〜ペスカドーラ町田 VS Y.S.C.C.横浜〜
Fリーグディビジョン1の2023-2024シーズンがいよいよ開幕した。ホームで初戦を迎えたチームの一つがペスカドーラ町田。ホームアリーナ・町田市立総合体育館に、Y.S.C.C.横浜がアウェイチームとして乗り込んだ。東京と神奈川のチームの対戦ながら、ホームタウンは近く、アクセスも良いことから横浜のサポーターも足を運びやすい開幕戦となった。
共通点は、町田の甲斐 修侍監督と横浜の鳥丸 太作監督、どちらのチームも監督がトップリーグを率いる監督として就任2年目というところ。ベースを作る1年目を経て、より監督のカラーが強くなるであろう2年目のシーズンを迎えての対戦となった。昨シーズンは、町田が2戦2勝。横浜はリベンジを狙う。一方の町田は、昨シーズンも開幕戦を含めた序盤でつまずいている。同じ轍は踏みたくない思いは強い。
声出し応援が解禁となり、開幕戦に集まったファン・サポーターは、1500人を超えた。サポーター席には、両チームともに太鼓を中心に声を揃えて応援するサポーターが集まり、試合のボルテージの上昇を加速した。ピッチ内も熱く、両チームともに前線からプレスを仕掛け、ボールを持てば積極的にゴール前に運ぶ展開。主導権を奪い合うなか、横浜がピヴォの菅原健太選手が前線でボールをキープし、高橋響選手へパス。高橋響選手がシュートを放ったところで町田のオウンゴールを誘発し、先制に成功する。2分後には、ゴール前でボールを繋ぎ、守備の連携が乱れたところでシュートを決めて、追加点を奪う。さらに終盤、コーナーキックを獲得し、町田の守備を掻い潜って安井嶺芽選手が3点目を奪ってリードを広げた。
2ndピリオド、町田はゴレイロを土岡優晟選手からジオヴァンニ選手へ交代。攻撃の起点にもなるジオヴァンニ選手の起用によって得点への意識をいっそう高める采配を見せる。ところが、ジオヴァンニ選手も相手陣内に入って攻撃に参加しながら得点を狙うものの、横浜の守備は固く、町田はなかなかゴールをこじ開けられない時間が続く。横浜も固い守備からボールを奪うと町田陣内へ素早く侵入していく。すると、町田陣内でルーズになったボールを拾った横浜の北野聖夜選手がミドルシュートを決めて4点目を奪う。
4点のリードを許した7分強を残したタイミングで町田はタイムアウトを取得。その後は野村啓介選手がゴレイロのユニフォームを着て、パワープレーを開始する。しかし横浜は、田村佳翔選手がパワープレー返しを決めてリードを5点に。最終盤、町田は野村選手が意地の得点を奪って一矢を報いるものの、それ以上は得点できずタイムアップとなった。
得点差ほど力の差はないものの、ここまでの積み上げをきちんと発揮できた横浜が勝利し、幸先良くシーズンのスタートを切ることとなった。
ペスカドーラ町田 試合後会見
ーー試合の総括
甲斐 修侍監督 お疲れ様です。結果として負けてしまいましたが、リーグ戦なので切り替えて、またトレーニングして次の(ボルクバレット)北九州戦に挑みたいと思います。
伊藤 圭汰選手 前半の3失点が試合を難しくしてしまったという感想です。1点2点なら逆転できたゲームかなと思うので、失点をどれだけ減らせるかが僕らの課題です。得点にももっとこだわってやっていきたいと思います。
ーー今日の試合はどのような狙いを持って臨んだのか教えてください
甲斐 去年の開幕戦は、3-7で大敗していますので、今日までに去年の話もたくさんしました。準備期間は名古屋(オーシャンズ)と2試合、(ボアルース)長野と1試合、それとカップ戦の2試合とやってきたんですけど、今シーズンは、先ほど話があったような去年からの積み上げの部分も含めて、各ポジションの選手が去年の自分たちを上回るパフォーマンスを出すことを目標に、練習からも意識してやってきました。練習のなかでもそういう局面を生み出す機会が増えてきていたので、正直僕は今日のゲームを個人的にも楽しみにして挑んだんですけど、結果こういう形になってしまったので。今は終わったばかりで、ゲームを改めて見てないので、正確なことは細かくわからないですけど、どんなにいい準備をしても、どんなに気持ちを入れたつもりでいても、ゲームをコントロールできない時間帯であったり、失点を生んでしまうことは、それはもう不運ということでは片付けられない、必ず原因があるものです。次節以降、そういったアンラッキーな部分も含めて管理できるような戦いをしっかりやれるように、緊張感を持ってまた練習から取り組んでいきたいなと思います。
ーー昨年いたメンバーが全員残って積み上げができていく中で、対策も取られやすくなると思うが、昨シーズン作った土台についてと、どんなことを積み上げていこうと考えているか教えてください
甲斐 メンバーが変わってない強みもありますし、去年の構成じゃないパターンで戦う形もありますので、そういう意味ではメリット・デメリットがあると思います。今日の試合は、コンディションが悪いとか、自分たちの状態や内容がめちゃくちゃ悪いというよりは、本当に難しい試合でした。決められる可能性があるところを決められないというのは、去年から引き続きの課題ですし、相手のリアクションに対しての対応、連続性というところが前半の失点につながることが多かったです。そういう意味で言いますと、自分たちの状態は決して悪くない、なおかつ、カップ戦を挟んで、今日のゲームにおいてのコンディションも決して悪くなかったので、そんな中、ゲームをコントロールできなかったというところは、非常に悔やまれるところです。
ただそこは、敗戦した今日のゲームもそうですし、去年も同じ話をしたんですけど、基本的に勝ち負けがつく世界なので、負けたことはもちろん受け止めますけど、今後の試合でまた修正していけるんじゃないかなと思っています。難しいゲームでしたけど、選手たちがしっかり練習から取り組んで、次以降のゲームで間違いなくいいゲームをしてくれる期待感はあります。そこは引き続きやっていきたいなと思います。
伊藤 去年からの積み上げという部分では、監督のやりたいフットサルをできていると思います。去年も粘り強く戦って勝つ試合が多かったですけど、球際の部分とかゴール前で身体を張るところとかはもっともっとやっていかないとこのリーグでは戦えないと思います。去年は攻撃面で得点が少なかったので、今シーズンは特に攻撃のバリエーションだったり、もっと工夫してシーズンを通して戦っていきたいなと思います。
ーーゴレイロは土岡優晟選手が先発して、後半からジオヴァンニ選手に交代しましたが、その理由と交代時に土岡選手にかけた言葉などあれば教えてください
甲斐 土岡は、去年、たくさん試合に出ているわけではないですが、ジオヴァンニがケガで出られないカップ戦も含めて練習からすごく安定感があり、頼れる部分も増えてきていたので、ジオヴァンニもある程度復帰していましたが、今日は土岡を起用しました。しかし、前半もめちゃくちゃ悪かったわけではないですが、本人もまだ若いですし、開幕戦の雰囲気だったり、そういうところでここまでやれていた安定感という意味ではちょっと浮き足立っているところが局面的にはいくつかあったので、それも今後の課題として成長してくれると思いますが、交代しました。話は特にしてないです。
ジオヴァンニに代えた理由としては、ある程度優位性を持った時間を作って追い上げないといけない点差だったので。ジオヴァンニを使って、残り8分くらいまではちょっと得点を意識する時間になるだろうという想定でやりました。残りの8分からは純粋なパワープレーでいくしかないというところでゲームを進めました。
ーー今日も1500人以上の観客が入り、声出し応援も解禁になって素晴らしい雰囲気でしたが、改めて町田のアリーナの雰囲気についての思いを教えてください
甲斐 観客がいない時代からやっていた僕としては、町田にお世話になることになって、たくさんの方に足を運んでもらえて、プレーヤーだった時期もすごく力をもらいました。自分が引退してからも、たくさんの試合で、勝っても負けても応援に来てくださるサポーターの方を含めてたくさんの人が足を運んでくださったことが、選手たちにも、ここでやる試合だけじゃなくてですね、普段の練習、普段の生活から力をいただいて、打ち込める活力になったと思います。本当に感謝の気持ちしかないですけど、選手であったり、僕らスタッフ陣としては、これだけ多くの観客に来ていただいているなかで、結果を出せなかったことが一番悔しいところではあります。ですが、最初に話した通り、勝負事なので、どんなにいいゲームをしても負けることはあります。ただ見に来てくださった方に、負けたゲームがあってもまた見に来たいなと思ってもらえるような、選手たちのスピリットであったり、クラブのこういう取り組みであったり、というものを今後も継続的に伝えていけるクラブでありたいと思います。
伊藤 僕が町田に来たときから好きなアリーナです。観客の数も多いですし、応援されているという実感を持ちながらプレーできるのは本当に幸せなことだと思います。コロナ禍で無観客試合を経験しましたけど、こんなにたくさんの観客がいるアリーナで試合ができるということは改めて幸せなことだと思っているので、結果で恩返ししないといけないですし、もっと活躍しないといけないです。日本一のアリーナだと思ってます。
ーー力に差はないと思うが、結果的に得点差がついたというところで、ピッチの中で何か差を感じることはありましたか?
伊藤 そこまでレベルの差を感じた試合ではないんですけど、ゴール前で僕らは守りきれなかったゲームだし、相手は僕らのシュートを身体を張って守っていて、それが得点差になった試合だったかなと思います。点を取られないようにもっと守らないといけないゲームでした。それが前半の3失点に繋がって、後半の2点に関しては得点を取りに行ってのカウンターだったり、パワープレー返しの失点だったりなので、前半の3失点を守れるようにしていかないといけないと思っています。
Y.S.C.C.横浜 試合後会見
ーー試合の総括
鳥丸 太作監督 開幕戦というのは、シーズンのなかですごく大事なポイントだと思います。その大事な試合で勝利できたことについて、すごくうれしく思っているのとホッとしているというのと、ちょっと言い方が合っているかはわからないですけど、すごく安心したところはあります。やっぱり開幕戦は、今まで取り組んできたことが試されるっていうのもありますし、町田さんは僕らにとって強敵で、昨シーズンの戦績を見ても2敗している相手だったので、昨シーズンを越えるという意味でもすごく大事な試合でした。その試合に勝利できて単純にみんなの力をまた確信できた、そういう試合になったと思います。
堤 優太選手 試合は5-1という結果で、シーズン始まってからオーシャンカップで負けて、その後の期間、僕らが準備してきたものを全部出せたことがこの結果につながったと思います。選手全員で頑張ったことがこの結果につながったので、間違いなく自信が持てる試合になりました。開幕戦はより強い気持ちで臨みましたけど、次のホーム開幕戦を含めて3連勝を目標にしているので、頑張りたいなと思います。
ーー昨シーズン2敗している相手ということで、この試合に向けて、チームとしてどんな対策をされたのでしょうか?
鳥丸 町田戦に限らず、今シーズンの取り組みとして、あまり言いたくはないですけど、選手の中でディフェンスのタイプを自在に変えられるようにしました。キーパー攻撃もそうですし、セットプレーの中でも、そうです。Fリーグは、選手の特徴というのを晒したうえでの戦いになります。そのなかで相手が嫌がることは、こちらが何をするかわからないということ。また、こちらがタイムアウトを取って変えると相手も準備しやすいと思いますけど、試合の中で選手が自分たちの意思で変えられるので、どのタイミングで変わるかわからないよう工夫しています。
堤 僕らの戦術を見てもらうと、攻撃の部分がすごく特徴的で、練習では、ディフェンスより、攻撃のボール保持の部分だったりの練習に多く時間をかけています、今日は、1試合を通してボール保持の部分と、試合展開によっては割り切って、裏へボールを出すことが多くなったところもありますが、チーム全員で認識した部分を試合に出せたので、それが結果につながったのかなと思います。
ーー昨年は就任1年目というところで鳥丸監督のスタイルの土台を作って、今シーズンは積み重ねていくシーズンだと思うが、今季はどんなフットサルを見せたいと考えているか?
鳥丸 僕らのコンセプト、哲学というのは変わらないです。僕らのコンセプトには、ボールを持ちながら優位性を作っていくというのがあって、僕が考える、選手が楽しいフットサルには、定位置攻撃の中でボールを多く握ることでゲームの主導権を握るという、僕の中で主導権を握るというのは、攻撃の時間が長いということなので、そこのコンセプトは変わらないです。その中のアイデアというのは、この試合で出なかったものもありますし、今取り組んでいるものについては、まだ馴染めてないものもある。特に今シーズンはプレシーズンの期間が短かったので、そういう部分もあって、なかなか出づらいところもあると思いますけど、試合の中でも取り組んでいるものが出た場面が見えた部分もあって、伸び代というのは感じながらやっています。
なので、昨シーズンのベースに乗っかるようなアイデアというのを選手が今、積み上げていって、それを体現していくっていうところが目指すところです。もちろんまだまだ伝えたいことはありますけど、ただ先に先に、アイデアばかり伝えても積み上げというのは出てこないと思います。ですが、そういったアイデアのバリエーションというのは見ていただきたいところです。もちろん僕がベースを作っていくなかで、選手が自発的にコミュニケーションをとってやっていくとか、そういうことも含めて、僕らも選手と一緒に成長していくクラブを目指していきたい。それが今シーズン、2年目になったY.S.C.C.横浜の見ていただきたい部分です。
ーー終盤にピンチになったときに堤選手の素晴らしい守備がありましたが、振り返ってください
堤 勝ちたい気持ちが出たというのが一番正直な感想です。ディフェンスについては、チーム全員で守ると決めていますし、全日本選手権で結果につながったのもディフェンスから攻撃への移行が良かった部分があると思います。僕も攻撃が好きですけど、チーム全員で戦うということは、ディフェンスもしなきゃいけないことだと思うので、チーム全員でああいうプレーを増やしていければ、自ずと勝利につながっていくのかなと思います。非常に良かったかなと思います。
ーー長野から移籍してきた田村佳翔選手がいい影響を与えているように見えましたが、監督の目にはどのように映っていますか?
鳥丸 佳翔ですか(笑)。
堤 (笑)めちゃくちゃいいキャラしてますよ。
鳥丸 キャラがいいですね、堤選手と1対1の対決をして、堤選手がまぁ、なんというか、いじるというか。後輩からもいじられるキャラで。わかりやすく声を出して自分の気持ちを表したりだとか。単純に味方の選手のすごいところをすごいと言える性格なので、今の僕らのグループにすごくあっているんじゃないかなと思っています。昨シーズン、彼が所属していた長野とはフットサルの内容は違うと思うんですけど、そういうところを彼は楽しんでいますし、彼が楽しんでいるところを僕らも見て、僕らのグループも明るくなりますし。いい影響しかないなと思っています。
ーーキャプテンでもあり、攻撃に加わるパワープレーも含めてゴレイロの矢澤大夢選手が存在感を示していたが?
鳥丸 見ていただいた通り、彼は頼りになる存在です。何かこう、たまに不思議なことも言うんですけど。みんなから怖がられるようなこともないですし、みんなから頼られて、少しいじられるような存在。年上の選手がそうやっていじられるというのは、すごくいいのかなと思っていますし、それを受け入れる器もあると思います。プレーはね、見ていただいた通り、いいパフォーマンスを出して、何度もチームを救って。でもそのなかで、井戸孔晟や稲川琢馬という、年下の選手を成長させるという意味でも、たとえば自分が一歩引いて後輩を立てるということもやっていってもらえる、そういう存在ですね。
ーー今シーズン、目指すところは?
堤 優勝を目指すのはもちろんですけど、開幕戦を勝利して、次の試合がすごく大事だと僕は思っています。そこを勝つか負けるかで今シーズンの流れというか、僕らの自信は間違いなく変わってくると思うので、この1週間、町田戦でできたことできなかったことと向き合って、湘南(ベルマーレ)戦に向けていい準備をしたいと思います。個人的には15ゴール以上とって、チームに欠かせない存在になって、勝てるチームを作っていきたいと思っているので、そこを見ていただければいいかなと思います。