~湘南ベルマーレ VS Y.S.C.C.横浜~
12月18日(土)、湘南ベルマーレのホーム小田原アリーナで、今シーズン最後の神奈川ダービー、湘南ベルマーレ VS Y.S.C.C.横浜の試合が開催された。
湘南は暫定で2位、1位の名古屋オーシャンズと勝点差は1ながら、名古屋は試合の消化数が2試合少ないため、もう1つも負けられない状況。ホームゲーム負けなしを継続したいところ。一方の横浜は、中断期間が明けてから勝利がない。とはいえ内容的には接戦の展開が多く、前節も39分を超えてからパワープレーで失点して引き分けるなど、惜しい戦いを繰り広げ、次こそはの思いを重ねてきている。
1stピリオドは湘南のキックオフでスタート。タイトなマークで最初の攻撃を封じた横浜は、早いタイミングで前線にボールを送り、アグレッシブな攻撃の姿勢を打ち出す。その攻撃が実ったのは開始56秒、ペナルティエリア内の混戦から菅原健太選手がゴールを決めた。その後も湘南がリズムを取り戻す隙を与えず、早め早めにゴールに近いところへパスを送り続ける。それはゴレイロの田淵広史選手も同様で、湘南のシュートをキャッチするとそのままドリブルで持ち上がり、シュートを放つ。一度はフィウーザ選手に止められたものの、こぼれ球を拾って再度シュート、ネットを揺らした。その約30秒後にはゴレイロからのロングパスを左サイドで受けた菅原選手がペナルティエリア内にパスを送り、安井嶺芽選手がコースを変えてシュート。3点目を決めた。
ここで湘南は流れを変えるためにタイムアウトを取得する。再開後は湘南が流れを引き寄せるが横浜が体を張って守り、なかなか得点まで繋げることができない。それでも林田フェリペ良孝選手が右サイドをドリブルで持ち上がり、マークを引きつけると逆サイドでフリーになった高橋広大選手へパス。高橋選手は、ゴレイロのタイミングを外してシュートを放ち、1点を返した。
残り時間の主導権を争う中、湘南の攻撃をかわしてカウンターに出た横浜がゴール前にパスを送ると相手陣内から守備に戻った湘南の選手がオウンゴール。さらにピヴォの菅原選手が湘南陣内で起点となってサイドに構える堤優太選手にパス、中央へ折り返したパスを再度菅原選手が受けてゴールへ流し込み、5点目を挙げ、大量リードで折り返しを迎えた。
2ndピリオドに向けた修正が施されるハーフタイム、横浜は開始時間ギリギリまでロッカールームで過ごしていた。
2ndピリオドの序盤は湘南が攻勢を仕掛けるものの、横浜がタイトな守備を続けてアタッキングサードへの進入することを許さない。横浜は、回数は少ないものの攻撃を仕掛けるとあわやというシーンを演出する。そのうちの1つが荒川勇気選手のゴールとなって実り、6点目を挙げてリードを広げた。
湘南は、残り15分以上を残した状況で、「上原にはシュートがある」という伊久間監督の狙いからゴレイロをフィウーザ選手からキャプテンの上原拓也選手へ交代。その言葉通り、上原選手は攻撃に加わってリズムを作った。しかし、どうしても得点が取れない湘南は、10分を切った頃からパワープレーをスタートする。そこで内村俊太選手、本田真琉虎洲選手が得点を決め、3点差まで迫った。しかし、6点を追いつくことは難しく、ホームで初の敗戦を喫することとなった。横浜は、ゴレイロの控えを入れずに登録されたフィールドプレーヤー13人全員が出場。それでも最後には菅原選手が足を攣るほどの運動量で湘南の攻撃を抑え込んだ。
この試合では、長年湘南に在籍し、昨年12月19日に亡くなった久光重貴さんを偲んで拍手を送る時間が設けられた。その時間はアウェイのサポーターからも温かい拍手が送られた
試合後会見
湘南ベルマーレ 伊久間洋輔監督、上原拓也選手
ーー試合の総括をお願いします
伊久間「今日もホームということでたくさんの方に応援に来ていただいて、いい雰囲気を作っていただきました。ありがとうございました。ゲームは、前半の最初にカウンターで失点したところから選手の動きも良くなく、その部分かなと思います。3点目を取られてから1点返して、ここからというところだったのですが、なかなか修正することができなかったなと思います。後半は点が取れなかったのでパワープレーという形になりましたが、2点取れたので、パワープレーで点が取れることは1ついいところと捉えて、まだシーズンは続きますので、次に向けて頑張りたいと思います。ありがとうございました」
上原「お疲れ様でした。まず、こうやって僕らが試合できているのは、サテライトやユースの選手、育成カテゴリーの選手、フロントスタッフの方々が会場を作ってくれるおかげで、本当にホームゲームは毎試合良い雰囲気の中でできています。今日はお客さんが1,217人で、今シーズン(のホームゲームの中で)1番多かったと思いますが、本当に色々な苦労をしながらホームゲームの設営をしてくれて、そういう環境にいられることは当たり前じゃないと思いますし、そうやって応援してくれる方々がいるからこそ、僕らは頑張れると思うので、応援に来てくれた方々や会場設営をしてくれた方々に感謝しかないです。ありがとうございます。
ゲームに関しては、今日はホームゲームで負けてしまったのですが、いつもと真逆の展開というか、ホームゲームで僕らがいつも勝ち越すことを、今日は相手にやられてしまいました。失点する時間帯もそうですし、失点の仕方もそうですし、今日は全てが難しかったなというのを感じました。相手は僕らが前にアグレッシブに来るというのを分かっていた中で、ロドリゴ選手にしっかりとディフェンスしてきたり、ワンツーとかパラレラをすごく警戒しているなと感じました。僕らが隙をつけなかった部分で失点をしてしまったり、取り返して『ここからだぞ』というところで失点をしてしまったり、いつもそこが取れているところで取れなかったり、いつもできていることが今日はできなかったというのをすごく感じました。ただ、選手一人一人は本当に勝ちたいと思って戦っていましたし、みんなすごく頑張っていたと思います。やはり結果がすべてだと思うので、そこの修正をしっかりすること、特にゲームの入りのところで、もっとゲームに入っていくためにも普段の練習だったり、ゲームに入る前のメンタル的なところもそうですし、改善するところはまだまだたくさんあると思います。今シーズン残り3試合ありますが、1つも落とせないというのは変わらないですし、選手はまだまだ誰一人諦めていないですし、そこに向けてチームの方向がブレないように、僕もそうだし、スタッフも選手もみんなで同じ方向を向いて、来週が年内最後の試合になりますけど、そこに向けてしっかりと100%で取り組めるようにしていきたいと思います。
このあとサテライトチームS.B.F.C. LONDRINAの関東リーグの試合があるので、いつも設営してくれる選手たちがこれから戦うので見ていただければと思います。ありがとうございました」
ーーピヴォ当てと、前プレを苦手としているのかなと感じましたが、いかがでしょうか?
伊久間「今日はそうですね、ピヴォ攻撃にやられた感はありますけど、菅原(健太)選手がすごく良くて、うちの(牧野)謙心とか、(内村)俊太もやられてたんで、そこは向こうが良かったというところだと思います。苦手かというと確かに強力なピヴォがいるところは、そこがストロングポイントなので、そこでやられたら負けるのは当然です。苦手というふうには思ってないですけど。ただ、Fリーグは3-1システムが多いので、ピヴォに仕事をさせればそういうことになるということです。前プレに関しては、逆に来てくれるほうが裏を取れる、ただそれが今日は、裏への走りが良くなかったなと思います。だからそういう印象になるのかなと。走れているときは多分、来てくれた方が裏をどんどん取れるので。苦手というよりは今日のうちの問題かなと思います」
ーー久光選手が亡くなられて1年ということで、試合の前後半でサポーターが拍手を送る時間があったが、その点についての思いは改めていかがでしょうか?
伊久間「そうですね、去年は彼の亡くなった試合のときに名古屋に逆転勝利をして、すごい力をもらいました。今日は多分、ヒサから『まだまだだぞ』と。『慢心するな』というメッセージかなと思います。彼はいつも一緒に戦っています。試合は負けるときもあると思いますけど、これからも一緒に戦いたいと思います」
ーー今季ホームで初めての敗戦ですが、改めて今日の敗因は?
伊久間「これから分析しますが、うちがいいときというのは走れているときなんですね、相手の裏をしっかり良いタイミングで走れているのが良い状態。映像を見てみないと分からないですが、多分良い状態で走れていないのではないかと思います。相手のディフェンスにもよりますけど、そこが1つの要因。逆に攻め込んだときにうちがカウンターを取られたとしても、基本的には追いついて守れるのがいつもの状態なので、それができなかったということは多分走れていない。走れていない原因は、これから分析をしますが、そこが要因なのだろうなというところです」
ーー今後も負けられない試合が続きますが、残り3試合に向けての意気込みを教えてください
伊久間「我々は挑戦者ですし、何かタイトルを取ったことがあるわけではないですし、1試合1試合を全力で戦っている中の1つずつなので、残り3試合、1個1個戦うしかない。本当に負ければ優勝という夢はなくなっていくわけなのですが、そこは負けたくて負けているわけではないので、良いところが出せるように、トレーニングでいかにそこに持っていけるかというのを、この1週間と年末年始の調整に全力を尽くして、良い試合を出来るように頑張りたいと思います」
ーー前半のタイムアウト、ハーフタイムにはどんな指示をされましたか?
伊久間「前半のタイムアウトは、失点がかさむと、気持ちも早く取り返さないといけないという状態になってしまうので、そこは1回落ち着いて『しっかり自分たちのプレーをしようよ』という話をしました。基本的には、流れが悪いからタイムアウトを取るというのはあまり好きではないのですけど、今日に関してはこのまま行ったらという思いもあってので取りました。それが良かったのかどうかというのは結果論なので。ハーフタイムに関しても、『もう一度やり直そうよ』というところで、『しっかり走っていこう』と、その辺りを指示をして、どうしても点が取れない時はパワープレーをするというプラン的な話をしました。前半に5失点するようなゲームは今年初めてで、ここを乗り越える力が今後必要なんだろうなと思います」
ーー上原選手を後半の早い時間帯から起用したが、その狙いは?
伊久間「上原はシュートがあるので、やっぱり点を取り返さないといけないところで起用しました。フィウーザももちろんシュートはあるんですけど、ここは1つ、上原の特徴でもありますので、そこに賭けたいなというところです。ただ、今シーズンはそういうプレーをやってなかったので、彼にとっても難しかったんじゃないかなと思います。今後、そういうことを武器にして行けたらという意味で彼を使いたいなと思いました」
ーー現在、優勝に手が届くという中での試合が続いていますが、何かいつもと違うことなど、フィールドで感じることはありますか?
上原「この立ち位置にいられるのはすごく良いことだと思っている中で、やはり目の前の試合に勝つという目的は変わらないと思うのですが、優勝が見えてくるとプレッシャーだったり固さは出てきてしまうものなのかなということは感じます。ただ、今日の試合に関しては、固さが出たというよりは相手が僕らを上回ってきたというのが大きかったと思います。みんないつも通りプレーに入っていたと思うし、良いプレーもありましたし、ただ横浜さんの素晴らしいアグレッシブなプレーがたくさん出たと思います。前回(10月8日開催第8節)アウェイで戦ったときも僕らが序盤に先制したけどやっぱり難しい時間帯というのはたくさんあって、決して油断できないチームだというのは変わりなかったと思います。その結果が今日、立て直そうと思っても立て直せない部分だったと思うので、そこを毎試合そうならないように意識することができればもっと優勝に近づけるのかなと感じています。僕は結構プレッシャーを感じる方で、責任もすごく感じますし、本当に油断出来ない役職にいると思うので、そこをチームを引っ張っていくのが僕の仕事だと思っているので、変わらず残り3試合やっていければといいなと思ってます。まだ(リーグ戦は)終わっていないので、引き続き全力で頑張ります」
Y.S.C.C.横浜 前田佳宏監督、宿本諒太選手
ーー試合の総括をお願いします
前田「まずはホッとしているというのが正直なところです。僕らは中断明けからなかなか勝てていなかったので、素直にうれしいです。(ゲーム内容の前に)先に1つ言わせてもらうと、ゲームの途中で運ばれた選手ですが、意識もしっかりあって、ただ眼底の骨折の疑いが少しあるため、今検査をしています。特に命に関わるといったことはありません。
ゲームの展開としては、僕たちは年齢がすごく若いチームで、前半の前半でいつもチャンスを作ってきたんですけど、それが決まるか決まらないかで、試合の流れが大きく決まっていました。勝っていた前半戦(中断期間前)も、最初の流れで僕たちが決めて、先行逃げ切りのような試合内容になっていました。今日は、それが再現されたような形になりました。
今週は代表の合宿があって、チーム的にも少し変則的で、僕たちのグループワーク的にも初めて平日の練習をしながらも代表組がいない、また代表組が戻ってくるという中で、最初はどのようなゲーム展開になるかなと思っていましたが、全体が不安なくやれていたので、すごく良かったなと思います。このように勝つとすごく言いやすいんですけども、僕たちはすごく成長しています。こうやって勝点3が取れると、自信を持ってはっきり言えるので、来週はホームゲームがありますので、皆さん楽しみにしていてください。以上です」
宿本「中断明けから勝てていないという状況が続き、自分たちの自信というものがやや失われつつあった中で、今日は湘南というリーグの中でも上位を走っているチームに対してこういう試合ができたのは、改めて自信を取り戻す、いい結果になったと思っています。僕らは、中断前のように勝てれば、若さで勢いに乗って行けるチームだと思うので、これを引き続きやっていければというふうに考えています。今日の試合の勝ちというのは、中断明け、勝てていない中でも自分たちが課題にしっかり取り組んできた成果が出たと思っています。これは勝ったから言っていると思われるとカッコ悪いので、次の試合も、その次の試合も、リーグが終わるまで継続していけるように、自分たちに本当に力があったんだと自分たちで思えるような試合を、この後も続けていきたいと思います。以上です」
ーーゴレイロの控えがいない理由を教えてください
前田「独特なチームスタイルだと思うんですけど、その分フィールドの枚数を13枚にして、必ず走り負けないようにというのが1つの狙いになっています。それが今日あった最後のパワープレーのところで最後まで走り負けなかったのは、フィールドプレーヤーを13枚にしたことにも繋がっています。もちろんリスクもあると思うんですけども、それはどのようにしてもリスクはある。例えばフィールドプレーヤーを入れていても当日に体調を崩してしまったり、キーパーを入れていても怪我をしてしまったりはあると思うので、いろんなリスクを考えたうえで、キーパー1枚ということがそのリスクを一番少なくするという自分の中の判断でフィールドを13人入れました。もちろん試合によっては(ゴレイロを)2人入れたりというのはあるので、今日の試合はそうだったということです」
ーー準備が実った試合だったと思うが、湘南対策だったのか、いつものチームスタイル通りだったのか具体的に教えてください
前田「湘南対策というところは正直ありました。まず何を対策したかというと、僕たちはピヴォを常において攻撃しているチームなんですけども、湘南さんの場合だとピヴォが入ったり、ピヴォがいなかったり、ピヴォが入っていても、そのピヴォが降りて4枚で繋いでくるというチームだったので、それに対応する守備の部分というのは多く時間を割いてやってきました。自分たちの持っている守備のプレーモデルというのを相手に合わせてやっていたというところです」
ーー代表合宿に行ったメンバーについて、監督から見てマインドが変わったなど、何かプレー面に表れた変化はありましたか?
前田「それはすごくあると思います。正直、戻ってきたときの顔を見ると、少し疲れている表情だったんですけど、その疲れというのは体もさることながら頭の中だったり、彼らが勝ち取ろうとして頑張ってきた部分だったりがあったんじゃないかなと思いました。今日の試合を見てもらったら、どれくらい刺激を受けたかわかるかなと思います」
ーーゴレイロの田淵選手はもともと積極的だったが、より積極的になったのは代表合宿効果があるのでしょうか?
前田「それもあると思います。やっぱり同じような、さらに自分よりも上のレベルを競い合っている選手とやることで、メンタリティというんですかね、そこはやっぱり常に緊張感を持ってやっていたのがそのままゲームに出たような形だと思います」
ーーパワープレーの守備について、前節は最後に1点を争う状況でのパワープレー守備だったが、今日は点差を離してのパワープレー守備でした。結果として失点はしたが、プレーヤーとしてパワープレーの守備に関する課題感はいかがですか?
宿本「前節のパワープレーは、選手たちが疲弊している中で、練習でやってきたメンバーとは異なるメンバーでやらなきゃいけなかったりだとか、そこの咄嗟の判断というのがチーム自体で整理されてなくて、やられてしまったという課題がありました。ですから前半のリードしている段階から、もちろん練習でもそこら辺の整理はしてましたけど、前半のリードしている中でも後半の頭から相手がパワープレーをやってきてもいいように、ハーフタイムの時間を割いて、まずその前節の課題はクリアしたというところです。あとは相手の形っていうのは、当然見てましたし、そうですね、結構万全な対策が取れたんじゃないかなと思ったので、自信を持って挑めました」
ーー自分たち的には手応えはあったということですか?
宿本「そうですね、パワープレーはどうしても数的不利なので、パワープレー返しをしてリードを広げられたらいいですけれども、あれだけタレントのあるチームに対して、やっぱり1失点2失点くらいはしょうがないかなというところはあるので、当然そこの課題は残ってますけど、全体的にはポジティブに感じています」