~ペスカドーラ町田 VS フウガドールすみだ~
F1、F2リーグをはじめ、アマチュアや学生などさまざまカテゴリーのフットサルチームが参加する「全日本フットサル選手権大会」。3月6日(土)は、準決勝の2試合が浜松アリーナで開催された。
第二試合は、F1チーム同士の戦い。暫定3位につけるペスカドーラ町田と、今シーズン限りでの退任が発表されている須賀雄大監督が率いるフウガドールすみだが顔を合わせた。今シーズン、すでに2度戦っていることに加え、どちらの監督もF1リーグで複数年指揮を執るもの同士、互いの手の内を知る存在で、戦術的な駆け引きも見どころとなった。
試合は序盤からお互いに自分たちの展開に持ち込もうと果敢に挑み、拮抗した展開に。先手を取ったのは、すみだ。8分にキックインからのサインプレーで森村孝志選手がシュート気味のボールをゴール前に蹴り込み、ファーサイドにポジションを取った宮崎曉選手がゴールへ落としこんだ。その後は再び主導権の奪い合いが続き、両チームとも得点には至らないままハーフタイムを迎えた。
2ndピリオドもお互いに譲らない展開が続く。互いのやり方がわかっているだけに決定的な場面を作っても、ぎりぎりで凌ぐシーンが多く見受けられた。そのなかで先に流れを引き寄せたのは再びすみだ。34分に前半と同じ形で宮崎選手のキックインからのアシストで栗本博生選手が決めた。2点ビハインドを追う町田は、ポストに嫌われるなど、若干ツキのないシーンもあるなか、パワープレーをスタート。ギリギリの時間帯、39分にすみだの守備陣形が一瞬崩れたところをすかさず決めて1点を返す。その後も町田は、慌てることなくゴールを狙い続け、守備から攻撃への切り替え時にカウンターを仕替け、残り22秒というところでヴィニシウス選手がゴールを決めて同点に追いついた。
その後の延長戦でも決着できずに、PK戦へ。お互い一人ずつが外した5人目、先行の町田は金山友紀選手のシュートがポストに嫌われ、失敗に。後攻のすみだは畠山勇気選手が5人目のキッカー。緊張する場面となったが落ち着いて決めて、決勝進出を決めた。
チャンスを決めきれなかった試合、すべてを糧に来季の成長に期待
ペスカドーラ町田 ルイス ベルナット監督
ーーチーム全体が成長した年だったと思う。若手の成長を含めて今シーズンの総括をしてください
ベルナット「今シーズンは、とてもいい出足でスタートすることができ、一つひとつ勝利を積み重ねるなかで若い選手も成長を見せることができました。彼らの積み重ねがあって、今日の試合運びを見せることができました。PK戦で敗れたことは非常に悲しいですが、シーズンを通して選手一人ひとり良い成長を見せることができました。
若い選手は、まだここがスタートなので、もっと高い目標を持ち、競争心や貪欲さを引き上げながら取り組んでもらいたいと思いますし、それができる力を持っています。ここから先も、彼らの成長に期待したいと思います」
ーー拮抗した強度の高い試合でしたが、前後半のゲームプランを教えてください
ベルナット「前半は、ピヴォを使った攻撃を起点にしながら、相手にダメージを与えることが目標でした。セットプレーに関しても、自分たちの攻撃のところで活かしていくことを話してきました。また、相手のセットプレーについては、森村選手がファーに出てくるところへシュート気味のボールを入れてくるという話もしてきました。そのなかで自分たちの攻撃で決定的な場面を作ることはできたのですが、ポストに当たるなど、ゴールから遠ざかっている時間が非常に多かった。チャンスがありながらゴールを決めきれなかったところで、相手が2つのセットプレーというチャンス、自分たちが一瞬集中を切らしたところで失点をしてしまった。前後半であった2つのシーンが非常に残念です。
試合を通じて、攻撃の圧力をかけるためにプレスをかけて前線でボールを奪うことを狙っていたのですが、もう少しボールを奪うことができていたらなと思っています。この試合のなかにはシーズンを通して戦い抜いてきた疲れなど、いろいろなものがあったと思いますし、それは誰にもわかることではないですが、一瞬の精度が私たちのチームには欠けていたかもしれません。
パワープレーは想定していたので、パワープレーの動きについては、最後ギリギリのところでしたが、活かすことができたと思います」
クレパウジ ヴィニシウス選手
ーー試合の感想を聞かせてください
ヴィニシウス「最後まで諦めずに頑張って、同点ゴールを決めて、僕も逆転できると思ったけど、フウガドールもこの大会に強いチームだと思う。カップ戦は、リーグ戦とは違うので、戦い方も変えないといけないし、彼らは、この大会に合わせた試合運びをした、いいチームだと思います。
お互いにいい試合をしたと思うし、僕も得点をしたけど、相手の2得点は、僕の守備の裏なので、僕のように経験がある選手がそういうミスをしてはダメだと思う。でもまた頭を上げて切り替えて、また来シーズン、もっと強くなるようにやっていきたいと思います」
ーーシーズンを通して若い選手が成長したが、どのように感じていますか?
ヴィニシウス「僕個人としては、18歳、19歳の若い選手をもっと使った方がいいと思っています。それは町田だけではなく、できたらどのチームでもそういうフレッシュな選手を使ってほしい。僕はこれまでピヴォやアラをやってきたけど、彼らには本当にポテンシャルがあると思うので、今シーズンは1年間フィクソをやって若手をサポートしてきました。
コロナ禍もあるし、世界経済の問題もあるけど、若手選手にとっていい環境を作らないといけない。まずは若手選手がフットサルで生活ができるようにしたい。僕は、日本に来る前も来てからもフットサルが仕事、フットサルで生活をしている。若手選手にそういう環境ができたらいいなと思います。
僕は2月に34歳になって、どこまでできるかわからないけど、若手に負けない気持ちはある。若手が後ろから押している感じがして、僕は自分の居場所を守らないといけない、もっと頑張らないといけないと思う。この競争心は、日本のフットサルのためにはいいと思います」
ーーフィクソをやったり、得点王になったり、最後にずっと一緒に戦ってきた室田祐希選手とピッチに立てなかったりなどがありましたが、どんなシーズンでしたか?
ヴィニシウス「全部を含めて大変なシーズンだったと思います。コロナが始まったとき、シーズンができるのかどうかもわからなかったくらいだったけど、今日は準決勝まで来て、リーグ戦もまだ来週(延期試合と入替戦)があるけど、シーズンは終わった。今年、(リーグ戦やカップ戦などが)できたことはいいことだと思います。
僕は去年までいつも点を取る仕事をしていたけど、今シーズンはフィクソという新しいチャレンジをして、若手をサポートする仕事をした。「フィクソ(守備)でも得点できるのか?」と思ったけど、できたし、ディフェンスはもっとやらないといけない。
室田選手は、来シーズンは町田にはいません。そこで若手を含めてどんなチームを作るのか、考えないといけない。今日、準決勝で負けたけど、来週の湘南ベルマーレと立川・府中アスレティックFCの結果次第でリーグの順位が3位か4位が決まる。今年のこの経験を活かすことで強くなると思うから、今からしっかり休んで、来シーズンに向けていい準備ができるよう頑張りたいと思います」
ピレス イゴール選手
ーー今日の試合も含めて、イゴール選手にとってどんなシーズンだったか教えてください
イゴール「僕にとっては本当に最高なシーズンだった。病気になって入院するとき(2020年1月ギラン・バレー症候群に罹患を公表)、またフットサルができるようになるかはわからなかったので、またフットサルができて、プレーして、最後まで、今日まで、すごく戦って、僕はとてもうれしいです」
ーーあと一歩だったと思うが、町田がタイトルを取るために必要なことはどんなことだと考えますか?
イゴール「もっとディフェンスの守り方、上達しないといけないと思います。今シーズンは、失点が多かったので、もっとしっかりディフェンスしなくちゃいけないと思います。ディフェンスがもっとしっかりできたら、もっとステップアップできます」
ーー今日の試合を振り返って、感想を教えてください
イゴール「僕たちは試合をコントロールできたけど、ゴールを決められなかったので、難しくなってしまった。それからディフェンスは、キックインのときなどはもっともっと集中しないといけなかった。でも0対2から同点にできて、とても素晴らしい試合だったし、自分も諦めずに最後まで戦って、よかったと思います。PKは、しょうがないと思います。試合の雰囲気もあるし、疲れもあるし、それはしょうがない。例えば、(PKを外した)(毛利)元亮や(金山)友紀さんのせいでは全然ないと思います。負けて残念だし、本当に悔しい気持ちだけど、PKで勝ち負けが決まるのはしょうがないと思います」
タフな試合を乗り越えて、改めて感じた選手のポテンシャル
フウガドールすみだ 須賀雄大監督
ーーギリギリの対決になったが、試合の総括を聞かせてください
須賀「まず町田は本当にいいチームで、それこそいろんなバリエーションで点を取れるチームだなと思います。セットプレー、定位置攻撃、トランジションもあるし、そこにイゴールという信頼感のあるゴレイロがいるので、すごく難しい試合だったと思います。
僕は、彼らのトランジションのところを一番脅威に感じていたので、自分たちがそこでどれだけ優位に立つかで、ゲーム自体の性質が変わってくるなと思ってました。終盤、パワープレーで2失点しましたが、正直想像していなかった形での失点だったので、パワープレーで崩されたというよりは、自分たちからアクションを起こしてプレスをかけたときの回避だったり、カウンターでの失点だったので、ある程度仕方がないかなと思います。まずはそこまで0で迎えられたのが、本当にタフだったなと思っています。
やはりイゴール相手にどれだけ失点を少なく終盤を迎えられるかというのが一つ勝利するための鍵だったので、それを選手に要求して、見事に答えたのは1つ、素晴らしかったポイントだと思っています。
延長に入ってからは、ケガ人も出てきて、前半でガリンシャもケガをしましたし、そういう意味ではかなり厳しい状況ではあったんですけど、それでもチャンスを作れていたし、ある意味、選手たちのポテンシャルを改めて感じる試合になりました」
ーー今シーズンで退任されることも踏まえ、12年ぶりの優勝目指して、明日決勝を迎えるのはどんな気持ちですか?
須賀「自分が退任することについて、「最後ですね」「頑張ってくださいね」といろんな方に言っていただくんですけど、自分としてはそういう気持ちはありません。1つ言えるのは、僕はこのチームに本当にポテンシャルと可能性を感じていて、選手もすごく努力をしてくれた1年だったので、やはり何かの形でタイトルを取らせてあげたいという気持ちが強いということ。コロナウイルスの猛威もあって、シーズン頭もうまくいきませんでしたし、途中でコロナ陽性者も出て、すごく過密日程になって、過去一番で難しいシーズンだったんじゃないかなと思うなかで、そこを前向きに一つ一つ乗り越えてクリアしていった選手たち。日本一のタイトルを取るにふさわしい選手たちだなと、僕自身思っていたので、それをこういう形で挑めるというのは、非常にうれしいですね」
ーー前後半で選手起用が変わったが、選手起用の意図を教えてください
須賀「立ち上がりは3セットで回そうと思っていました。今年のチームは、爆発的な選手はいないですけど、3セットとも力がある選手がいると思っているので、まず3セットで試合の様子を見ながら選手のコンディションだったり、相手チームとの噛み合わせを見て、そこからセットを減らしていくのか、それとも3セットでそのまま継続していくのかというところを見ようというプランでした。しかし、ガリンシャが早々に離脱して、そのプランが崩れたなかで、どういうセットを組むかを考えたときに、畠山(勇気)と鬼塚(祥慶)と中田(秀人)と北村(弘樹)のセットは荒さがあって、まだまだ足りない部分が多いんですけど、非常に若さあふれる推進力のあるセットだなと思っていたので、彼らをまず崩さないということを1つ決めました。
ガリンシャがいたところに、そのまま右利きのピヴォか左利きのピヴォか、森村(孝志)か右利きのピヴォの岡村(康平)かというチョイスを考えたときに、ガリンシャと同じ左利きのピヴォを配置するという決断をしました。そのセットはなかなか試せていないセットだったんですけど、非常に、いい意味で割り切ってプレーをしてくれたなと思っています。普段ガリンシャと組んでいる選手たちは、どのタイミングでピヴォに顔を出して欲しいか、確実に要求通りだったわけじゃないですけど、森村もどのタイミングで当ててくるかを探りながらやってくれたと思います。だからこそやるべきトランジションの守備の部分だったり、それこそ守備のマーキングの部分だったり、相手のストロングのところをしっかり消しながら粘り強く戦ってくれたのがすごく良かったなと思っています。
そこに渡井(博之)、栗本(博生)、岡村がいることで、さらにいろんなバリエーションを出せると思っていました。今日は、終盤に追いつかれる展開でしたけど、序盤に追いつかれたら、そういう選手たちがまた違いを見せていくというイメージを持っていました。このチームは本当に総力戦で、全員が主役になれる選手たち、全員が脇役でもある、そういうチームだと思っているので、それが今日、証明できたなと思っています」
森村孝志選手
ーー今シーズン限りでの退団が発表されているが、最後にタイトルを争う権利を得た試合を振り返ってください
森村「今日の試合は正直すごくしんどくて。僕、PK外しちゃったんで、みんなに助けられたなという気持ちです」
ーーシーズン終盤にかけてチームにフィットしてきたと思うが、自身どう感じているか、また明日はどんなプレーをしたいと考えていますか?
森村「オフェンスなのでゴールに絡むプレーがしたいと思っています。プレースタイルもシーズン終盤になってチームメイトも理解してくれて、僕もチームメイトがどんなプレーするかがわかってきて、そこが最近よくなっているかなと思います」
ーー須賀監督の退任が決まっていますが、チームの雰囲気を教えてください
森村「チームは特にラストとか特別な感じじゃなくて、全員一丸となってやろうという感じになっています。個人的には、(自身の)退団が発表されていますが正直何も決まってないので、自分の存在価値を示したいなと思っています」
諸江剣語選手
ーー今日の試合、相手ピヴォの毛利元亮選手と本石猛裕選手がポイントだったと思うが、しぶとくディフェンスしていたが、どんなことを考えながら抑えようとしていたのでしょうか?
諸江「まず2人のピヴォの選手は、非常にレベルが高い選手で、特に18番の毛利選手は、若干20歳くらいだと思うんですけど、今一番伸びている選手だと思います。彼に対して最初は前取りを狙おうかなと思っていたんですけど、(パスの)出し手のヴィニシウス選手だったりは、バックドアといって(ピヴォがフィクソの背後をとる動きに合わせて)、裏にボールを蹴れる選手が多いので、前に入りづらくて。それでピヴォに(ボールが)収まった時間も多かったんですけど、ほとんど右足でシュートに持っていくスタイルが多いのと、そこはスカウティングでわかっていたので、右足のシュートをしっかりシュートブロックできるように対応しました」
ーー縁の深い須賀監督が退任するシーズンの最後にタイトルかけて戦えることについて、どんな思いがありますか?
諸江「須賀さんとは、10年以上のつきあいになります。僕がフウガに入って10年目なんですけど、Fリーグに上がってからはタイトルを取ることができていませんし、日本一になって、須賀さんにタイトルをプレゼントして、気持ちよくとは言えないですけど、みんなで送り出したいなと思っています。
個人的には今日は準決勝ですけど、勝ったときに本当に涙が出るくらいうれしくて。もちろん勝ったことがうれしかったんですけど、須賀さんとやってきた思い出だったり、僕がPKを外して名古屋オーシャンズに負けて終わった試合(2013年開催第18回全日本フットサル選手権大会決勝)とかが走馬灯のように思い浮かんできて、涙が出ちゃったんですけど。やっぱりそれくらい須賀さんへ思いは強いんで、明日は足がなくなってもいいんで、最後まで走って日本一になりたいなと思っています」
ーーPKになった瞬間に大江選手がPKを外した試合を思い出したが、自分が決めて勝つという選択はなかったですか?
諸江「(笑)。まず大前提として、相手と人数を合わせないといけなかったんで、一人減らさなきゃいけなかったんですよ。その時点で、実際僕練習でもPKを外しているっていうのと、8年前決勝でPK外しているっていうのと、あと両足の腿裏が攣っていて、という状況があって、僕も須賀さんに外してくれと言いましたし、須賀さんもわかったよということでした。自信があるやつが蹴ればいいと思っていますし、僕が蹴って負けるよりか、他の選手が蹴って勝ちたいんで、正直に言いました。ダサいかもしれないですけど、僕はチームが勝てればそれでいいと思っているんで、それでよかったと思っています」