試合

湘南が6得点。F1自力残留を目指す長野の夢、潰える

~湘南ベルマーレ VS ボアルース長野~

2月21日(日)、コロナ禍のなか始まった2020/2021シーズンのリーグ戦もいよいよ最終日。第二試合に湘南ベルマーレVSボアルース長野の試合が行われた。19時キックオフのリモートマッチが続いた湘南にとっては、久々にサポーターの前でプレーできる有観客の試合。対する長野にとってはF1リーグ残留をかけて勝利するしかない試合となり、入場制限があるなか、長野からもサポーターが駆けつけた。

湘南でも監督を務めた長野の横澤監督と湘南・奥村監督との駆け引きも見どころの試合は、両チームともいつもと違うメンバーがスターティング5に名を連ねた。長野は、キックオフ後ワンプレーでセットを交代。試合後の会見で戦術的な交代と監督が明かしている。

試合序盤は、負けられない長野の勢いが勝るものの、徐々にペースを取り戻した湘南が攻撃の形を作り始める。とはいえ、隠れた主導権を握っているのは長野のようで、湘南の攻撃に冴えが見えない時間帯が続く。そんななか、左サイドを崩しにかかった鍛代元気選手がこぼれ球を拾ってシュート。15分に先制点を奪って試合を動かした。その後は湘南がリズムに乗った攻撃を展開。18分にはロドリゴ選手、本田真琉虎洲選手が続けてゴールを決めて、3対0で1stピリオドを終了した。

2ndピリオドは、ハーフタイムで気持ちを切り替えて試合に臨んだ長野が積極的に攻撃を展開。開始42秒で荒牧太郎選手がコーナーキックからのサインプレーをしっかりと仕留めて1点を返し、勝利への執念を見せる。さらに流れを引き寄せようと攻撃を仕掛けるが、後半から出場した湘南のゴレイロ・上原拓也選手がファインセーブを連発し、傾きかけた流れを押し戻した。

その後は、拮抗した時間帯が続くが、ままならない展開にファウルが増えたのは長野。31分に第二PKを献上し、ロドリゴ選手が落ち着いて決めて湘南がリードを広げる。勝利が欲しい長野は、終盤に入ってパワープレーを選択。38分に数的優位を活かして青山竜也選手が1点を返すものの、湘南の本田選手、鍛代選手にパワープレー返しのゴールを決められ、敗戦となった。

湘南は土壇場で延期となった立川・府中アスレティックFC戦を残しているため暫定5位。直接対決で勝点3を取れば4位まで順位が上がる可能性を残している。一方の長野は、この後のY.S.C.C.横浜VSエスポラーダ北海道の試合にF1残留を託すこととなった。

最後まで頑張った選手たちの気持ちはサポーターにも伝わったはず


ボアルース長野 横澤直樹監督
ーー試合を振り返って
横澤
「お疲れ様です。最終戦ということで勝利すればF1残留が確定するという状況だったんですけど、1日おいたとはいえ2試合連続に近い状態で戦って、体力的、フィジカル的にもすごくきつかったと思います。選手たちは最後まで本当によく戦ってくれましたし、そこは長野から駆けつけてくれたサポーターにも伝わったんではないかと思ってます。F1に残留できるかどうかは、(Y.S.C.C.)横浜と(エスポラーダ)北海道の結果次第ということで他力本願になってしまったので、我々としては見守るだけです。

私としては、最後までいろいろ苦難・困難があったなかで、このリーグが無事に開催されて、選手たちが最後まで戦える場があったということと、プレーを皆さんに見せることができたっていうことに感謝するべきだと思っています。それは、我々にとって当たり前のことではなくて、本当にうれしいことなんだなっていうことを身をもって感じました。フットサルというスポーツを通して、本当にいろんな勉強をさせてもらったし、今シーズンを仲間と共にできたことは本当に感謝しています」

西巻広直選手
西巻「お疲れ様でした。まず始めに、今日でリーグ戦が終わるということで、最後までこうやって戦いきれたのは、たくさんの方々のいろいろなサポートがあったからこそだと思ってます。本当に感謝しています。

今日の試合については、前半3失点と厳しい立ち上がりになってしまいましたけど、そのなかでも今までやってきたことにすごく自信があったので、後半戦に間違いなくひっくり返せる力はあると信じて挑みました。後半は先に1点を取って、そのまま勢いづいて行きたかったところですけど、また失点してしまい、自力で残留を決めたかったのでパワープレーにも挑戦しました。パワープレーについては、一昨日の試合の修正もできて、いい崩しもできたかなと感じています。1試合1試合成長できたなと思ってますし、自力で残留を決められなかったのは非常に悔しいですが、このあとの横浜と北海道の試合は、その結果次第ですけど、そこは願うだけかなと思います。自分たちはまだ選手権があるので、そこでいい結果を一つでも残せるように、また切り替えて頑張っていきたいと思います」

ーー残留を決める大事な試合に比較的若いメンバーでスタメンを組んだが、その意図は?
横澤
「彼らは昨シーズンのF1経験者です。不足しているところがあるので、北信越リーグ2部に所属しているボアルース長野ヴェルメディオ、(ボアルース長野の)セカンドチームでもう1回戦って質を高めるっていうことをしてもらったんです。人間の成長も含めてフットサルを通して成長できるっていうのも1つあるし、本当にセットプレーに関しても質が高まっていたし、おもしろいフットサルだなと思って二人を昇格させました。その可能性をもう1回、湘南という強い相手にどれだけできるかということ、最終戦だからこそ、その力でなんとが戦ってほしいなという、そういう願いも込めて先発にしました。

やっぱり全然引けをとってなかったし、そこでのプレーは本当に良かったので、今後に期待できる。各チーム若手が育ってきているなかで、我々としても若い力というのをもっともっと育てていかなければならないと、そういう意味で、一番緊迫感がある試合で成長を願って使ってみました」

ーースタートのセットを7秒で変えた狙いは?また今日勝利すれば残留が決まるといういうところで、今日の試合に向けた戦い方があったのか?
横澤
「まず交代に関してなんですけど、今日の湘南は、いつものセットと違って、うち用のセットにしてきた。湘南はグループが2つあるんですけど、そのグループを混ぜてきた。うちも湘南に対応するべくグループを作ったんですが、湘南が違うメンバーでセットを組んできたので、そこは戦術的、戦略的に交代しました。

湘南に対応するクアトロ対策として、今までやったことがない秘策を1つ考えてきました。それは2回くらしか使えなかったんですけど、その秘策は一応ハマりました。私としては、この体力的にもきつい状態でも最後は一丸となってガチンコで勝負させたし、そこで乗り切ってほしいとも思っていました。だから本当にヘロヘロになっている選手たちもいたんですけど、最後までやり切ったというところが本当に素晴らしいことだと思うし、次につながるのかなと思います」

ーー差し支えない範囲で、その秘策を教えてください。
横澤
「それは、今後クアトロをやるチームに、多分使っていくと思うので。町田、湘南、浦安とクアトロを使ってくるチームですね、だからそこのチームの時に、ところどころ出すかもしれない(ので、言えない)。ただやっぱり一番いいのは、戦術・戦略はもちろん大切なことなんですけど、目の前の相手と面と向かってチームとして戦うっていうのがまずあって、そこで通用しなかったら戦術・戦略を使うというところなので。基本的には面と向かって、目の前の壁をぶち破るじゃないですけど、挑戦してほしいなっていうのは、私が指導する上では一番大切にしています」

ーー善戦したが結果的に負けてしまったというところで差がどこにあると感じているか?
横澤
「初勝利をしてからチームがまとまり始めて、横浜戦で勝利してさらに深まり、そのあと一個大負けがあったんですけど、でもそこでまた立ち上がって、団結力が固まって、それを繰り返しているうちに、とにかくチームを、F1に何とか定着させたいと一致団結した。そこで選手たちがどうやったら今のチームの戦力とチームの戦術を融合して連携できるかっていうところを、多分こだわったんですよね。それによってかなり戦術・戦略も使えるようになったし、どんどんどんどん良くなっていきました。そういう意味では、湘南ともそうですし、シュライカー大阪ともそうですし、勝てるかもしれないという状況になったんですけど、やっぱりもうちょっとそういう経験が必要なのかなと。

本当にポテンシャルが高い選手が揃っていればすぐに団結できると思うんですけど、今から成長するチームであって、その組織作りとか、カテゴリーとか、選手個々の自分の立場とか、そういうことがわかってこそまとまるので。半年くらいをかけて積み重ねて団結できるという状況。そこの組み立てというのを今日も一番大切にしているからこそ良い勝負になってきた。もう少し積み重ねていけば前半の途中で挫けなかったり、後半の最後まで継続できたりというふうになっていくと思います。これからのチームなので、F1に定着すればもっともっと強くなっていくと思います」

ーー結果的に負けたその差がどこにあるか、ピッチで感じたものは?
西巻
「ピッチの中から感じたことは、今日の試合に関しては、切り替えの部分、特に攻から守のとき。どっちの切り替えもそうなんですけど、今日の失点を見ると、うちの攻撃をして守備になったときの切り替えのスピードっていうのは、相手の方が早かったかなといったところで、今日の試合に関してはそこに差を感じました」

決めるべき選手が決めて、自分たちの形で試合をクローズできた


湘南ベルマーレ 奥村敬人監督
ーー試合を振り返って
奥村「お疲れ様です。前半の10分くらいまで、自分たちがほとんどボールを保持していて、いいペースでやっているような雰囲気だったと思うんですけど、実際は(ボアルース)長野さんのディフェンスの仕方にちょっとハマっている部分があった。そこで点を取れなかったら、逆にカウンターでやられてしまうんじゃないかという恐怖心を持ちながら見ていたんですけど、そのあとしっかりと、決めるべき選手たちが決めてくれたおかげで自分たちの流れに持っていったというか、相手のプランが崩れたのかなというふうに感じています。

本当に、(横澤)直樹とはずっと長い間、(P.S.T.C. )LONDORINAの頃から言ったら10何年も一緒にやった仲間なので、彼がやりたいことはわかっています。彼に長く指導を受けた選手もいて、何かを仕掛けてくるのではないかという心理的に恐怖心を持ったままプレーをしてしまうような兆候がありました。最近入った選手は、そういうことはないと思うですけど。そういうなかで、ちょっとした迷いだったり、心理的な部分を突かれる怖さがあったんですけど、ただ相手より常に先手をいくというところを意識してプレーした結果、いい形でのゴールが生まれて、精神的に乗った状態で前半を終えられました。後半は始めに失点してしまいましたけど、相手がくるのは分かっていますし、そのなかでしっかり耐えたときに、逆に後ろのスペースが空いて自分たちにチャンスが生まれるっていうことを、試合前に話していて、そこでカウンターを数多く作れた。もちろん決まらなかったゴールもあるんですけど、最終的には自分たちの考えた形で、試合をクローズすることができたんじゃないかなというふうに思います。

あと1試合、立川(・府中アスレティックFC)さんとの試合が延期になってしまって、いつになるかはまだ決まってない状況ですけど、そこの直接対決を勝ったら1つ順位を上げられるというところまで自分たちを持ってくることができました。立川さんの昨日の試合を見ましたが、引退する選手が点を決めていて、一体感もすごくて、手強いチームだなと感じました。自分たちもこの後は全日本選手権の優勝に向けて、しっかり調整して、全日本選手権が終わったら立川さんのことを考えたいと思います。この後の試合はすべて勝つ、全日本4試合勝って、立川さんに勝って、残り5連勝で終えられるように、一丸となって練習からやっていきたいと思います。以上です」

上原拓也選手
上原「お疲れ様でした。久々の有観客試合だったんですけど、やっぱりお客さんがいるなかでプレーするのは全然違うなというのを感じました。

今日、ボアルース長野さんは負けられないという思いを持ちながら戦ってきたと思うので、そういう相手のプレッシャーを感じながらプレーして、結果的に勝つことができたんですけど、前半3対0で折り返して、後半から出場して、無失点を引き継ぎたかったんですけど、失点してしまって、自分としては悔しい思いがちょっと残っています。

(横澤)直樹さんには、湘南では2年前からお世話になっていて、去年(Fリーグ選抜として)も戦ったりしたんですけど、直樹さんから教わったことだったり、言われた言葉だったり、いろいろたくさんあるので成長した姿を見せたいという思いもありましたし、フットサルを始めた頃から直樹さんにお世話になっていたので、本当に感謝しかないなという思いもあるし、そういう思いがあるなかで今日勝てたことは、本当に良かったと思います。

残り1試合、立川(・府中アスレティックFC)さんとの試合が残っているんですけど、いつ試合があるかわからないですが、常に準備しながらやることと、あとは全日本選手権が来週から始まるので、しっかりチームで勝つ準備をしていきたいと思います。ありがとうございます」

ーーいつもと違うスタメンだったがその意図と、後半から上原選手を起用したゲームプランについて
奥村「そうですね、長野さんのスタメンを見たときに、「なんだろうな」と思いましたけど、結局始まってみないとわからないので、そこに関してはしっかり様子を見ようということで。ファーストプレーでサインプレーがあって、すぐ交代だったんで、そういうことだったんだなと思いました。自分たちは、(スタメンの)セットをいじったというか、選手権に向けていろんなセットを試したいというところがありましたので、ロドリゴとジャッピ(本田真琉虎洲)を離したりとか、色々工夫しながら、ただ結果は入れ替わりのなかで一緒になったときに彼らが得点してくれたりした場面もあったので、セットで交代するのではなく、2枚替えとかをしながら、うまくセットを構築して行けたらという部分でいうと、すごく収穫があったかなと思います。練習の中で良い感触のあったセットだったので、そういった部分で、全日本に向けても試せるのかなという思いがありました。

(上原)拓也は、本当にいつでも出したい思いがありますので、フィールドの選手たちがしっかり3点とってくれて、後半の頭から万全でいけるという体制をとってくれたので、そのなかで始めに1失点してしまいましたけど、あれは本当にスーパーゴールだったと思いますし、逆にいうとキーパーとの1対1を何本止めたかっていうくらい止めてくれて、チームを救ってくれたと思います。どっちのキーパーが出ても自分たちは戦えるっていうことを証明できたんじゃないかと思います。なかなか出場機会がなくて、辛い時間を過ごしたと思うんですけど、そのなかでも切れることなく、常に自分にフォーカスを当てて練習から向上心を持って取り組んでくれているので、どんな場面で試合に出ても仕事をしてくれると自分は信じているので、今日本当にああいう結果になって、僕もうれしかったです」

ーー前半0失点だったところで、後半出場してすぐに失点したが、その後はファインセーブを連発していた。メンタル面を維持できたいたのか?
上原「目標は失点0で終えることが、キーパーとして一番のミッションだと思っているので、そのなかで今日、立ち上がりに失点してしまったんですけど、そこで落ちてしまったら、自分は今、キャプテンを務めていて、そういう弱気な姿をチームメイトに見せたらいけないなって、もちろん気持ち的に落ちる部分はありましたけど、そこで1つ耐え忍ぶことが大事だなと思いました。また、失点をしたあとに、多分長野さんはどんどん仕掛けてくるだろうなということも想定もできたので、そんなに慌てることはなかったです。もちろん気持ち的に「わー」っていうのはあったんですけど、落ち着いてプレーはできたと思っています」

ーーいきなり顔面でセーブしたなどもあったが、どんな気持ちで臨んだか?
上原「そうですね、1月の(ペスカドーラ)町田戦から出場機会がなくて、難しいところもありましたけど、3対0の状況で起用してもらったっていうことは、監督からの信頼もあると思います。決して大差がついた状態での交代ではなかったので、ここで僕が応えなかったら男じゃないなと思いながらプレーしてました。一番は、試合にスタメンで出場することです。フィウーザという素晴らしいゴレイロがいますが、負けてるつもりは全然ないですし、いずれポジションを奪わなければいけないと思っています。常にそういう気持ちを持ちながら戦っています」

Text by 小西 尚美
Photo by 湘南ベルマーレフットサルクラブ
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