらかというと反則が起きないように、安全に公平にゲームに集中してもらう環境を作っていくことにエネルギーを注いでいる方が大きいと思います」

審判の仕事は、環境づくり。試合を行う40分間を通して、選手がその実力を思う存分発揮できる環境を整える。

晝間「フットサルには、4秒をカウントするルールがありますが、これはスピーディなゲームを引き出すことが目的です。我々は4秒をカウントしますが、4秒を速く数えて罰するのではなく、4秒以内にやってもらえるよう声をかけたりする。ファウルも、例えばディフェンスのアプローチもこの行き方をしたら危ないなとか、ゲームの温度が上がってきたなといったことを感じて、『今のは少し危ない行き方だったから気をつけて』など、行き過ぎたファウルが起こる前に察知して落ち着かせるような声をかけるとか、そういうコミュニケーションを取ります」

熱い試合は、見ている方もおもしろいが、ラフなプレーを見たいわけではない。ましてやファウルは、ケガにつながることもある。

晝間「その塩梅は、すごく難しいですね。フェアでタフなプレーとラフプレーはまったく別物で、激しく行きすぎちゃうと安全を脅かすようなことになってしまうから、フェアな中でタフにやってもらうように促します。また、危ないからといってファウルを取って抑止しようとすると、今度はファウルが細かすぎてフラストレーションになってしまったりすることもある。特にフットサルは、ファウルが累積されるので、ファウルの判定基準を作るところはすごく重要。その基準を選手に分かってもらえるように伝えながら、試合を進めます」

二人の審判員が笛を持つフットサル。その基準がどのようにできているのかも気になるところ。

晝間「そこは非常に難しいところです。お互いに事前に担当チームの映像を見て、チームの戦術、選手のプレーの特徴などを確認して、試合前にこういったことが起こるんじゃないかという情報交換をして、今日はこのラインで行こうという打ち合わせをします。他にも、対戦する2チームがそのゲームに何を期待して、何を狙うのかによっても戦い方が変わってきます。それを感じながら、どのラインに判定基準を置くのか、それを我々が一方的に作るのではなく、チームの温度ややりたいことを感じながら作っていく形になるので、よりコミュニケーションは大事。試合中は、インカム(無線通信機器)でプレーごとに『今のはどう見た?』『今の行き方はちょっと危ないね』といった情報交換をしながら基準をすり合わせていきます。難しいところですね」

判断するための情報の多くは、「視覚」から得る。もちろん漠然とプレーを見ているのではなく、見るエリアやポイントがあり、経験を積むことで見るための技術も熟練していく。

晝間「選手はプレー中、手も使うし、足も使うので。例えば、肩口に手をかけに行ったけど、足元を見ていたら肩口を見落としたり。見てはいるけど、どこにフォーカスを当てているかで、見えたり見えなかったりもする。または、なんとなく捉えているけど、強さやスピードがわかりにくかったり。審判員が見ているところは、実はかなり範囲が広いんです。まず見なければ判定はできませんから。他にも、雰囲気や音からの気づき、感じることなど、いろんな情報をもとに、予測を持って、どこを見るべきかを常に考えながら動いています」

しかも、見るべきは、ピッチの中だけでは収まらない。

晝間「フットサルは、ベンチも近いので、その影響もあります。交代が自由なので交代の監視をしたり、セットで替えると戦術そのものが変わったりすることも多い。情報量はすごく多いですね、でもそこが面白いところでもあるかなと思います」

五感をフル活用しながら、審判員同士はもちろん選手とのコミュニケーションも欠かさない。

晝間「選手から『今のファウルじゃないの?』と聞かれることもありますし、そういうときに長くは話せないけど、『今のはギリギリだね』といった答えは返します。他にも、『俺、掴まれてるから、よく見て』と言われたりすることもあります。そうはいってもそこだけ見るわけにもいかない。でも、審判に話すことでガス抜きになったりもするので。逆に、『さっきのプレーは、ファウルを取った方が良かった?』と聞いて感想を教えてもらうこともあります。『あのくらいはいいよ、やらせて』と言ってもらうと、『この基準でいいんだ』と確認できる。そうやって助けてもらうこともあります。いいゲームは、審判だけではなく選手やチーム、みんなで作っていくものだなと、すごく感じます」

選手のレベルが上がれば上がるほど、試合の環境づくりも難しくなる。Fリーグの高いレベルは、審判員たちのレベルの高さも物語っている。

フットサルを選ばれるスポーツに。その思いがモチベーション


これまで最も印象に残っている試合はというと、2015年に開催された「AFC女子フットサル選手権マレーシア2015」という答えが返ってきた。この大会でフットサル日本女子代表は、決勝でイランに0-1で敗れ、準優勝となった。その試合はもちろんだが、大会の熱量が強烈な思い出として記憶に残る。

晝間「試合の迫力はもちろんなんですけど、お客さんの熱量が日本で感じるもの以上にすごかった。自国の旗を振って、声を張り上げて応援している人がたくさんいて。地響きかっていうくらいの轟きをスタジアムで感じて、『ああ、すごい雰囲気だな』ってワクワクしました。日本もフットサルをこんなふうにみんなに見てもらえるスポーツになったらいいなって」

フットサル日本女子代表が準優勝した翌年、2016年に日本女子フットサルリーグのプレ大会が開催され、2017シーズンから本格的にスタートしている。

晝間「この大会の決勝で負けてしまったのは、すごく悔しかった。だから、いつか日本の女子フットサル代表がAFCで優勝して、ゆくゆくはワールドカップで勝てるようになって欲しいと思っています。そういう女子のレベルアップを含めて日本女子フットサルリーグを立ち上げてくれたと思うんですけど、そのためにも日々のリーグのレベルアップが必要だと思うし、レフェリーの判定というのも少なからず影響があると思う。レフェリーの立場で、日本の女子フットサル全体のレベルアップのお手伝いができたらなと思っています」

決勝で負けた悔しさの記憶がまだ新しいままに始まったプレ大会から関わる晝間審判員は、日本女子フットサルリーグ自体を一緒に作っているという思いを持っている。また、フットサルに熱狂するスタジアムを肌で感じたからこその使命感もある。

晝間「Fリーグが開幕した頃は、同じような熱量があったと思うんですけど、今はちょっと少なくなってきているので。フットサルの文化が日本に根付いて、見るスポーツにフットサルが選ばれる。どうしたら日本のフットサルを、男子も女子もそういったものにできるか、今は考えています」

Fリーグも開幕当初より、選手個々の技術が上がり、リーグとしてのレベルも高まっている。

晝間「すごくタクティカル(戦術的)になって、おもしろいなと思います。攻守の切り替えも早いし、サッカーのおもしろいところがギュッと凝縮されている競技だと思うんですよね。もちろんサッカーもおもしろいんですけど、フットサルはお客さんとの距離も近いので迫力あるプレーが間近で見られたり、フットサルならではの戦術、ブロックプレーで裏が空いたりする連携とかもすごくおもしろい。もっと選んでもらえたらいいなと本当に思います」

フットサルのおもしろさをたくさんの人に伝えたい。だからこそ、選手にはその力を思う存分発揮して欲しいと願う。その思いはまた、審判員としてレベルアップを目指すモチベーションともなっている。

心技体を整えて、目指すは審判のトップ8


Fリーグは、2020-2021シーズンが3月半ばに終了し、6月の1週目に新たなシーズンが開幕となった。3カ月弱のオフの期間、審判員が何をしているかと思えば、晝間審判員は鍛えていた。

晝間「来シーズンを見越して、体を作る時期。試合がないと重たい筋肉痛があっても問題ないので、特に弱いところを筋トレして、ウエイトをずっとやって。開幕直前は実践的に走ったり、切り返しの練習をしたり、実際のゲームをイメージしてトレーニングをしていました」

仕事柄、体育館が利用しやすいことを幸いに、毎日筋肉痛を抱える日々を送ってきた。鍛えるのは、もちろん体だけではない。

晝間「ゴールデンウィークに開幕前研修があって、今シーズンのスタンダード映像を見て、どういう判定をしてくかを確認したり、競技規則を読んで頭の整理をしたり、実践で使えるようにかなりやりました」

これが毎シーズンオフのルーティン。改めて、審判にはどんなスキルが必要なのかを教えてもらった。

晝間「心技体ってよく言いますけど、メンタルでいうと相対する2つのチームを裁くので、やっぱり精神的な強さとか冷静さは非常に重要だと思います。技術でいえば、フットサルの理解、フットサルの技術・戦術、フットサルそのものを理解すること、それとレフェリングの技術。フィジカル的には、狭いピッチで切り返しやターンが多く行われるので、マラソンのように長く走るよりは、俊敏さだったりのアジリティー能力が必要ですね。それからスピード、フットサルのゲームにマッチしたガーッと行って、キュッと止まって方向転換するとか。あとはステップワークも細かくサイドステップ、フロントステップ、バックステップとか。サッカーだと斜めに走ったりできるんですけど、フットサルはピッチの中を見ながら一直線を走る、しかもあっちに行ったり、こっちに行ったり。アジリティーとかクイックネスといわれる能力が特に必要です」

もともとサッカーをやっていた晝間審判員。しかし、プレーヤーとしてアジリティーやクイックネスといった能力に長けた選手だったかというと、そうではなかった。これらの能力は、フットサルを始めてから身についた。

晝間「私は、フットサルに向けてのトレーニングを国際審判員になってから始めたんですけど、それで足も速くなったし、フィットネステストのスコアも伸びました。もともとセンスがあるというわけではなくて、フットサル用のトレーニングをすることで身につけました。プラス、レフェリーには、レフェリーに特化したトレーニングが必要です。特にフットサルは。でもどれもトレーニングで身につけることができます」

フィジカルや判定技術などフットサルの審判に必要な要素は、全てトレーニングで向上できる。しかし、それぞれの要素が向上しても、噛み合っていなければレベルの高いレフェリングはできない。必要な要素のすべてが良い形で統合され、判定する力に反映されることが必要だ。

晝間「判定力は、映像の見方を覚えて、繰り返し見ることで養えます。でも試合では、判定を下すために、動きの中で適宜、“見るべき場所”にいなければなりません。たまたまそこにいて、たまたま見えるわけではないので。それに、見る場所も大事。私には見えていても『そこから見えるの?』と思われる位置にいてはやはりだめですから。選手にとって、見るべき場所にいて笛を吹かれたら、『しょうがない』という説得力にもなるので。審判の技術は、フィジカルとセットですね」

心技体、この3つのうち、もっとも速くピークを迎え、衰え始めるのがフィジカルだ。その機能面に一定のレベルが求められる仕事は、年齢との戦いでもある。40代を迎えた晝間審判員もその現実と向き合う。

晝間「勝ち負けじゃないですけど、過去の自分には負けていると思う。年齢は毎年重ねていくし、衰退していくだけ。でも若くてフレッシュな選手がたくさんいて、スピード感もフットサルの技術も上がっていく。こうなると自分も上がっていかなきゃいけない。そのためには、今まで以上に効率よくトレーニングをしないと上がらない。正直きついなぁと思います。でも、上がっていく自信は、ある意味あるんです」

体の機能面の一部は衰えたとしても、心技はこれからますます充実の時を迎える。晝間審判員自身が、その気配は感じている。

晝間「経験もそうですし、技術とメンタルとフィジカルがより統合されていく。情報の出し入れが速くなった感じがある。多分視力も少しずつ衰えていくし、スピードなど体の機能面も衰えていくと思うけど、知識と技術と経験が統合されていくことでこれまで以上に上がっていけると感じます。ここ数年は、まだ下手なところもありますけど、選手とのコミュニケーションが取りやすくなったり、熱くなったベンチや選手を諌めたりといったマネジメントに手応えを感じることが多くなってきて。年の功かな?経験がついてきたかな?ということを感じているところです」

体の衰えを最小限に止める努力を怠らずに行ける高みを目指したい。

晝間「個人的には、Fリーグをもっといい意味で余裕を持って担当できるようになりたいと思ってます。男子を担当している分、女子の現場はすごく余裕を持ってできるんですけど、男子の方はまだまだ自分では余裕が持ててないと思うので。ゲームの40分間を通したマネジメントは、全体を通した予測が持てないと難しい。余裕が持てないと、今のことだけでいっぱいになってしまいますから。また、審判二人は協力し合うことがすごく大事だとお話ししましたが、まだまだ助けてもらっている方が大きいですけど、最近は自分が助ける部分が少しは出てきたように思います。もっともっと余裕を持ってゲームができるようになりたいと思いますし、『晝間審判員にお願いしたい』って認められるくらいの力がつけられたらいいなと思います」

目指すはトップ8。

晝間「審判は実力主義なので、大会の最後の方の大事な試合を任せられる審判というのがいるんですけど、そういったベテランであり、実力のある人たち。男性とか女性とか関係なく、そのくらいになれればいいなって思います」

今年の9月には、リトアニアで男子ワールドカップが開催される。開幕したFリーグでは、ワールドカップに向けて、選手たちがいつものシーズン以上に気合を入れて戦っている。その戦いを支える審判員たちもまた同じ。いつか世界の舞台で日本の女性審判員が活躍するところが見られることを期待したい。

教えて!晝間審判員


フットサルのゲームに審判が必要なことはわかるけど、どんな役割を果たしているのかを説明できる人は、そんなに多くないのでは?そこで、フットサル観戦に役立つ審判知識を晝間審判員に教えていただきました!

ーーフットサルは、タッチライン際に立つ審判が二人いて、両方が笛を持っているけど、役割に違いはある?
「主審と第2審判が笛を持っていて、配置としてベンチのあるサイドのハーフウェイラインのところにタイムキーパーテーブルがあってタイムキーパーがいます。最初にそこにいて笛を持っているのが主審、逆のサイドにいるのが第2審判。試合の中で入れ替わることもあります。
役割に違いはありませんが、判定が違ったときは主審が優先される、審判報告書を書くなど責任の違いが少しあります」

ーー2人の審判員の役割分担や試合の見方は?
「対角線審判法という審判のオーソドックスな審判法があるのですが、挟んで見るということが基本です。互い違いに動いて、互い違いに見ています。
プレーが行われている争点を見ますが、近くにいた方が見やすいかというとそうとも限りません。判定は、近くの審判が行った方が選手にも客席にも説得力はあると思いますが、フットサルの場合は、横にしか動けませんし、後ろが狭いことも多く、近すぎて見えないこともあります。逆サイドの審判は、近くはないですが、反対側からどう見るか、どう援助するかというのも非常に重要。2人の審判が協力して判定する場面はすごくたくさんあります」

ーー審判2人で全てを見ているの?
「2人が見えない角度は、第3審判が見ます。例えばカウンターの場面、フットサルでゴールに迫るおもしろいシーンですよね。カウンターのときは、やっぱりゴール前のエリアがすごく大事なので、笛を持っている2人は対角線を保ちながらペナルティーエリアの方に行きます。この時、ボールとは関係ないところでチャンスを潰すために遅らせようとホールディングのファウルをすることもあります。これは、後ろの審判が見ることもできるんですけど、ペナルティーエリア内のファウルが大事なので、後ろやボールがないエリアに関しては、第3審判に援助を求めるときもあります」

ーー4人はどうコミュニケーションをとっているの?
「通常は、インカムをつけていて情報交換をしていますが、昨シーズンからのコロナ禍で、第3審判とタイムキーパーはつけてません。ですからアイコンタクトやジェスチャー、実際に話してコミュニケーションをとっています。ピッチの長さは40mあるので長いパスが出ると見落としも出てくるので、事前に「こういうときは、こういうところを見ていて」といった視野分担をお願いしていたりもします。また、試合中に副審(第3審判とタイムキーパー)に「さっきの場面のああいうところをみていて」「今のはどう見た?」と簡単にコミュニケーションを取りながら進めていたりもします」

晝間審判員のおすすめするFリーグの見方


推しのチームを応援するのも楽しいと思いますが、フットサルは推しのチームがなくても、攻撃シーンが多かったり、攻守の切り替えが早かったり、魅力がたくさん詰まったスポーツです。ですから、ルールとか審判のことをより深く知ることで、選手の心情とか、選手のプレーの意図を意識することができると思います。そのためには、競技規則を知って、審判目線を持つとさらに何倍も観戦が楽しくなると思います。審判目線を持つと、今のシーンを審判がどう見たかといった見方もできるし、より理論的にフットサルを楽しめます。挑戦してみてください。

フットサル競技規則
https://www.jfa.jp/documents/pdf/futsal/law_futsall_202021.pdf

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by ペスカドーラ町田
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