試合

勝利への執念で勝った立川・府中が決勝へ

~立川・府中アスレティックFC VS バサジィ大分~

全日本フットサル選手権準決勝第2試合は立川・府中アスレティックFCとバサジィ大分の戦い。名古屋オーシャンズの勝利を見届けて始まった。

立川・府中は、ホームアリーナの関係で来季から名称やエンブレム、チームカラーなどが変わる。今大会が立川・府中として臨む最後の大会となることから優勝して、「立川・府中アスレティックFC」という名を大会優勝チームとして刻みたいという強い思いを持っている。対戦相手の大分は、4年間チームを率いた伊藤雅範監督の退任や、主力として戦ってきた選手の退団が発表されている。また、大分も名古屋と同様に、常に勝利を求められるクラブでもある。リーグ戦を4位で終えている今季は、何としてもこのタイトルを持ち帰りたいところだ。ただ大分は、フィールドプレーヤーの登録が8人とぴったり2セット分の人数。そういう意味では、より疲労が心配される。

どちらのチームが勝利への執念で勝るのか、その気持ちが勝敗を分けると予想される1戦は、開始30数秒で立川・府中の関尚登選手がミドルシュートを決めて先手を取った。

大分の攻撃を止めたあと、ゴレイロからのビルドアップを裏に抜けた関選手が左サイドから狙って先制。さらにその約2分後、ゴレイロからの長いパスを受けた新井裕生選手がゴール前に走り込んだ皆本晃選手に出して、そのままゴール。リードを広げた。

2点を追いかける大分は、早い時間にタイムアウトを取って選手の気持ちをリフレッシュし、自分たちのリズムを取り戻して攻勢をかけていく。お互いに際どいチャンスを作りながら得点に結びつけられずにいる中、次にスコアを動かしたのは大分。自陣から裏に出したボールを立川・府中の選手がクリアし、こぼれたところをパカット選手が拾ってシュートに持ち込み、ゴールを決めて1点差に詰め寄った。しかし、その1分後、立川・府中はコーナーキックからのサインプレーで完山徹一選手がゴール。相手にリズムを渡さない執念を見せた。

2ndピリオドは序盤は、お互いに自分たちの強みを生かした攻撃を仕掛け、主導権を奪い合う展開。徐々に大分が森村孝志選手を中心に攻撃の強度を高めていく。立川・府中は押し込まれながらも丁寧に守備を行い、体を張るが、森村選手が起点となった波状攻撃を受けて7分に失点。パカット選手のシュートは止めたものの、こぼれ球に反応した野口茅斗選手に決められた。乗っていく大分に対し、ここでもまたリズムを完全に渡さず、しぶとく食らいついていく立川・府中という構図。ところが大分は、攻勢を強める中でパカット選手が2枚目のイエローカードを受け、退場に。立川・府中は、この数的有利を活かして金澤空選手がゴールを決めて再びリードを広げた。その後、大分はパワープレーを行うが、得点を奪うことができず、タイムアップを迎えた。

試合の主導権は大分が握ったものの、立川・府中の勝利への執念が勝った試合となり、決勝への切符を手にすることとなった。

試合後会見


立川・府中アスレティックFC 比嘉リカルド監督
ーー試合の総括をお願いします
比嘉
「最初から相手のすごい攻撃に守備で対応して、その結果、自分たちの攻撃のリズムもできました。最後の相手のパワープレーのところもミスなく対応できていい試合だったと思います

ーー明日は、名古屋オーシャンズと対戦になりますが、今の気持ちを教えてください
比嘉
「切り替えないといけないですね。明日はリーグで優勝した強いチームとの対戦ですが、優勝したかったら相手を選んじゃいけないので、思い切りぶつかって勝ちに行く。優勝できるように、カップを挙げられるように頑張ります」

ーー連戦になるが、疲労などコンディションはいかがですか?
比嘉
「2回戦からずっと同じやり方をしていて、ミスも少ないし、本当にいいリズムができてます。明日の名古屋は強いけど、このままいければ優勝の可能性が高いと思います」

ーークワトロを中心にした戦い方だったと思いますが、手応えはどうだったのでしょうか?
比嘉
「僕はクワトロでスタートしても、ピヴォが居ても居なくても深さをとらないといけないと言っています。深さを取るのは相手のラインを引っ張るためで、1人前に走らないといけないんです。1人出たら、ピヴォを使っても使わなくても最終ラインの選手と最前線の選手の間を使えます。僕はクワトロ・ゼロから3-1のトランジションをよく使っていて、全部クワトロ・ゼロだけじゃないですし、全部3-1だけじゃないです。バリエーションを作らないと、相手のディフェンスがやりやすくなると思うので、だからずっとそれを狙ってチャンスを作りました。でも、今日は追いつかれなかったですけど、勝点3をしっかり自分たちのものにするためにも、もっと点を取らないといけないと思います」

完山徹一選手
ーー駒沢に来てから2試合続けて得点を決めていますが、昨日と今日のゴールを振り返ってください
完山「はい、リーグ戦が終わってからこの選手権までの1ヶ月半くらいの期間でシュートのところを少し、練習後に居残りで取り組んでいたので、そういった成果が出ているのかなと思います」

ーー試合とは関係ないですが、髪の色を黒にした理由を教えてください
完山「ちょっとまた違ったスタイルにしたいなと思っていて、カラーは結構いろんな色をやっていて、だいぶ傷んできていましたし、気分転換も兼ねて黒に戻すのもいいんじゃないかなと思ってやったんですけど、予想以上に周りが、カラーしている方が普通になっちゃっていて(笑)。本当はこれが普通なんですけど。自分でも久々に黒にして、ちょっと若返ったかなというか(笑)、そんな感じでした。話題にしてもらえたらうれしいです」

ーー明日の決勝ですが、オーシャンカップを取ったときと同じ名古屋との対戦になりますが、意気込みを教えてください
完山「そうですね、2015年のオーシャンカップ、今2022年で6年半前ですね、メンバーもあのときとはガラッと変わって僕と皆本と関とゴールキーパーの黒本くらいになってます。時系列的には、3年前の選手権、ここで名古屋とやってるんですが、6-0で負けたのかな。そっちの思いの方が強いですね。そのときは今のメンバー、酒井遼太郎とか、上村充哉とかいて。名古屋はチャンピオンなのでね、チャンピオンを慌てさせて、どういうふうにこっちのゲームに持っていくかっていうところですね、まずはしっかり試合にしたいですね。ここ2〜3年は大量得点で負けている試合が多かったので。あとは我々のクラブの問題なんですけど、このエンブレムで戦うのが最後なんで、なのでこのエンブレムが守ってくれるんじゃないかなと思っています」

ーー長く府中でプレーしていますが、エンブレムに対するこだわりというのはどういうものをお持ちですか?
完山「田舎から出てきて、一番最初に僕を受け入れてくれたクラブということで、その頃はフットサルのフの字も知らなかったんですけど。僕をあたたかく迎え入れてくれて、そのおかげでFリーグ元年に名古屋に移籍して、府中に戻って、浦安に行って、また府中に戻って今がある。どのクラブでも主力としてプレーし続けられているというそのおおもとのクラブ、このエンブレムの価値をあげたいという特別な感情を持っています」

ーー名古屋とは今シーズン2回戦っていますけど、今シーズンの名古屋の印象は?
完山「本当にどこからでも点が取れるし、ぺピータ選手は移籍されましたけど、彼がいなくてもピヴォを上手に使って、そこからスピードのある攻撃っていうんですかね、全てにおいて精度が高いんで、攻守において隙がないチームだと思います」

ーー隙がないチームのどこを突きたいか、最後に聞かせてください
完山「それは明日見てもらえれば(笑)、今ここではちょっと言いづらいんで。監督ともまたミーティングがあると思いますし、その中で監督から伝えられることもあるし、僕個人で思っていることもあるので。隙な少ないながらもあると思うんで、そこをうまくついて、後は先ほども言いましたけど、このエンブレムをつける、本当の最後の試合になるんで、勝ち負けもあるんですけど、このエンブレムに誇りを持って、そこだけ約束はできることなんで、そこだけはしっかりやりたいと思っています。そうしたらエンブレムが守ってくれるかなと期待しています(笑)」

皆本晃選手
ーー府中を背負っての最後の試合となります明日に向けての思いをお願いします
皆本「ここまで来ることが、ここまでの歴史だったり、積み重ねていく上で大事なことだったので、まずは決勝までこれて一番はホッとしているという気持ちがあります。明日は本当に今まで22年間、このクラブを作ってきた人たちだったりとか、一緒に支えてくれた人たちの思いも全て背負って、まだ全日本選手権のタイトルを取ったことがないし、このエンブレムでの最後の試合となるので、必ずタイトルを取って、一つ名前を残していきたいなという強い思いを持っています」

ーー今日のご自身のゴールを振り返っていかがですか?
皆本「すごくいいパスが来たんで、触るだけだったんですけど、今日は勝つこと、自分が点を取るとかより勝つことが大事だったので、そういう意味ではやはり結果で、ゴールができて良かったと思います。また明日が本番なんで、また明日頑張りたいと思います」

ーーここ最近は社長になって代表としてのコメントが多かったんですけど、明日はW杯で悔しい思いをさせられた選手たちがいる名古屋との決勝ということで、アスリート皆本晃としての集大成としてもすごく楽しみですが、どういった思いがありますか?
皆本「もちろんそういった思いもありますし、個人的な感情はあるんですけど、最後、W杯があった年のシーズン最後にこういった形で名古屋と対戦するのはすごく燃える気持ちもあります。ただ、一方でこのクラブを背負ってきた22年の思いにどうしても勝てないというか、そこがやっぱり大事になってくると思うので、そういった意味では明日はどういった形でも勝ちたいという思いもあります。一方でおっしゃるように私のアスリート能力というか、選手としての価値も証明しないと勝てないと思うので、そこはベクトルは全く一緒で、自分のいいプレーをすることも明日の勝利に不可欠だと思うので、そこは証明したいなと思います。それはきっと結果に繋がると思いますし、明日の結果を見ていて欲しいなと思います」

ーーこのエンブレムをつけて最後の試合になりますけど、このエンブレムをつけて戦うチームメイトに期待することを教えてください
皆本「それはきっと僕が代表として、ということですよね。クラブをここまで支えてくださる方がいたから、今、こういう舞台に立てています。また、この舞台は、今いる選手たちが頑張ってたどり着いた場所だとも思っているので、これだけ大きなファイナルを迎えることができるのは本当に人生で1回あるかないかだと思うので、そこはある意味楽しんでいただきたいなというのが一番にあります。ただ、結局ファイナルは勝たない限りは楽しくないので、そこは最後に一言言っておこうかなと思います」

バサジィ大分 伊藤雅範監督
ーー試合の総括をお願いします
伊藤
「2つあって、1つは、相手は素晴らしいチームだったなと思います。2つめは、いい状態じゃない選手たちも多く、無理をしなければいけないという状況だったんですけども、その中で選手たちはこれ以上求められないっていうくらい、最後までしっかり戦ってくれたので、それに関しては誇らしい、素晴らしい選手たちと時間を過ごせていると改めて感じました。以上です」

ーー今日で今シーズンが終わったわけですが、今シーズンと、伊藤監督が大分に戻られてからの感想をお願いします
伊藤
「まず今シーズンを振り返ってということで、非常に難しいシーズンだった、そういう印象があります。理由は2つあって、1つは、選手が入れ替わる中で、今年は比較的若いチームだったということで難しさがあったかなと思います。2つ目はこういうコロナ禍の状況下で自分たちの選手の数をかなり絞った状態で活動しなくければいけなかったということで非常に難しさがあったかなと感じます。

4年間を振り返ってということでは、まだどういうふうに言葉を選べばいいのかわからないですけど、1つは非常に選手に恵まれた、現場のスタッフに恵まれた4年間だったんじゃないかなと思っています。もう1つは、やはり簡単に負けちゃいけない、Fリーグの中でも盛り上げていくためにはやっぱり強いチームの存在っていうのは、競争力のあるチームは間違いなく必要だと思っています。そういう中で、大分が競争力を保って、Fリーグの上位争いを常にしていくことが必要じゃないかと思います。大都市のチームじゃないので、人を集めたりというのは難しいチームだと思いますが、逆に地方のチームでありながらも、フットサルというスポーツの、Fリーグという舞台で、優勝争いをできるということは、この4年間の中で示せたのかなと思っています」

ーー今日の試合で勝敗の別れ目になったところと、最後に選手たちへのメッセージをお願いします
伊藤
「選手たちがベストな状態ではなかったので、そういう中で何ができるのかというところで、守備のラインを下げるとか、もしかしたらできたのかなと思います。本当に最後、コンディションをベストな状態で戦わせてあげられなかったことが一つ、大きな要因だったなと思います。

2つ目は、選手たちというよりは共に戦った仲間なので、このチームを離れる選手もいますし、残る選手もいますけど、本当にみんなの幸せを願っています。同時に、このバサジィ大分というチームが、Fリーグの中で、フットサルの中で、常に上位に来るように、これから先もしっかりと継続して欲しいなと、そうすればタイトルに手が届くと思いますので。このチームにタイトルをもたらせられなかったことは、僕の力不足であり、このチームに、これから求められるものだと思いますので、そこをしっかり続けて欲しいなと思います」

ーー前回、伊藤さんが離れてから大分は低迷したが、今回の4年間で伊藤さんがいなくなっても大丈夫だという基盤のようなものはできたという手応えはありますでしょうか?
伊藤
「それは僕にではなく、クラブの人に聞いていただければと思います。でも、このエンブレムを4年間守ってきた選手たちの努力、そういうものはこのチームのユニフォームに間違いなく染み付いていると思いますので、これから新しくこのエンブレムを守る選手たちは、過去どうだったかではなくて、今いる選手たちで力を合わせて戦ってくれたらいいんじゃないかなと思います。とにかく仲間のために力を尽くすということ、しっかり戦うこと、走る、そこはずっと選手たちに言い続けたことで、本当にそこはしっかりとこの4年間継続してこれたと思いますので、新しいチームがどういう指導者で、どういうスタイルになるのか、僕はわからないですけど、新しいチームにも本当に期待しています。以上です」

吉田圭吾選手
ーー大分の選手として最後の試合となりましたが、試合を振り返っていかがですか?
吉田
「率直にいって楽しかったです。こういう緊迫した試合を行えることが本当に幸せでした」

ーーF2のクラブから移籍した大分で、キャプテンを任されたり、代表候補に入ったり、すごく濃密な数年間だったと思うが、振り返っていかがですか?
吉田
「運が良かったなと、それと人に恵まれているので、本当にみんなのおかげで代表にもいけましたし、キャプテンも任されましたし、本当に感謝しています」

ーーこのチームで戦うのはこの大会が最後ということで、戦いを終えて今感じることはありますか?
吉田
「やっぱりこのメンバーでフットサルを1年間通してできたのが本当に良かったと思います。負けてしまいましたけど、やり切りましたし、悔いはないです」

ーーこれからのバサジィに向けてお願いします
吉田
「バサジィ大分は、タイトルを取らなければいけないというのが絶対なので、今回もそうですけど、簡単に負けてはいけないと思うので、今後のバサジィ大分に期待しています」

ーーここ数年で成長著しいですが、大分のような恵まれた環境からあえて出るということで、新天地にどんなものを求めているのか、どんな成長を期待しているのか教えてください
吉田
「自分の生活環境を変えて、ちょっとストレスを自分に与えようかなという考えで大分を出る決断をしました」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 勝又寛晃
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