試合

優勝に望みをつなぎたい湘南、ホーム最終戦は引き分けに

~湘南ベルマーレ VS シュライカー大阪~

年が明けて初のリーグ開催となった1月8日(土)、湘南ベルマーレはホーム小田原アリーナにシュライカー大阪を迎えた。

湘南は、この日がシーズン最後のホーム戦。現在1位を走る名古屋オーシャンズとはこの日の時点で勝点差6だが、残り試合数が名古屋より1試合多い湘南としては3戦全勝することで優勝の可能性を少しでも多く残したいところ。ただし、年末に新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たことによってチームとしての練習が限られたことに不安が残る。一方の大阪は、リーグ終盤に来てチームの完成度が上がり、内容の良い戦いをしている。勝点差に開きがない中位に位置しているため、勝利すれば順位を上げる可能性があることもモチベーションになっている。

試合は、湘南がいつもと違って引いた守備陣形を敷いたことから、大阪が様子を伺いつつ攻撃を進めるという意外な展開からスタート。大阪がゴレイロの高見政顕選手を上げて数的優位を作って攻撃を仕掛ける一方湘南は、自陣まで下がって待ち、深い位置では積極的な守備でボールを奪っては攻撃につなげていく。これまでにない湘南の戦いぶりに大阪が戸惑いを見せる中、先制ゴールを決めたのは湘南の高橋広大選手。自陣で奪ったボールを相手陣内までドリブルで運び、そのままシュートまで持ち込んだ。次の得点も湘南。自陣からのキックインを縦に早い攻撃につなげて浦上浩生選手が決めた。その後、大阪はゴレイロを檜山昇吾選手に代え、湘南の変則的な戦い方に対応。タイムアウトを取得して修正を施すと、直後に加藤翼選手が決めて1点差に迫る。さらに大阪の井口凜太郎選手が決めて、同点で折り返しを迎えた。

2ndピリオドは、湘南の積極的な攻撃から始まった。プレスラインも上げて、アグレッシブな姿勢を見せる。先手を取ったのは、またも湘南の高橋選手。自陣で奪ったボールを左サイド沿いにドリブルで駆け上がり、そのままシュートに持ち込んで決めた。再びリードを許した大阪は、早いタイミングでタイムアウトを取得。ここでも修正がすぐに効果を現し、タイムアウト後数分で清水寛治選手が決めて同点に持ち込んだ。その後はお互い際どいシーンは作るものの、得点は奪えず時間は経過。残り3分を切ったところで大阪がパワープレーを行うがなかなかチャンスにつながらない。残り数十秒のタイミングで湘南もパワープレーに入るが、得点ならず、同点のままタイムアップとなった。

この日の観客は1,014名。湘南にとってはホーム最終戦であると同時に、優勝への望みをつなぐ戦いでもあり、感染対策によって入場制限がある中でも一部完売席が出るほどの盛況ぶり。大阪から駆けつけたサポーターも含め、それぞれのチームを手拍子などで後押しした。

※Fリーグディビジョン1は、1回総当たりを持ってリーグ成立となります。記事掲載の1月10日時点では、Y.S.C.C.横浜と立川・府中アスレティックFCの対戦が1度も行われていないため、優勝や順位は決定しません。1月12日に開催予定の第9節「Y.S.C.C.横浜対立川・府中アスレティックFC」の試合の成立後、順位が決定します。

試合後会見


湘南ベルマーレ 伊久間洋輔監督、上原拓也選手
ーー試合の総括をお願いします
伊久間
ホーム最終節ということで、いつも通りですがたくさんの応援が後押しになって、選手たちもいつも通りそれを感じながらプレーができて、非常にありがたかったです。1年間、ホームに駆けつけていただいた皆さま、たくさんの皆さまに感謝したいと思います。

ゲームの方は、なかなかコンディションが上がらない状況の中、ああいう守備の選択をしましたが、プランニングとしては悪くはなかったと思います。相手のパワープレーに対して対策は取っていたもののやられた部分もあるので、まだまだなのかなというところです。この時期に優勝を懸けた戦いができることが本当に喜びですし、勝点3は欲しかったですけど、後半、先行できてここからというところでしたが、年末の(シュライカー)大阪さんの試合を見ても非常にいい戦いをしていたので、そううまくはいかないものだと改めて思いました。選手たちの成長が見えているので、あと2試合、可能性が0なわけではないので、最後まで戦い抜きたいと思います。今日はありがとうございました

上原「今日もありがとうございました。ホーム最終戦ということで、たくさんのお客さんがシーズンを通して駆けつけてくれて、本当に気持ちよくプレーができたと思います。その裏では、スタッフの方々がどうすれば僕らがもっと気持ちよくプレーできるかを考えてくれ、サテライトの選手たちも、(自分たちの)試合前日にもかかわらず設営をしてくれたこともありましたし、僕もそういう経験をしてきましたけど、それは本当に当たり前のことではないと思っています。今日はいなかったですけどジュニアユースやユースの選手たちも本当にサポートしてくれたと思います。ありがとうございました。

今日の試合に関しては、なかなか難しい試合だったと思います。最初、僕らが引いて守っていたところ、多分相手はもっとプレスをかけてくると思っていたと思うんですけど、そこで2点取れたことはよかったと思います。リードする時間もあった中で、守りきれませんでしたけど、みんなの頑張りは伝わってきていましたし、厳しい状況でも戦ってくれた選手たちは本当にすごいと思います。僕はベンチでとにかくやれることをやろうと思って声を出していましたけど、なかなか力になれなかったなというのはあります。シーズンを通して本当にみんな頑張っていると思うので、残り2試合、監督も言った通りまだ可能性は残っていますし、しっかり戦い切ることが今後にもつながってくると思うので、最後まで気持ちを緩めず、諦めず、湘南スタイルで、他力本願ですけど、いい形で終われればと思います。残りの時間、とにかくやれることをやり切りたいと思います」

ーーこれまでと違ったやり方をしていましたが、コロナ感染症対策の影響があったのでしょうか?
伊久間
「ご存知の通り年末にコロナ陽性者が出たことによってチームとしてトレーニングがほとんどできていない状況の中、勝たなければいけないというレギュレーションもあり、我々のスタイルではなかったですけど、引いて守るという決断をしました。相当考えましたし、これでいいのかとも思いましたが、指導者として1番に考えるべきは選手のコンディションで、もちろん優勝はほしいですけど、そこを選手に強いるのはなかなか難しいというところで、今我々ができるベストな選択はなんなのかを考えた上で決断しました。引いて守ることによって自陣の裏に走る時間は少なくなりますし、前に走る、ゴールに向かって走ることはいつも通り、そこで我々のストロングポイントを出せると考えました。後半は、前半を戦ってみて普通にできるという状況だったので、いつも通りにやろうということになりました。多分選手も調整して、体と相談しながらやったと思います。ただ、ゲームのプランニングとしてはうまくいったのかなと思っています」

ーーほとんど練習ができない中、ホーム最終戦に向けてどのようにチーム作りをしたのでしょうか?
伊久間
「正直、トレーニングは十分にはできていません。その中でできることは何かというと、おそらくいつもは長く出場する選手、短い時間の選手がいるんですが、これを均等にすることによって、消耗を抑えることを考えました。今日は3セットで回したんですけど、大阪さんは強いピヴォがいるんで、そのピヴォをどう抑えるのか、トレーニングの中で各セットにピヴォを抑える選手を配置して、あとはみんな前に走る、スペースに走ることはかなりできるので、そういうセットを組むことをまずやりました。トレーニングでは、そのセットで体を動かしながらゲームをしたりしたというところです」

ーーシュライカー大阪の永井監督がパワープレーのところで湘南がもう少しボールを取りにくると思ったとおっしゃっていたが、伊久間監督としてはどういう狙いがあったんでしょうか?
伊久間
「永井監督が何を思ってパワープレーをしたのかがわからなかったというのはあります。それは、勝点1を取りに来たのか、3を取りに来たのか、というのもありますし、我々は3を取りにいかなければいけなかった状況ですけど、僕としては『パワープレーをしてくるんだ』という戸惑いも若干ありました。プレスをかけないようにしたわけじゃないんですけど。逆にいうとパワープレーをするなら点を取りに来てくれと思いましたが、そこはそれぞれ考えがあると思いますし、それが戦いなのだという感じですね」

ーー残り2試合に向けての意気込みをお願いします
伊久間
「本当に全力で戦うしかないんですけど、今日、1試合を通して全員を出せたというのは、わかっていたことですが、誰が出ても遜色ないんだということを改めて確認できて、逆にプラスだなと思いました。それを前面に出して、アウェイ2連戦ですけど、逆にその全員のパフォーマンスを最大限に上げられるように、1日2日のトレーニングをしてアウェイでなんとか力が発揮できればと思っています」

シュライカー大阪 永井義文監督、田村友貴選手
ーー試合の総括をお願いします
永井
「決めるべきところを決めていたら勝てたなという、そういう印象ですね。チャンスをたくさん作っていたので、そこを決めきれなかった自分たちに課題が残るゲームだったかなと思います。でも、それだけチャンスを作れるということは、自分たちがそういう狙いを持って攻撃ができて、フィニッシュまでいけているということ。彼らは本当にそこはよく頑張っていました。カウンターのところで失点はしましたけど、そこから立て直して、という部分も含めて、試合全体でいえば選手たち、よく頑張ったなというゲームでした」

田村「ここ何試合かは、本当に自分たちの、大阪のいいゲームが入りからできていたんですけど、今日のゲームは苦しい展開からのスタートになりました。でも、そこからしっかり修正して、2回リードされましたが、3対3に追いつけたところは良かったなと思います。ただ、自分たちは常に勝ちにいくゲームをしているんで、もうちょっと選手がリスクをかけて思い切っていくところ(の判断)を修正していかないといけないなと思います」

ーー1stピリオド、2ndピリオドともにタイムアウトから流れが変わりましたが、それぞれ取った意図と修正の指示はどんなものだったのでしょうか?
永井
「後半は、どちらかというと気持ちの部分に触れました。やれた感覚を持った前半とハーフタイムを過ごして、後半少し浮き足立ってしまった部分があったので、もう少し一つひとつのプレーだったり、守備だったり、ワンプレーに対して執着しようというメンタル的なアプローチと、キーパーを使った戦術、攻撃のところについて少し触れました。前半は、相手が引いていて、カウンターで2失点しましたけど、引いた相手に対しての攻撃のところ、あとは攻撃の終わり方、その辺りを修正しました。前半のタイムアウトは、攻撃の戦術的な側面、キーパーを使った戦術というよりもどちらかというと4対4の側面に触れました。後半に関しては、メンタル的なところと、あとはキーパーの戦術のところに触れました」

ーー最後のパワープレーの選択は、勝ちたい湘南への心理的な狙いもあったのでしょうか?
永井
「3戦勝たないと優勝がないと聞いていたので、そこの心理戦の部分で、必ず取りに来るだろうと。(予想に反して)ボールを取りに来なかったところの狙いは、ちょっとわからなかったんですけど、もしかしたら時間を決めて取りに来ようとしていたのかもしれません。残り1分になってからボックスに変えて、(ボールを)取りに来たりしていたので。(狙いとしては)パワープレーに入った時点で(湘南はボールを)取りに来るだろう、だからそこをうまくかわして、1点決めに行こうというところでした。しかし、思いのほかボールを取りに来なかったので、ちょっと自分たちも逆に困惑した部分がありました。残り1分はリスクをかけて行こう、取りに来たら相手は絶対に勝たなければいけないから、そこを剥がしてというので、ワンチャンスは作りましたけど。我々としては、パワープレーに入れば相手は取りに来るだろうから、お互いに2回2回、3回3回くらいはピンチとチャンスがある中で勝敗が分かれていくんだろうなという狙いの中での3分のパワープレーでした。自分の戦術的な予想は少し外れたので、残り1分はリスクをかけていこうという感じでしたね。3回ずつくらいはお互いチャンスとピンチはあるだろうという狙いでした」

ーーパワープレーに関する指示は、いつ行ったのでしょうか?
永井
「タイムアウトを使っていたので、パワープレーをするセットの裏側を出している時間に、パワープレーのメンバー5人でコミュニケーションをとって、残り1分まではいこうと、相手は必ず勝たないといけないと聞いているから取りに来るだろうというのを、残り5分くらいの時点で話しました」

ーー(ケガから復帰して)久しぶりにピッチに立った気持ちはいかがでしたか?
田村
「本当に、なかなか練習もできないまま合流したんですけど、監督が使ってくれたというのもあって、チームのために貢献しようと思って、まず全力でプレーすることを集中してやりました」

ーー引き分けという結果でしたが、監督は選手はよくやったとお話しされていましたが、その実感はいかがですか?
田村
「僕が(ケガで)抜けてる間にキーパー戦術を多く取り入れていたので、そこの不安は個人的には結構ありました。練習でもキーパー戦術の練習はあまりできなかったんですけど、試合の中でやってみて手応えもあったので、練習からもっともっと突き詰めていって、次はゴールを狙えるように頑張っていきたいです」

ーー残りの1試合に向けて意気込みをお願いします
永井
「最終節はホームで迎えられるので、引退する選手もいますし、みんなで勝ってその瞬間を喜びたいなと思います」

田村「コロナ禍で大変ですけど、たくさんの人に支えられて試合ができていることに全員で感謝して、負けとか引き分けじゃなくて、しっかり勝って、次の全日本選手権に向けていいゲームで終われるように練習からやっていきたいと思います」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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