~フウガドールすみだ VS 湘南ベルマーレ~
2022-2023シーズンも終盤戦を迎えたFリーグディヴィジョン1。年が開けて最初の試合となる第19節が1月13日(金)から15日(日)にかけて開催された。
フライデーナイトの開催となったのは、フウガドールすみだがホームアリーナ、墨田区総合体育館に湘南ベルマーレを迎えての1戦。両チームともに数字上はプレーオフ進出の可能性が残る。しかもホームのすみだは前節、すでにリーグ1位でプレーオフ進出を決めている名古屋オーシャンズにアウェイで勝利。この勢いを今節につなげて、勝点5差で5位に着ける湘南との差を詰めることを狙う。一方の湘南は、18節にリーグ戦2位のバルドラール浦安にアウェイで勝利したものの、未消化だった9節名古屋戦を年末に戦い、最後の最後で逆転負けを喫している。混戦模様のプレーオフ進出争いに向けて、こちらもまた負けられない思いは強い。
すみだのキックオフで始まった試合は、高い位置からプレスをかけてリズムを作り出そうと仕掛ける湘南と、やや引き気味の位置からの守備でスペースを消し、奪ったボールを攻撃につなげようとするすみだという構図。得点王争いに絡むすみだのピヴォ、清水和也選手と、湘南のフィクソ、内村俊太選手の日本代表同士のマッチアップも見どころだ。
先に大きなチャンスを迎えたのは、湘南。3分に林田フェリペ良孝選手が左サイドを突破し、中央の鍛代元気選手へパス、ワンタッチで合わせたシュートがポストを叩いた。しかし、このシーンが象徴するように湘南はチャンスを決めきれず、枠内シュートはすみだのゴレイロ岸将太選手がセーブするシーンが目立つ。すみだもフィニッシュまで持ち込むものの、決定的なシーンは湘南のゴレイロ、フィウーザ選手が立ちはだかり、1stピリオドはスコアレスのまま終了した。
2ndピリオド、お互いに集中した守備が際立つ試合のスコアを先に動かしたのは、ホームのすみだ。湘南がゴール前で迎えたビッグチャンスをゴレイロが防いだところからカウンターで素早くゴール前へ。清水和也選手が逆サイドへ走り込んだ中田秀人選手へパス、中田選手はそのままゴールに流し込んだ。さらに1分経たない間に、キックインからのシュートのこぼれを清水和也選手が拾ってシュートに持ち込み、2-0とリードを広げた。
ビハインドを負った湘南は、ゴレイロのフィウーザ選手も攻撃に加わり、前掛かりに。スコアを動かせないまま時間が経過すると、3分強を残したところでゴレイロを中澤航選手に交代、中澤選手が加わる形でパワープレーをスタートする。ここからロドリゴ選手が技ありのシュートを決めて1点差に迫るものの、それ以上は得点できずにタイムアップを迎えた。湘南は、プレーオフ進出に向けて手痛い敗戦となった。
この試合の前にすみだの荻窪孝監督と、この試合でキャプテンを務めた岡村康平選手が、それぞれ退任と卒業を発表。湘南を古巣とする二人にとって思い出に残る1勝となった。
フウガドールすみだ 試合後会見
荻窪孝監督
ーー試合の総括をお願いします
荻窪「まず平日の金曜日にもかかわらず、それでもたくさんの方が駆けつけてくれて、自分たちはパワーをもらって戦うことができました。内容も岸を中心に最小限の失点で、自分たちの理想とする展開で勝利することができたので、本当によかったです。ありがとうございました」
岡村康平選手
岡村「本日、急遽キャプテンを務めました、岡村です。会場入りしたくらいに言われたので、全然ノープランだったんですけど、自分がキャプテンをやる意味もわかってまして。ベルマーレは古巣で、強いですし、そこで、止めるというところを荻窪監督に言われて。試合展開として自分が出場する時間が少ないのはわかっていましたし、その中で自分なりですけど、ベルマーレの猛攻に対して、激しく守備を、みんなで頑張って、できたなと思います。先ほど(監督が)岸を中心にと言ってましたけど、本当にキーパーが最後、あれだけ止めてくれて、ディフェンスのみんなも、身体を張ってくれたおかげで、ゲームが締まったかなと思います。
それでも2点取って最高の流れの中でも、ベルマーレの底力っていうのは強く、本当にいつ同点、逆転されるかわからない中で、ベンチが総立ちになって一体になったことで、相手のすごくいいパワープレーの攻撃も防げたかなと思います。防げたといっても、いろんなピンチがあったので、運もあったのかなと。自分がキャプテンになって声を出すことで、ピッチ上の選手たち、会場を含めてですね、みんながこの試合の重みを感じてくれたかなと思いますし、自分は声を出すことで、チームを最後まで緊張感のある状態に持っていけたかなと思います。
そういう意味では、ピッチ上では大きな仕事はできなかったですけど、ベンチで大きな仕事、自分の中で、できたのかなと思います。本当に最高の試合をできたかなと、荻窪監督に感謝しています」
ーー岡村選手をキャプテンにした狙いを改めて教えてください?
荻窪「先ほど言っていた、古巣というのもありますし、本当に練習から影で、チームを支えてくれていまして、そういうのを含めて、キャプテンみたいな仕事を本当にやってくれていたので、今日急遽サプライズでお願いしました。それでもちゃんと役割をこなしてくれるのはわかっていたので、本当に素晴らしかったと思います。あと、(得点の)チャンスがあったんで、決めてくれれば最高だったんですけど、そこは持ってないなというところです」
ーー湘南に対して理想的な勝利だったと思いますが、改めてプランの狙いを教えてください
荻窪「湘南がロングボールだとか、ドランジションを狙ってくるのはわかっていましたし、自分たちも前回(対戦)もチャンスはあっても決めきれなかったところがあったので、後半に入る前にもトランジションで決めないと絶対に勝てないぞということは言いました。そこでしっかり清水から中田がゴールを決めてくれたのは大きかったと思います」
ーー退任の理由と発表したタイミング、この試合に臨むに当たっての気持ちを教えてください
荻窪「退任のところは、正直、須賀(雄大フウガドールすみだ前監督、現フットサル日本代表 コーチ、フットサル女子日本代表監督 )が辞めたタイミングでは、いつクラブを去るかというのは考えていたんですけど。夏くらいには、フロントと話して、今シーズンで辞めるというのは言っていました。ホームページにも出していますけど、僕は今年で10年目ということで、次にチャレンジする、したいという気持ちもあったり、いろんなタイミングが重なったということで。あとはやっぱり早めにリリースすることで、いろんな人にお世話になったので、それを知って会場に来てくれた人もいましたし、そういうふうに恩返しというか、感謝を伝える時間をなるべく取りたかったというのもあって、早めにリリースをしてくださいとお願いして、ていうのが経緯です」
ーー今日は攻撃がうまくハマったと思いますが、内村選手と清水和也選手がマッチアップして、前回はそれでやられた印象がありましたが、どう対応したのか、どんな指示を出されましたか?
荻窪「多分前回あれだけやられて、和也も悔しい思いはしていたと思うし、セットは当てながらという感じで戦いました。彼もしっかりこぼれに詰めてゴールという結果を残してくれましたし、ピヴォとして起点も多く作ってくれていたのも良かったと思います」
ーーコイントスのときにフィウーザ選手といい雰囲気で話をしていたが、どんな話を?
岡村「フィウーザは、日本語をあまり喋れないんで、だから『元気?』ってそんな感じだったんですけど、彼とも2シーズンかな、毎日一緒に練習した仲だったので、『今日は頑張って、楽しもうね』とか言ってました。あとはコイントス、フィウーザはマイボールがいいって言っていたので、俺はどうぞどうぞって。じゃあベルマーレは青ね、僕らは黄色ね、ということで審判の方が『青になるようにしなきゃ』ってめちゃくちゃ緊張して(笑)。で、パンってやったら黄色で僕になっちゃったんですけど。そういうくだらない話をしていました」
ーーいい雰囲気でした
岡村「楽しかったです」
ーーそれぞれ退任と引退を発表された後の試合が湘南戦ということで、古巣湘南への思いを教えてください
荻窪「僕も本当にお世話になったクラブで、教え子もいますし、一緒に戦った伊久間さんだったり、阿久津さん(湘南ベルマーレリクルートダイレクター)だったり、今日はいないですけど、奥村敬人さん(湘南ベルマーレ前監督)だったり、本当にお世話になった方々がいるクラブですし、仕事も一緒にしていたので、第二の故郷じゃないですけど、本当に強い思い入れがあるクラブです。最後、僕と岡村にお疲れ様みたいなのを出していただいて、ちょっと泣きそうになったんですけど、(岡村選手:泣いてましたよ)40過ぎるとちょっと涙もろくなっているんで、うれしかったですよ。本当にこれまで、いろんな経験を湘南ベルマーレでさせてもらえましたし、感謝しかないです。
ただ、フットサル界からいなくなるわけではないので、また対戦相手とかになるかもしれないですし、フットサル界を盛り上げていくっていうところで切磋琢磨していけたらと思っています。サポーターの方々には、感謝を伝えたいです。ありがとうございます」
岡村「正直、湘南で始めて、湘南で終わるというのは、僕の中で決めていました。それが湘南を出るきっかけがありまして、フウガにきて、今は比較できないくらい両方とも好きになったので、今日は本当に最高の場だったというか、全部ホームという感じで僕自身はやらしてもらいました」
ーー残る3試合のうち2試合ホームということで、残りのリーグ戦に向けてメッセージを
荻窪「まだ、プレーオフの可能性もあると思うし、最後まで諦めずに残り3試合戦っていきますので、今日のような雰囲気を作っていただけたら、選手たちもパワーをもらえます。最高の雰囲気で戦って、絶対に勝ちたいと思いますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします」
岡村「残り3試合のうちのアウェイも、横浜だと関東圏ということで、僕個人としては少しでも多くの方に見ていただきたいというのがあります。今いる中学生、高校生、サテライトの子たちとか、小学生の子たちとか、そういう子たちに、この3試合に向けてピッチ内外でどれだけ僕がやっているかとか、それによってチームがどうなっているかとか、見ていただいて。この先、フウガというチームがつながっていけるような3試合に、ファン・サポーターの方はおぎさんのいう通り、当然見ていただきたいですけど、やっぱり未来を作るのは子どもたちだと思うので、その子たちにも向けて、その姿を全うしていきたいなと思います。
特に2月5日(最終節)の試合というのは大事だと思うので、キャプテン巻いちゃおうかな? もうないかな?(笑)(荻窪監督:ないです)はい、ないです(笑)。今日だけだったんで、キャプテンじゃない仕事を全うして、スタンドの上からか、ピッチからかわからないですけど、がんばります!ありがとうございます」
湘南ベルマーレ 試合後会見
伊久間洋輔監督
ーー試合の総括をお願いします
伊久間「アウェイまでたくさんの方に応援に来ていただいて、ありがとうございます。
試合は、フウガさんの勢いに飲まれたというのが第一印象です。うちの動きはあまり良くなかったんですけど、それでも前半はチャンスは作れていたと思います。それを決めきれなかったというところと、相手のカウンター攻撃の守備が難しかったのかなというところです。ただ、失点は2点だったので悲観するところはないと思いますし、攻撃のところをもうちょっとトレーニングする必要があるかなと思っています」
フィウーザ選手
フィウーザ「皆さん、こんばんは。今日の試合は難しいね。前半、チャンスはあったけど、ゴールを決めきれない、それ難しい。後半、フウガは2点を早く決めた。パワープレーでチャンスはあったけど、今日はゴールが難しかった。今日、寂しいね。だけど、プレーオフのチャンスはまだある。今日の試合は終わった。来週、名古屋オーシャンズに勝ちましょう」
ーー今日のパワープレーは、あの形で準備されていたのですか?
伊久間「そうですね、大量失点であれば、というところがありましたけど、2点だったので、キーパーを上げていって、ああいう形で。フウガのディフェンスも、多分サプライズ的に機能してなかったように思えますし、1点取れましたし。航(中澤)は、足元がありますし、フウガさんは速いですし、そこに対するというところで。フィウーザももちろん足元はあるんですけど、航の特性を生かすというところで、ああいう選択をしたということです」
ーーパワープレーに入るタイミングについては?
伊久間「最初はフィウーザをある程度上げながら、どこが空くかなというところを見て、相手が1-2-1なのか、2-2なのかというところを見ながら3分くらいになったと思うんですけど、それで航を右サイドの方とか。その前に点が取れていればというところでしたが、そういう形になったというところです」
ーー追ってる展開で、湘南の方が早くファウルを重ねていたので、そこは若干やりにくさはありましたか?
伊久間「そこは前半から割とファウルを取ったなーという、いつも取らないのに、取ったなーと(笑)。別に審判の方を悪くいうことはないですけど、いつもなら取らないものを取ったなと思います。ただ、相手も取りましたので、そこがどうのということはないですけど、ファウルが嵩んだことにより、確かに激しくいけなかったのかなというのはあります」
ーー総括で動きがあまり良くなかったと言っていたが、その要因はどのように考えていますか?
伊久間「想定ではフウガさん、もっとプレスに来るんじゃないかなというところがありました。ただ、シーズンの中でラインを下げてくるディフェンスをやっていたときもあって、フウガさんとしてはそのディフェンスが機能していたのかなと思います。前半の最初は割とピヴォに入って、奥まで行けてたんですけど、そこを修正されてしまってからはちょっとうちのスペースを作り出すことがなかなかできなかったというところですかね」
ーー裏に走っても前でカットされるようなシーンもあったが?
伊久間「そうですね、いつもであればそのもう1個裏に走れて、そこにボールが通ってチャンスを作り出すということができているところが、今回はそのスペースを消されてしまったので。そこが課題ではあるんですけど。フウガさんが素晴らしかったと思います」
ーー次節に向けての抱負をお願いします
伊久間「フィウーザも言いましたけど、プレーオフがなくなったわけではないので、1戦1戦、勝つしかないと思います。名古屋オーシャンズが相手ですけど、ホームですし、この間もアウェイであそこまで追い詰めているので、勝てない相手ではないと思っています。今日は負けてしまいましたけど、切り替えて、修正して、気持ちを立て直して勝利に向かっていきたいと思います」
フィウーザ「今日、寂しいね、難しいね。ごめんなさい。今日、もう一つ忘れた。フウガドールすみだ、ディフェンス素晴らしい、すごいディフェンス。今日は終わった、来週勝ちましょうね」
高橋広大選手
ーー試合を振り返っての全体的な感想を教えてください
高橋「自分たちの良さを出しきれずに終わった試合という印象です」
ーーその中で、よかったとこと、課題と感じたところを教えてください
高橋「チームとして良かったことは、負けたけど1失点差で終わったところ。個人として良かったところは、ないです。違いを出せなかった。相手のペースに合わせてしまったところが乗り切れなかった要因だと思います」
ーープレーオフに出場するためには、大事な試合だったと思いますが、高橋選手自身はどのような気持ちでこの試合に臨みましたか?
高橋「勝つこと以外、考えてなかったです」
ーー裏に走るスペースがなかったり、裏に走ると前でカットされるようなシーンがあったり、すみだは湘南対策を徹底していたように見えましたが、ピッチではどのように感じていましたか?選手同士で何か声を掛け合ったりはありましたか?
高橋「裏のスペースはあるときとないときがありましたが、相手のペースに合わせてしまったところが良くなかった。ピッチ内では、いつも通り話しながらやりましたけど、うまくいかなかったです」
ーー対策されても、そこを超えていくのが湘南というイメージがありますが、今日の試合で越えられなかった要因はどのように考えますか?
高橋「今回は攻撃に緩急を付けられなかったところ。サイドではめられて裏も出せない、ピヴォ当てもないと、自分たちの良さは出ないです」
ーー次節に向けて、この試合をどう活かすか教えてください
高橋「すみだと名古屋はまた違う守備なので、狙いは変わります。自分自身、見せ場はなかったですけど、次節は1対1で違いを見せたいと思います」
ーー次節は、前節最後の最後で逆転を許してしまった名古屋との対戦になります。前節は高橋選手自身が積極的にフィニッシュを担っていましたが、得点も含めて試合に向けての気持ちや意気込みを教えてください
高橋「いつも試合に臨む気持ちは変わらないです。前回対戦は2点取れたけど、続けて取る必要があります。また、残り3試合1つずつ勝つ必要があります。その中で、湘南らしいフットサルをしたい。勝つためにも湘南らしいフットサルをする必要があると思うので、また、トレーニングして、頑張ります」