試合

アグレッシブな守備を継続した大阪が逃げ切る

~フウガドールすみだ VS シュライカー大阪~

12月最後の週末に、Fリーグディビジョン1第20節の試合が各地で行われた。

墨田区総合体育館で開催されたのは、フウガドールすみだとシュライカー大阪の対戦。通常の日程通りに試合を消化しているチームにとっては年内最後の試合となっている。すみだにとっては年内ラストのホームゲーム。ちょうど1週間前に開催されたホームゲームで敗戦していることから、ホーム連敗を避けるためにも負けられない試合となっている。大阪は、中断明けから勝ち切れない試合が続いたものの、前々節にボアルース長野に勝利、前節は優勝に王手をかける名古屋オーシャンズと引き分け、上り調子。2日後には、延期になっていた名古屋とのアウェイ戦も予定されているため、ここで勝って勢いを継続したい思惑がある。

1stピリオド、大阪はキックオフで下げたボールを長いパスを使って前線に入れ、相手陣内の深い位置からシュートを狙う。なるべく相手陣内でプレーしようという意図が見える。ペナルティーエリア付近での攻防からセットプレーを何度か獲得し、4度目のキックインからサインプレーで加藤翼選手がゴールを決めて先制する。その後も最前線からプレスを仕掛け、ボールを奪うとゴレイロの高見政顕選手もハーフウェーラインを超えて攻撃に参加し、相手陣内で数的優位を作り、相手陣内で時間を使う。

このゴレイロの上がりを逆手に取ったのがすみだの田口元気選手。高見選手へのパスにタイミングよく飛び出してボールを奪うとそのまま攻め込み、無人のゴールにシュートを決める。この得点からすみだが勢いを増し、攻勢を強めていく。

するとまだまだ早い時間帯にもかかわらず、大阪がタイムアウトを取得。永井義文監督曰く「キーパー絡めた攻撃なので、キーパーにも指示を聞いてもらわないと」という修正を図る。再び大阪が守備の強度を高めて前線からプレスを仕掛け、ボールを奪うと長いパスを使って早めに前線にボールを入れ、主導権を握る。そこから清水寛治選手、磯村直樹選手が得点を決め、3対1と大阪がリードしてハーフタイムを迎えた。

2ndピリオドも大阪は前線から強度の高い守備を継続。すみだはなかなか相手陣内深くまで攻め込むことができず、我慢の時間帯が続く。ゲームを動かしたのは、再び大阪。キックインから攻撃の形を作り、ゴール前に構える選手にボールを入れてシュートを狙う。一度はすみだのゴレイロ・岸将太選手が止めるが、こぼれたボールを齋藤日向選手が拾ってネットを揺らした。

得点差を広がったが、ここからすみだが攻撃のテンポを徐々に上げていく。大阪の守備をかいくぐり、相手陣内深い位置で攻撃の形を作るシーンも増えていく。また、大阪のチャンスを岸選手がビッグセーブで潰し、チームの士気を高める。主導権を奪い返したすみだは、何度かあわやというシーンを作る中、中央でボールを奪い、大阪の守備陣形が整わないところを攻め込み、宮崎曉選手が得点。その後は、流れを引き戻したすみだが攻勢をかける。一方の大阪は、強度の高い守備の代償ともいえるファウルが重なり、7分以上の時間を残してファイブファウルとなり、守備の対応について考えざるを得なくなる。

すみだは攻撃に重心を置くものの得点までは結びつかず、徐々に時間がなくなっていく中でパワープレーを選択する。大阪は、パワープレーのディフェンスもボールを狙ってプレスを仕掛けるスタイル。すると、そのプレスがハマってパワープレー返しで清水選手この試合2点目を決める。しかし、ここからのすみだは落ち着いてパワープレーを遂行。時間がない中、鬼塚祥慶選手がミドルシュートを放ち、ゴレイロの頭上を撃ち抜いて得点、さらに残り1秒という時間に栗本博生選手が渾身のシュートを決めて1点差まで迫った。

最後まで両チームともに諦めない姿勢を貫き、目が離せない展開となったが、すみだはホームで連敗。大阪は、次の名古屋戦に弾みをつける結果となった。

試合後会見


フウガドールすみだ 荻窪孝監督、田口元気選手
ーー試合の総括をお願いします
荻窪
「お疲れ様でした。自分たちとしては、大阪さんの攻撃が、キーパー攻撃だったり、ピヴォを使ったロングボールだったりについてはスカウティングでわかっていたので、我慢しなきゃいけないゲームになるのは選手たちには伝えていたんですけど、我慢できずというか、不運というか、失点が序盤にあったというところが、今回の敗因になるかなと思っています。それ以外のところでは、キーパー攻撃の守備のところとか、少ない練習時間の中で選手たちは良くやってくれたなと思っております

田口「まずやっぱりホームで敗戦したことと、多分ホームで連敗したのは数年ぶりというところがとても悔しいです。監督が言っていたように相手の攻撃に対して準備はしていましたが、結局失点をしてしまっているので、そういったところが敗因なのかなと思いますが、まだ試合は続きますので、次に向けて準備して行きたいと思います」

ーー1点目は田口選手だったと思うが、キーパー攻撃の守備という狙いが当たった得点だったのでしょうか?
田口
「準備していたのはどちらかというと高見選手の足元の技術をリスペクトしてボールに行くというよりは、しっかりゴールを守るということをベースでやっていたんですけど、あそこを振り返るとサプライズというか、高見選手に出す前の選手の顔が下がっていたので、プレスがかかると個人で判断をして取りに行きました。それが結果につながったので、いい判断だったのかなと思います」

ーーパワープレーではもう少し点が取れそうだったが、どう評価されていますか?
荻窪
「大阪さんはパワープレーの守備もプレスにくるとか、ライン間が開いてくるとか、そういったところはわかっていたので、自分たちはそこで攻撃のチャンスを作れると思っていました。予想通りだったんですが、逆に1点、そのプレスによって失ってしまったのはちょっと誤算というか。そういうところはなかなか練習する時間がなかったので、そういったところは少し自分にも問題があったし、難しい状況だったと思っています。でも2点取れたのは、すごくよかったと思っています」

ーー最後まで諦めない姿勢を見せて、敗戦とはいえサポーターからの評価は悪くない試合だったと思います。残り2試合、どんな戦いを見せたいか意気込みを教えてください
荻窪
「できれば今日の試合と合わせて残り3試合を勝って終わりたかったんですけど。残りの2試合でしっかり勝ちを目指して、勝利を目指して戦うだけだと思うので、本当に全員でやり切って、一つでも順位や勝ち点を積み上げられるように準備していきたいと思っています」

田口「先ほども話した通り、ホームでは勝利が至上命題だと思うので、そういった意味では、選手としてはやっぱり満足はできないです。(いい試合をしたことで)ABEMAを通してだったり、ホームに来てくれた皆さんが喜んでくれることはチームとしてはうれしいですけど、選手としては納得がいかないので、残り2試合勝てるように準備をしていくだけ。ただ結果が出なかったことをしっかり受け取ることも重要だと思うので、幸い年末年始で時間もあるので、反省をしてやっていきたいと思います」

シュライカー大阪 永井義文監督、齋藤日向選手
ーー試合の総括をお願いします
永井
選手がよく頑張ってくれたなっていうのがまず一つです。これだけのアウェイの雰囲気の中で勝点3を取れたというのは、彼らのパフォーマンスがすべてだと思うので、そこはすごくよかったなと思います。自分たちは(アウェイの遠征は)12人で来ているので、メンバー外の選手や大阪で応援してくれている皆さんに、ABEMAを通じて勝点3を届けられたことは非常に大きかったです。

試合を振り返ってみると、うまくいった時間帯、うまくいかなかった時間帯があったので、全体として試合は勝ちましたけど、特に後半だったり、相手がアグレッシブに来たときだったりに、もう少し勇敢に戦えるようにならないといけないなというのは課題として大きく出たかなと思っています」

齋藤「チームとして、失点しても次の1点を取りにいくという声がけはミーティング中からありましたし、結果的に5点取ってなければ勝てていなかったので、失点しても自分たちが次の1点、ゴールを目指すことができたことが今日の勝点につながったのかなと思います。もちろんパワープレーのディフェンスであったり、定位置の攻撃であったり、ミスはあったんですけど、そこはミスとしてトレーニングで修正して、よかった部分と悪かった部分をしっかり振り返って、次の試合に向けて準備したいと思います」

ーーゴレイロに高見政顕選手を起用した狙いについて教えてください
永井
「『優位を出す』ということですよね。なんの優位かといったら、まずは数の優位、あとは位置の優位、アラの位置だったり、ピヴォの位置だったり、より相手を押し込めた状態、自分たちに取って相手コート、自分たちはアタッキングゾーンと呼んでいますけど、アタッキングゾーンでの時間を増やすために、彼の良さを活かして、(齋藤)日向が言ったように、リスクというのは伴いますけど、より高い位置で得点を狙っていこうという狙いのもとで高見を起用しました」

ーーリードしている時間帯に高見選手を上げるのは、リスクの方が高いのではないでしょうか?
永井
「まずは根本にあるのは、攻撃していたら守備しなくていいでしょということですね。リスクは伴いますけど、より長時間ボールを持った方が守備の時間は減るので、守備のリスクという部分では、自分たちは普通に相手ボールになって守備するのと、高見が上がって失点するのとでいうと、その瞬間だけ見ればリスクですけど、40分間で見たときには、自分たちにとってはそのリスクよりも逆にチャンスの方が多いという考えがあるので、そこで彼らにチャレンジングに勇敢に戦ってもらうためにやってます」

ーー1stピリオドでだいぶ早い時間帯にタイムアウトを取ったが、その理由と修正について教えてください
永井「前回も早めにタイムアウトを取ったんですけど、今はキーパーを含めた攻撃をしているので。ベンチからではフィールドまでしか指示ができないんです。キーパーを絡めた攻撃をするときには、キーパーにも聞いてもらわないといけないので、早い段階で修正を、そこに対してしなければいけない。自分たちはよりリスクをかけているわけですから。自分たちはどういう状況でも後出しジャンケンができるように準備しているので、例えばですけど相手の配置、今日でいえばダイヤの守備で、キーパーに合わせてからサイドにボールをつけたらピヴォがスライドしてくるとか、それに伴ってアラが旋回を選んでくるのか、ピヴォがスライドするのか、アラとピヴォの高さ、相手の狙いどころ、その辺りを見て、キーパーのところと攻撃のところ、より守備のリスクを減らすために、立ち上がりに早い段階で修正を入れました」

ーー後半にとったタイムアウトの理由と指示について教えてください
永井
「後半のタイムアウトは、ファウルカウントのところです。後半に自分たちがゲームをうまく進められなくなってしまった主たる要因は、ファウルが多くなってしまったことだと思ったので。相手コートで攻撃を終えると、そこから守備をしなくちゃいけないですが、ファウルを使えないと守備で押し込まれてしまう時間が増えてしまうので。フットサルは足でするスポーツですけど、上半身は使って構いません。ですが、手を使うとファウルを取られやすくなります。ファウルを取られると苦しい時間帯も出てくるので、そうなったら少し割り切るところも必要だよねというその2つについて。主にはファウルカウントで、どのエリアでどう対応するか、自分たちが残り時間をどう戦うかというところをメインに話をしました」

ーーキャプテンマークを巻いて試合に出場し、代表キャンプにも招集されています。自分の成長についてどのように感じていますか?
齋藤
「去年から試合に出場する時間が長くなって、この1年はたくさん失敗を繰り返してきましたが、その失敗をうまく活かして、失敗を繰り返しながらも成長し続けてるなと自分では感じています。でも、代表に行ったときや、上位のチームと対戦したときに、自分にはまだまだ足りないものがたくさんあると感じるので、これからも成長し続けなければいけない思います」

ーー次節に向けての抱負をお願いします
永井
「アウェイが続くので少しスケジュール的にタイトで、明日休んで明後日にはもう試合になります。次がホームであればまだ準備ができる部分もあるんですけど、アウェイ2連戦になるので、まずは選手たちにはコンディションを整えて、今、自分たちが持っている100%をできる限り名古屋戦で出せるような準備をしてもらう。その準備した姿で、今日のようにアウェイまで応援しに来てくださるファン・サポーターの人だったり、ABEMAを通じて見てくださる方、それからメンバー外の選手、シュライカーに関わるすべての人に勝点3を届けて元気になってもらえる、今日のようなゲームを次節もしたいと思っています」

▶Text by 小西 尚美
▶Photo by 小西 尚美
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