試合

引退を表明した町田・金山選手がファーストプレーでゴール、勝点3に貢献

~ペスカドーラ町田 VS シュライカー大阪~

1月15日(日)、ペスカドーラ町田はホームアリーナ、町田市立総合体育館にシュライカー大阪を迎えて、2023年初戦となるFリーグディビジョン1第19節を戦った。

終盤に入ったリーグは、各チームそれぞれの立ち位置が見えてくる頃。ホームの町田は、プレーオフ出場に向けた戦いのど真ん中でしのぎを削る。18節終了時点で3位の立川アスレティックFCと勝点は33で並び、得失点差で4位につける状況。1戦も落とせない緊張感の中での戦いが続く。アウェイの大阪は、18節終了時で10位。今シーズンはF1残留を意識せざるを得ない順位に甘んじているが、チーム力とは比例しない。上位の町田にとっても油断なく戦うべき相手だ。

またこの時期は、今シーズン限りで引退する選手たちが最後の勇姿をサポーターに見てもらえるよう、その動向を一足早くリリースするタイミングとも重なる。町田は、Fリーグの創成期から中心選手として活躍した金山友紀選手が、大阪はチームの精神的な支柱でもある相井忍選手が引退を表明。2人ともこの試合のメンバーとして登録された。

試合は、開始早々にアウェイの大阪が先制。ピヴォの加藤翼選手が起点となって攻撃を形作り、最後のこぼれ球に再び加藤翼選手が反応して得点を決めた。しかし、町田はあわてることなく強度の高いプレスを仕掛け、守備から自分たちのリズムを作り出す。5分にフリーキックを獲得すると、金山選手がピッチに。ヴィニシウス選手のキックに合わせてゴール前にするするっと移動するとワンタッチでゴールにボールを流し込み、同点とした。さらに町田は終盤に、右サイドから山中翔斗選手がミドルシュートを決め、逆転。2-1で折り返した。

2ndピリオド、大阪はセット構成に手を加えて対応。守備を意識しつつ、まずは同点を狙う姿勢を見せる。スコアが動かないまま時間が経過する中、キックインから清水寛治選手が得点、同点とした。しかし町田は、時間をおかずにチャンスを作り、荒川勇気選手がディフェンスを振り切って得点。再びリードを奪った。

勝点を1でも積みたい大阪は、パワープレーを開始。タイムアウトでは町田のアグレッシブな守備への対応を共有して攻め込む。最後まで際どいシーンを何度か作り出すが、町田のゴレイロ、ジオヴァンニ選手がしっかり守りきり、得点を許すことなくタイムアップとなった。

この試合で勝点3を積んだ町田は、次節がホーム最終戦。しかも相手は、勝点で並ぶ立川。プレーオフ出場に向けた直接対決となっている。今日の勝利を次節につなげて3位浮上を狙う。

ペスカドーラ町田 試合後会見


甲斐修侍監督
ーー試合の総括をお願いします
甲斐
「今日は年始の一番最初のゲームということで、年内の流れを1回リセットしているので、コンディション調整だったりというところは難しいものがあったんですけど、ゲームに入ったら、そこは特に問題ありませんでしたが、その中で立ち上がりに、スカウティングで話していた内容で、全く同じ内容で決められてしまったので、そこはちょっと残念なスタートになりました。そのあとは選手たちが集中を切らさずに1試合を通して我慢強く戦ってくれたので、得点については、毎回言ってますけど、得点がもっとはかどれば、もう少し楽なゲームになりますけど、今シーズンは、基本的にはこういうゲームばかりなので、それをみんなで共有して、言い聞かせて、最後まで我慢してゲームを続けるというところで、結果勝てたのは、非常に大きかったなと思います」

伊藤圭汰選手
伊藤「立ち上がりに失点してしまって、また難しいゲームになってしまったんですけど、落ち着いて1点ずつ返して、みんながすごくハードワークして、すごく価値のある勝利だったかなと思います」

ーー先制されてもチームが落ち着いて試合を進められているように見えますが、監督はどのように捉えていますか?
甲斐「事前に話していた形、選手の特徴というところで起きた失点でありましたけど、早い時間というのもありましたし、そこまでひきずるような内容ではないなと思ったので、そこは僕自身も特に慌てることはなかったですし、選手たちもあの失点の、1失点で影響するようなメンタル状態になってなかったので、そこはもう本当にやるべきことをコツコツできたことがこの結果につながったかなと思っています」

ーー1点差でも勝利できればいいという采配に見えますが、得失点差などはあまり重要視してないですか?
甲斐「今現状で、得失点を考えて、1点でも多く取りに行くということは、正直考えていません。勝点で自力で、プレーオフに行くことが目標です。もちろんそういう中で勝点で並んでしまう可能性はありますけど、でも今シーズンは正直、得失点差のところは埋められる数字じゃないと思っているので、とにかくまずは勝点で3位を目指す、2位を目指すというところです。こういう1点差のゲームをたくさんしてきているチームなので、ここから急に5点差6点差のゲームができるだろうとは考えていません。とにかく勝点3というところだけをこだわって、正直、勝点1も目指しません。勝点3しか目指さないというのが今シーズンの目標です」

ーー29番の山中翔斗選手の活躍が印象に残ったが、監督から見た評価は?
甲斐「試合が終わってすぐに本人を呼んで話したんですけど、全然満足いってないです。というかもっと前半のスタートから、翔斗が持っているものを出してほしかったので、本当に正直前半はまったく物足りなくて。最初からどんどん前を意識して、仕掛ける回数をという話をしていた中で、2/3くらいの時間が経つところまではあまりそういう姿が見られませんでした。前半の終わり頃、ようやく持ち味を出し始めましたけど。後半はようやく自分の持ち味を出し始めたんですけど、前半の入りのところでは本人にも話しましたけど、もっとできるだろうと思っています」

ーー山中選手のように若いうちから活躍できる選手が下部組織からどんどん出てきていますが、下部組織の強化はどのようにしていますか?
甲斐「ユース世代、ジュニアユース世代で、上につながる経験をさせてあげるということももちろん大事ですが、何より上に上がったときにどういうマインドでいるか、どういう選手を目指すか、どういうスタイルでいないといけないかというところは、まだ身体能力が届いていないときから、重ねてたくさん話はするようにしています。技術的なところや、選手が持っているタレントは、そこは本当に本人たちが日々練習の中で得たものなので、我々クラブの育成として指導のスタッフが常にお話ししている内容としては、そういうマインドのところですね」

ーー引退を表明された金山選手はどういう存在ですか?
伊藤「そうですね、僕がトップチームに上がったときから面倒を見てくれていて、プレーのことに関してもそうですし、いろいろなことを教えてもらった先輩です。今日の試合のような大事な場面で、点を取るところも本当に尊敬しかないですし、あの年齢であそこまで走るプレースタイルは、本当にすごいとしか言葉が出てこないです。そんな友紀さんと一緒に、長くはないですけど、プレーできたことは僕にとって財産でもあります。そういう意味では、本当にチームにとっても重要な選手でしたし、次は僕がそういう立場の選手になっていかなければいけないと思うので、友紀さんのようになれるように、プレースタイルは違いますけど、いろんな場面で引っ張っていけるように頑張っていきたいと思います」

ーー今日は2,000人近くファン・サポーターが入って、次節のホーム最終戦では立川アスレティックFCと対戦、金山選手の引退もあります。いろいろな要素を含めて、どういった試合を見せたいか、ファン・サポーターの方にメッセージをお願いします
甲斐
今シーズンは本当に多くのサポーターの方にホームゲームを見に来ていただいて、コロナ禍ではありますけど、ここ2〜3年ではないようなホームの空気感を、今日の試合もそうですし、たくさんの人が作ってくださったので、来週のホーム最終節ではさらに、もう座るところがないというぐらい、皆さんに来ていただきたいです。

金山友紀は、年齢こそ45歳ですけど、ああやってワンチャンスで、本当に数秒で結果を出せる選手なので、引退するとは言ってますけど、今Fリーグにいる選手たちの中にはいない、そういう仕事ができる姿をぜひ、見に来ていただきたいなと思います。

立川に対しては、オーシャンカップでも負けてますし、(リーグ戦)1巡目でも負けて、この次負けたら3連敗になるので、同じ相手に3回負けるなんていうことは、絶対にしたくないという話は、さっきもチーム全員にしました。プレーオフのこともありますし、直接対決というところもありますし、2回負けてるというところも含めて、我々に取っては絶対に負けられない特別なゲームで、何があっても勝ち切る、勝ちに行くというところを、チーム、スタッフ全員で体現したいと思うので、ぜひ会場に足を運んでいただいて、過去最高の観客動員数になるよう、皆さんのお力をお借りしたい。我々は、勝利をプレゼントできるよう頑張りたいと思います。よろしくお願いします」

伊藤「多くのお客さんの中でプレーをするのは、プレーヤーとしてはやっぱりすごく気持ちの入る試合になります。立川にはオーシャンカップでも負けて、リーグでも負けて、ここで負けたら3連敗になってしまうので、プレーオフに行くためにも勝たなければいけないですし、多くのお客さんに勝利を届けないといけないですし、友紀さんの最後のホームゲームになるので、それもやっぱり勝って終わらせてあげたいというのもあるので、本当にみんなで勝ちたいなと思います」

シュライカー大阪 試合後会見


永井義文監督
ーー試合の総括をお願いします
永井
町田さんは、ホームゲームの空気を含めて、いいゲームをやられたなという印象です。自分たちは、先制点を取って、いい流れではありましたけど、その後にすぐ失点をするですとか、前半の終盤に失点をするですとか、2点目を決めた後すぐに失点をするですとか、チャンスまでは作りますけど、最後のところで決めきれないとか、試合の要所で、仕留める守るというところが、欠けていたかなという印象です。

ただ、欠けているということは、そこまでのプロセスという部分は作れていると思うので、すべてがダメだったわけではない。自分たちの評価するべきところはしっかり前向きに評価をして、次に向かいたいなという、そういう印象を持ったゲームでした」

田村友貴選手
田村「すごくいい入りをして、自分たちのペースで試合を運ぶことができたんですけど、相手のプレスの強度の速さに、ちょっと受け身になってしまった部分があり、そこでファウルを重ねて、難しい展開になってしまいました。後半のところで自分たちが追いついて、その後すぐに失点してしまったので、そこでもう少し2-2の状況を続けられれば、最後のパワープレーでもう少しチャンスが広がったかなと思います」

ーー今日はメンバーが10人ですが、どうしてですか?
永井「インフルエンザだったり、体調不良です」

ーー1stピリオドのタイムアウトでは、どのような指示を出しましたか?
永井「5ファウルという状況の、前半の終わらせ方ということを少し話しました」

ーーパワープレーを始めて、その後にタイムアウトを取ったのは、先に相手の陣形を見てというところだと思いますが、そこで変えたところと、相手のタイムアウト後に最後仕留めに行ったところで変えた部分というのを教えてください
永井
「相手の配置はスカウティングしていたので、配置というよりも、彼らの高さ、ファーストプレスの高さというところに対して、自分たちがどう対応していくかということについて、1つ目のタイムアウトでは話をして、2つ目は相手チームのタイムアウトでしたけど、相手のプレスに対して少し慣れも出てきているので、シンプルにシュートに、残り時間も少なかったですし、残りシンプルにシュートに行けるものを彼らに提示をしました。その中ではチャンスは作ってくれたかなと思っています」

ーー2ndピリオドは、セット構成をだいぶ変えていたが、その狙いを教えてください
永井
「当初、自分たちが準備をしてきたセットのところで、先ほど田村選手が言ったように、相手のプレスに対して苦しんでいた部分があるので、少しモビリティのある選手を入れて、速いプレスに対して素早いボールの循環と、人の循環が起こるようにという狙いを持って、セット構成を変更しました。それと、(フィールドプレーヤーが)9人という状態の中で、疲れている選手もいますし、9人の中でも体調不良から戻ってきてまだコンディションが完全ではない選手もいるので、選手たちのフィジカル面を考慮してというところですね。フィジカル面と、相手のプレスに対しての対応というところがセットチェンジの要因です」

ーー2ndピリオドは、攻撃にも積極的に参加していましたが、意識的な部分はありましたか?
田村
「2-1の状況が長く続いたので、監督と選手とベンチで話し合って、もう少し攻撃参加の時間を増やして、リスクをかけて取りに行こうということで自分も積極的に前の方にポジショニングを取りました」

ーー2-1の状況が長く続いて、同点、すぐに再びリードされましたが、パワープレーを始めるタイミングの判断は?
永井
「2-2の得点が入る前から、パワープレーの準備をしていました。2-1の状況でパワープレーをしてという準備でしたけど、やはり疲れもありましたので自分たちのフィジカル面を考慮したのと、そこで点が入ったので、2-2の状況を少し我慢して作ろうと。リスクをかけて、というよりは4-4をしてから、相手のベンチも見て、セット構成も見て、彼らが仕掛けてくるようでしたら、ボールキープのパワープレーをするとか。パワープレーをするかしないかというのを決断するところで失点した感じですね。だから結局パワープレーはしたんですけど、4-4の中で彼らがどう出てくるのかというのを見極めるというところです」

ーーメンバーが限られている中でパワープレーもいつもとは違うメンバーだったと思いますが、残り1分のところでメンバーを代えても監督の意図通りの動きをしていたと思いますが、パワープレーについては、どのくらい時間をかけてトレーニングをしていますか?
永井
1週間のトレーニングのプログラムの中で、パワープレーの攻撃のパートがないということはありません。必ず自分たちは、パワープレーのパートも用意しますし、丸1日の一つのトレーニングをパワープレーに割く日もあります。そこに対しては、プロセスの部分では自信を持ってはいるんですけど、やはり最後のところ、決めきれない部分があるので、そこも課題かなと思っています。

1週間の中で、1時間使うこともあれば、今回ですと30分くらいですね。もともと自分たちが持っているもの、積み上げてきたものがあるので、彼らに相手の配置を話して、自分たちのキーワードがわかれば、何を狙えばいいかというのは彼らはわかっていると思います。今週に関しては、トレーニングにたくさん時間をかけたわけではないですけど、いいパフォーマンスをしてくれたと思います」

ーー相井選手が引退を表明されて、プレーオフ出場は難しいが、全日本選手権もあるので、リーグ残り3試合と全日本選手権をどう戦うか、相井選手へのメッセージも含めて教えてください
田村
「長く大阪の攻撃を引っ張ってくれている選手でもありますし、チームでも最年長として、チームのために身体を張ってキープしたり、ゴールを取ったり、一番プロ意識が高くて、結果にこだわる選手なので、本当に若手選手とかは見習っていました。特に最後の1年は、練習から姿勢で見せてくれていたと思います。残り3試合、忍さんのためだけじゃないですけど、気持ちよく送り出せるように、しっかり勝って、全日本選手権は優勝目指して頑張っていきたいです」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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